Webディレクターの役割とは? 企業で求められる仕事内容とスキルについて
Webが営業力強化や営業力効率化、新規開拓のチャネルとしてBtoC企業のみならずBtoB企業においても重要視されています。そのような中で「Webディレクター」という職種があります。どの求人サイトを見ても「Webディレクター」職と言う分類が設けてあり、最近特に多くの求職があります。
Webディレクターは花形職業
この「Webディレクター」という職種、まさに花形といっても過言ではありません。なぜならインターネット技術の発展により、消費者の89%は製品を購入する前にWebサイトで情報を得ており、また、営業活動の約60%が営業担当者と会う前にすでに終わっているという報告があります。(詳細はインバウンドマーケティングをご確認ください)
つまりBtoB企業も含めてWebサイトの位置付けが、ますます重要性を増しているのです。
しかし厄介なことに、Webディレクターの仕事内容や定義は曖昧で、人や企業によってイメージが大きく異なります。
Webサイトやサービスの受託開発を請ける制作会社のWebディレクターと、一般企業の「社内Webディレクター」は、役割や求められるスキルが違ってきます。
この記事は社内Webディレクターでその役割やスキルに迷いがある、あるいは自社に既にいる、またはこれから採用したいと考えている一般企業内のWebディレクターの人材に、どういった役割やスキルを求めれば良いのか。そうした手引きになればとWebディレクターについて思い書いてみました。
Webディレクターの一般的な仕事の中身とは?
最初に一般的なWebディレクターの役割とスキル、そしてこれからの姿について簡単に説明しておきましょう。
基本的なお仕事内容
Webディレクターは、「プロジェクトの管理、監督をする人」というのが多くされている解説です。
管理、監督の具体的な中身が重要ですので代表的なものを挙げていきましょう。
- リソース(人員)の調整、確保
- スケジュール管理
- 成果物の品質管理
リソースとは、その案件を進めるのに必要なデザイナーやコーダー、エンジニアを指します。
スケジュール管理は、企画から設計、実際の制作から納品までの工程管理です。
品質とは、表示崩れやリンクエラーがない一定水準を満たすWebサイトと考えれば良いでしょう。
こうした業務は基本中の基本で、実際にはまだまだ多くのタスクをWebディレクターは抱えています。
- 企画、提案
- 工数計算(見積もり作成)
- ワイヤーフレーム作成
- 仕様作成
- 原稿収集 他
これだけでなく、取材や写真撮影が入る際にはその調整、また、原稿を書くところから担う場合もあります。
そして、SEOの施策やプロモーションも任せられるケースもあります。
運用フェーズになれば依頼主からの要求を整理して、実際の制作者へ伝えていく対応が多くなります。
インバウンドマーケティング時代のこれからの姿
ここまで見てきて分かるように、Webディレクターは非常に幅が広い業務内容です。下手したら自分は「何でも屋」なのでは?と思うこともあるかもしれません。
しかし、テクノロジーが発展し企業としてもWebの重要性が認識されている現在、このようなWebディレクターでは限界が出てきました。
Web制作が複雑化していますし、コンテンツやSEO施策なども、非常に高度になってきています。そして、会社のメッセージや消費者(ペルソナ)の深層心理を理解したジャーニー設計などやることが増えてきているのです。
何でも屋とは「広く薄く」ということですし、すべての知識を高度に網羅できるスーパーな人材などごくごく一握りなのです。
さらに最近ではスマホアプリやAI、機械学習を用いたWeb解析、アドテクノロジーなど、これまでに無かったものも守備範囲になってきています。
従来型のWebディレクターでは、企業が求める役割に追いつけずに十分な役割を全うできなくなってきているのです。
加えて依頼主からの要求の変化もあります。
それは「Webサイトを持てば良い、リニューアルして見た目が良くなれば良い」から、「成果が出るWebサイトにしないといけない」というニーズへ変わってきています。
企業における成果とは売上に他なりません。Webディレクターも極端なことを言ってしまえば営業職と変わらない位置付けで見られてきています。会社的には24時間365日働き続けるWebに期待するのは当然のことと言えますよね。
そのためこれまでのWebディレクターが、「スケジュール内に納める」「一定品質のものを納品する」というプロダクト志向だったのに対して、これからのWebディレクターは「成果を出すためのビジネス、戦略志向」が求められてくる重要な存在ということなのです。
具体的なスキルとして会社の方向性の理解(経営戦略や営業戦略、製品やサービス知識など)、アクセス解析などの分析、集客やコンバージョンを取得するための戦略、より効率良く成果を出すための改善といったものが求められます。
もちろん従来からの進行管理メインにしたWebディレクターは一定の需要はありますし、インターネットのモノづくりを担う管理者も求められ続けます。ただし進行管理をメインにしたままで自身のポジションを上げていくためには、よりこのスキルを深化させていく必要はあります。具体的にはマルチタスクをこなせたり、依頼主が要求する仕様への解を的確に示し、スムーズに作り上げていくといったスキルです。
社内Webディレクターという職種
それではこの記事の本題である、社内Webディレクターについて解説していきましょう。
ビジネス視点での企画者
社内Webディレクターは企画者としての役割、考え方が強く求められます。
先ほど紹介したWebディレクターのこれから求められる姿、「ビジネス、戦略志向」の中身です。
