ペルソナとは?インバウンドマーケティングを成功へと導く最初の一歩
ペルソナとは一人の人物像を詳細に明確化したもの
きっとマーケティングに関わる人であれば「ペルソナ」という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
ペルソナとは、「企業がターゲットとするユーザーを代表する一人の人物像を詳細に明確化したもの、もしくは概念」と定義されます。そして、そのペルソナを中心に考えるマーケティングをペルソナマーケティングと言います。
マーケティング担当者は、自社のターゲットとなるユーザー像を理解し、明確化することで、初めてユーザーに満足してもらうことが可能になります。
今回は、そのペルソナに関して深く掘り下げてご紹介します。
ペルソナの由来はソフトウェアデザインからだった
ペルソナは、主に最近ではマーケティングを行う関係者で話題になっていますが、実はマーケティングから生まれたものではありません。
ペルソナの生みの親は、マイクロソフト社で爆発的な大ヒットを記録した開発ツールVisual Basicの生みの親でもある開発者アラン・クーパー氏が提唱したソフトウェア開発手法から始まったとされています。
アラン・クーパー氏の書籍「コンピュータは難しすぎて使えない!」のなかで、ペルソナを導入すると、開発者のエゴのみで作られた機能中心の使いずらいソフトウェアではなく、ユーザーが本当に求めているゴールを中心に据え、それを可能にする振る舞いをするソフトウェアが提供できるようになることが述べられています。
そして、アラン氏は、このペルソナ像をより明確化することで開発者やデザイナーがペルソナに対して感情移入しやすくなり、機能論争(どの機能を付けるべきか付けないべきかを決めるレモーショナルな議論)にケリをつけ、ソフトウェアデザインに反映しやすくなると綴っています。
その後、またまたですがマイクロソフト社のユーザー リサーチ マネージャーであったジョン・S・プルーイット氏による『ペルソナ戦略―マーケティング、製品開発、デザインを顧客志向にする』が発刊されたのをきっかけにマーケティング手法として注目が集まった背景があります。
ソフトウェア開発の世界から始まったペルソナですが、今では、マーケティング、営業、サポートなど企業内横断で共通のペルソナ像を想定してサービスを組み立てていくような組織的な取組みへと発展しています。
「ユーザー」や「お客様」ではなく「ペルソナ」である理由
「ペルソナ」なんていう大袈裟な言葉を使わなくても「ユーザー」や「お客様」と言ったほうが分かりやすいよね という言葉をよく耳にします。
確かにペルソナという言葉をユーザーやお客様に置き換えても違和感はありません。
しかし、前述した通りペルソナは「企業がターゲットとするユーザーを代表する一人の人物像を詳細に明確化したもの、もしくは概念」です。
ここでのポイントは「企業が」と「概念」ということです。
企業内にはさまざまな役割の人々がいて、メンバー個々が想像するユーザーやお客様は同じ会社内でも全く違ったものになることが多々有ります。
営業担当は「たくさんお金を払ってくれる人がお客様」、マーケティング担当は「すぐにコンバージョンしてくれる人がお客様」、開発者は「製品を褒めてくれる人がお客様」といったように違ってくる場合があるでしょう。
つまりお客様やユーザーというのは、個々の想像の産物でしかない可能性があるのです。
このような柔い定義ですと、それぞれの担当者は別々の方向に進むことになり、結果として本来の目指すべきゴールやユーザーニーズを満たすことができない可能性があるのです。
それに対してペルソナは、部門横断で自社のターゲットとなる詳細のユーザー像を作ります。
ひとりの仮想のユーザー像を、複数のメンバーで作り上げることで、ユーザーはどのような課題を抱えていて、何を解決したいのか、何を要求しているのかということを、詳細な人物像を起点に考えることで打つべき施策がイメージしやすくなるのです。
このペルソナ像を企業活動全体にわたり共有することで、ペルソナという共通言語を介したブレのない統一感のあるユーザー体験を提供することが可能になります。
このような概念自体も含めて「ペルソナ」ということになります。
デモグラフィック(セグメント)とペルソナは何が違うの?