制作会社のWebディレクターも企画力は求められてきましたが、Web制作という範疇のため「Webをどう活用していくか」が前提になっていました。
しかし社内Webディレクターの場合は、自社のビジネスを優先させる必要があります。
例えばスマートフォンからのアクセスが一般的には多くなっていても、自社が完全なBtoBのビジネスであれば、スマホサイトを無理にリッチにする必要はありません。
またここが非常に重要なポイントなのですが、「Webの知識や理解よりも、まず自社のビジネスをきちんと理解する」必要があります。
社内Webディレクターが行う企画は、「新しいCMSがあるからこうしたサイトリニューアルを行おう」ではなく、「自社は既存顧客が多いので、そこに向け継続的に情報発信できる機能を設置しよう」と、まず自社のビジネスを念頭に置いて考えることが大切になります。繰り返しになりますがWebという武器を通じて会社に貢献しなければならないのです。
加えて私がこれまで多くの企業を見てきた中で、社内Webディレクターにとって重要と感じたスキルを挙げておきましょう。
- 向上心(少しでも会社に貢献しようとする意欲)
- 社内コミュニケーション能力
- 判断力(外注先の選定などで重要)
- コスト感覚(ROIの意識は特に大切)
Webディレクターに向かない人
社内Webディレクターに向いていない、受託の制作会社の方が良いだろうという人もいます。次のような場合です。
- 高品質のデザインだけを追い求める人。
- 最新のシステムなどに携わっていたい人。
- 同じWebサイトを見続けることに、飽きる人。
ある一般企業の社内Webディレクターがハッキリと口にしていたのですが、やはり制作会社にいる方がデザインの質は上がります。また、生き残るために最新の技術にも触れられるでしょう。
どんな分野でも専門として日々それに携わっている方が、スキルは高まります。これはシステムについても同じです。つまり職人気質の人は、社内Webディレクターだと満足できない可能性があります。
今後のキャリアとスキル
社内Webディレクターのこれからについても考えていきたいと思います。
自社のビジネスを理解して、それを中心に企画を練ったりWebの取組み、デジタルマーケティングを進めていくのが基本ですが、それだけでは現状に留まるだけです。
まずWebに携わる立場として、その価値を高めていく必要があります。
これは一般的なWeb担当者も同じになのですが、こうした社内でWebの価値を認めてもらう、高めていくといった啓蒙活動は非常に重要です。
これだけWebの世界が広がりを見せ、デジタルマーケティングという言葉が知られてもまだまだ多くの企業からは、Webの立場が低いという嘆きが聞かれます。
実際に誰もが知る大手企業のWeb担当者が、「オンラインでクーポンを発行したことで店舗への集客が増え、少しWebでの取り組みが認められました」と口にしていました。
社内でWebの重要性を認めてもらうために
ECサイトやWebサービス、アプリの専業会社以外ではまだWebの価値が十分に認められていない場合が多いのです。
社内Webディレクター、特にWeb担当者としての役割が多い場合は自分たちの価値を会社に認めさせていく社内戦略も非常に重要なのかもしれません。その進め方としては、小さな成功を積み重ね、それを常に社内へ情報発信していく、というのがオススメです。また、MAツールを導入して社内のCRMと連携させてインバウンドからの流入による売上への貢献を完全に見える化するというのも手です。
弊社のお客様では、全売上の80%をWebからの流入でまかなっている企業もあります。それも数千万円する商材でです。完全に見える化されているためマーケティングの地位は社内で非常に高いものになっています。
このようなWebやデジタルマーケティングの価値はそれなりに認められている、あるいは社内全体がロジカルな考えでビジネスを進めているという企業の社内Webディレクターは、「企画力と数字を読む、分析する、シミュレーションする」というスキルがより大切になります。
ディレクターにとっての数字と言えばアクセス解析がすぐに思い浮かぶかもしれませんが、ECサイトであれば売上や顧客単価、BtoBサイトであれば1顧客獲得あたりを費用換算した際のROIなども理解するようにしましょう。メディアサイトであれば広告売上を見ていく必要があるでしょう。
長期的な視点では、LTVがどのビジネスでも重要になってきます。
そして社内Webディレクターにとってもう一つ重要になってくるのが、「AIなど新しい技術や手法への対応」です。
制作会社のディレクターの場合はそれをどう実装していくかなどを求められますが、社内Webディレクターは自社にどういったデータがあるか、今後どういったデータを集めていけるか、AIでそれをどう生かすのが良いかといった、ビジネス視点での関り方が求められます。
近ごろは「突然、上からAIで何かやるように指示されて困っている」という嘆きが聞かれますが、「自社にはこういったデータがある。ですからAI技術を用いてこうしたサービスを作りましょう。なぜならこのような効果が発揮できるからです」と提案する方が、社内での評価は圧倒的に高まるはずです。
まとめ
社内Webディレクターという言葉はそう多くは聞かれませんが、実際のところかなりの数がいます。
今回紹介したように受託の制作会社が職人的、プロダクト志向なのに対して企画寄り、ビジネスパーソンに近いというのが社内Webディレクターという存在です。
CMSで更新がしやすくなり、アクセス解析も身近に、また広告も運用型が中心で自分たちでできる範囲が広がってきています。
それだけにビジネス視点を持つ一般企業の専門職、社内Webディレクターの存在はますます重要になってくるはずです。