今までもマーケティング担当者はキャンペーンなどを企画する際に対象となるユーザーを分析していました。たとえば「40代の既婚男性」で「東京都在住」、「趣味はゴルフ」といったセグメントに対してプロモーションの計画をたてていました。それに対してペルソナはもっと細かい特定の人物像をあぶり出します。これによりそのペルソナが抱える課題や悩み、解決するための手段、リーチするための方法、生活イメージなどをイメージしやすくなるのです。
ペルソナの作り方
では一体ペルソナはどのように作成すれば良いのでしょうか?
デモグラフィック(デモグラフィック属性)を定義
まずはデモグラフィック属性を定義します。デモグラフィック属性とは、ユーザーデータ分析の一つで、性別や年齢、職種、学歴など人口属性統計のことです。
たとえば、今、あなたがご覧いただいている弊社のこのブログでは以下のようなデモグラフィック属性を定義しています。
- 性別:男性
- 年齢:40歳
- 職種:外資系企業のマーケティング担当
- 所得:1,200万円
- 世帯規模:既婚または離婚歴あり、
- 学歴:有名私立大学、国立大学卒
- 勤務地:東京都 港区、千代田区、中央区
ペルソナの作成
デモグラフィック属性で定義した人物像を具体化していきます。たとえば弊社のブログでは、次のようなペルソナを作ったうえで記事を作成しています。
外資系IT企業でマーケティングを担当する高野さん
自社の製品やサービスには強い自信をもっている。
しかし、現在の広告や展示会中心のマーケティングに強い違和感を感じている。コンバージョン獲得数(リード件数)はKPIをクリアしているが、月に一回のメルマガ配信では、大量のオプトアウトが発生し本当にユーザーのためになっているのか?やったことが無駄だったのでは?小手先のテクニックに翻弄されているのでは?と、強く感じるようになっている。
現状、希薄な内容のランディングページを作成して広告からコンバージョンさせ、インサイドセールスが電話をかけるという単純すぎるマーケティングに対して、将来このやり方では全く通用しないことは心の奥底にしまっている状態。さらに営業もマーケティングから創出されたリードに満足していないことは心の奥底で理解している。
責任感が強く好奇心旺盛な高野さんは、もっと愛されるべきマーケティング、効率的で、可視化できて、ユーザーだけでなく社内の営業など誰からも感謝されるマーケティング、そして知的な最新のマーケティングについて調べている。そして、インバウンドマーケティングやコンテンツマーケティングといった愛されるマーケティング手法にたどり着き、これらを実践することで自社サイトで「もっと訪問者を増やしたい」「もっと見込み客を増やしたい」「もっとお客様を増やしたい」「もっと投資対効果を高めたい」と考えている。
インバウンドマーケティングなどに関してインターネット上の情報を見ては、仕事でチョコチョコと試している。しかし、断片的な情報のみに頼っているため自分自身でもちょっと自信がなく成果には至っていない。
コンテンツとオートメーションを基軸にしたインバウンドマーケティングは、今までのアウトバウンドマーケティングとは真逆の概念であるため、持ち前の知的好奇心をわき立てるだけでなく、成功の確信は持てている。そして、社内関係者やチームメイト、上長に対しての説得や体制作りを目指し、インバウンドマーケティングの始め方や進め方、事例、メリット、デメリットといった情報を日々の業務をこなしながら時間を見つけては収集している。そのようななかで、たまたまリードプラスのブログに行き着いた。
いかがでしょうか?
あなたはこのようなペルソナに近い状態ではありませんか?なぜなら、そのような方々のために書いているブログだからです。
それでは、どのようにペルソナを作成するのかのステップをご紹介します。より具体的なペルソナのヒアリング項目やアウトプットイメージに関しては「ペルソナの作り方とその実例」をご覧ください。
ステップ1:既存のお客様から理想的なお客様を抽出
最初に自社にとって理想的なお客様を抽出します。このステップの目的は、ただ一つ、理想的なお客様を新規に獲得するためです。社内のデータウェアハウスにアクセスして利益を出しているお客様や営業との会話から名前がでてくるお客様(トラブルが起きている客ではありません)、事例として取り上げているお客様などが該当するはずです。
もし、新製品や新サービスの場合には顧客がいない場合があります。その場合には、社内で話し合い仮想ユーザーを作り上げたり、馴染みのお客様にヒアリングしたりするのも良いかもしれません。
ステップ2:選定したペルソナの妥当性を検証する
選定したペルソナがどれくらい存在するのかを検証しましょう。統計データやアンケートなどで現実的にどれくらいあるかを調べます。あまりに数が少ないようなら再考を検討します。(対象が多い少ないは販売したい商品やサービスにより異なります)
ステップ3:営業と話し合う
営業と会話の場をもちます。受注し優良顧客になるまでの背景や課題、お客様の反応や心理変化など営業活動で気づいたことをなるべく詳しく聞きます。また、その営業が使った渾身の提案資料やキラートークなども聞き出すことでマーケティング活動に貢献する可能性もあるので頂くようにしましょう。営業の選定は誰でも良いわけではありません。ロジカルな営業を選定するようにしましょう。お茶目さや可愛さで売る営業ですと後々マーケティングでお茶目さや可愛さを表現する必要がでてきてしまいます。
また、営業と打ち合わせする際には、マーケティングではこのようなペルソナ像を想定しているという資料を見てもらうのも礼儀として必要かもしれません。
ステップ4:顧客にインタビューする
顧客にインタビューを行います。事前にヒアリング項目を用意しておくことをお勧めします。なぜ、その顧客が導入した製品やサービスを知ったのかを必ず聞くようにしましょう。検索エンジン経由の場合には、入力した検索ワードも聞くようにします。
ステップ5:ペルソナ像を書き出す
今まで行ってきたインタビューなどをもとにペルソナ像を書き出します。
ステップ6:営業にフィードバック
作成したペルソナ像をもとに営業と認識合わせをします。マーケティングはこのようなペルソナを獲得するために投資を行うを報告し、営業のフォロー体制を獲得しましょう。
「営業はマーケティングからの質の高い見込み客を顧客へと導く」「マーケティングは営業が顧客化しやすい見込み客を営業にパスする」お互いのゴールは同じです。そのための共通言語がペルソナであることを意識して認識を合わせる重要なステップになります。
ステップ7:運用してペルソナを修正する
最初に想定したペルソナに対してインバウンドマーケティングを実施していくと想定とは異なるペルソナが獲得される時もあります。定期的に営業と話し合いながら修正が必要であればペルソナを修正します。
インバウンドマーケティングはいきなり成果を発揮することは稀です。PDCAサイクルを回しながら理想的な顧客像(ペルソナ)を作り上げていくイメージでとらえると良いでしょう。
以上でペルソナの概要に関しては終了です。
ペルソナのメリットまとめ
ペルソナを作成するメリットは、ひとりに絞り込むことで理想的な顧客をイメージしやすくなるため、課題や解決策をイメージしやすくなります。
そして会社全体でターゲットとなるペルソナ像を共有することで、マーケティングと営業は一直線のストーリーでゴールを共有できるようになります。ペルソナの作成はインバウンドマーケティングのスタート地点といっても過言ではないほど重要な要素とご理解いただければ幸いです。
ペルソナへのヒアリング項目などより実践的な作成方法に関しては「ペルソナの作り方とその実例」をご確認ください。
ペルソナを作成した後は
インバウンドマーケティングでは、ペルソナを作成した後は、このペルソナをもとにカスタマージャーニーマップを作成していきます。カスタマージャーニーに関しては「カスタマージャーニーマップの作成でGoogleアナリティクスを活用する」をご確認ください。