経営者が知っておきたい「営業戦略」

顧客満足度を向上させよう!」
「トップ5社の売上を10%伸ばそう!」
「代理店/パートナーのマージンを圧縮して利益を確保しよう!」
「買い替えのタイミングだから新製品の案内を行おう!」

営業戦略会議などでよく聞きませんか? 実はこれらは「営業戦略」ではありません。その理由は、目標や計画の域を超えていないからです。

それでは営業戦略とは何なのでしょうか?

今回は営業戦略に関して理解していただける内容をご紹介します。

戦略の本質と定義

経営戦略、価格戦略、マーケティング戦略、パートナー戦略、ブランド戦略、人事戦略など、私たちを取り巻く環境には「○○戦略」という言葉が氾濫しています。

しかし、この「戦略」という言葉を普段よく使っているにも関わらず、意外とその意味まで理解していないのが実情ではないでしょうか?

そもそも「戦略」という言葉は戦争が起源であることは有名な話でしょう。

そして、戦略は「戦(いくさ)を略す」と書くことからも、いかに省略して戦いに勝つかという意味が込められています。

敵と自身の戦力を把握した上で、
ゲリラ戦に持ち込むのも戦略。空中戦から始めるのも戦略。総攻撃をするのも戦略。そして、時には戦わないこと、同盟を組むことも戦略です。

一般的に戦略とは、戦士が戦場で優位に立てるようにするための策略であり、勝つための原理・原則ということに他なりません。

このことから自社の(勝つための)優位性を謳っていないものは戦略とは言えないという裏返しにもなるわけです。

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営業戦略とは?

それでは、このことを前提に営業戦略について考えてみましょう。

企業にとって営業とは、製品やサービスをお客様に対して販売することです。そして、営業戦略とはマーケットにおいて いかに自社製品やサービスが競合他社よりも優位に立ち(戦わずして勝つ)、お客様に購入してもらえるのかという明確な指針(策略)のことと言えるでしょう。

このことから営業戦略とは以下の視点で捉えることができます。

  • 会社視点:常に売れるための明確な位置付け
  • お客様視点:常に選ぶための明確な特徴付け

そのため(競合他社に比べて優位に立つため(戦わずしてかつ))には、「差別化」と「独自性」が不可欠です。

つまり営業戦略とは、「差別化」と「独自性」を明確化するための方策を定義することと言えるのです。

営業戦略の定義:「戦わずして勝つ」ための差別化と独自性の追求と方策

前述した「顧客満足度を向上させよう!」「トップ5社の売上を10%伸ばそう!」などは、おそらく競合企業も同じようなことを言っており営業戦略ではないわけです。 

競争地位戦略の崩壊

企業が、差別化と独自性を出すことがいかに重要なのかを、競争地位戦略の観点でご紹介します。

1980年にフィリップ・コトラーが提唱した競争地位戦略をご存知でしょうか?

同氏は、個々の企業が置かれている業界の地位に着目し、リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーの4つの類型に分類し、それぞれの類型により、選択すべき戦略もまた違ってくると解きました。(ちなみにリーダーは市場シェアNo.1、チャレンジャーはリーダーに次ぐシェア、ニッチャーは小さいが独自の地位確保、フォロワーは真似をして市場での地位を確保)

そこで述べられているのは、リーダーはフルライン戦略、チャレンジャーはリーダーとの差別化戦略、ニッチャーは隙間戦略、フォロワーはリーダーの真似というのが戦略として正しいというものです。

しかし、今の時代、フルライン戦略をとる大企業でされもディスラプターや新興国企業などの台頭により、地位の確約は保障されない時代です。現に差別化や独自性を出さないフルライン戦略をとる多くの大企業が経営難に陥っています。

このことからも、あらゆる企業がチャレンジャーまたはニッチャーでなければ生き残れないという証明でもあり、日本を代表するトヨタ自動車でさえも現状の地位に奢らずに常にチャレンジャーまたはニッチャーの戦略が垣間見られるほどです。

チャレンジャー、ニッチャーの戦略の本質は「差別化」と「独自性」ですから、その戦略の重要性が理解できるのではないでしょうか。

このことから営業戦略が正しいかどうかを見極める最大のポイントは、

「他社も同じことを言っていないか?」と何回も自問自答することです。

営業戦略を考える上で理解すべきこと

あらゆる企業は、限られた社内リソースの中で営業活動を通じて売上を確保し事業の運営を実践しています。つまり戦力(リソース)は有限ということです。

戦略とは、特定の目標を達成するために中長期的な視野と多角的な思考で物事をとらえ、「リソースを総合的に運用するための方針」ということはご理解いただけたのではないでしょうか。

ここでいうリソースは、営業担当者の数であったり、投資できるコストであったり常に制約を受けるものの一つです。

そして、大量生産をして大量消費される時代はとっくに終わりを遂げ、時代は1to1マーケティング へとシフトしています。

価格や品質は当たり前で顧客サービスの充実の重要性であったり、販売することよりもリレーションシップを大事にする方向性であったり、市場シェアよりも顧客シェアが重要視され始めています。

また、インターネットが発展して消費者の89%は検索を通じて商品を選定しています。営業からの商品紹介ではありません。とある調査によるとWebが発展したことにより、営業活動の60%が営業担当者と会う前に終了していると言います。

つまり、営業担当者は今までのやり方ではなく、現代に即した方法へと営業活動を転換する必要があるのです。そのためには顧客と深く付き合いながらも超効率化、Web技術を活用した新規顧客開拓を目指す必要があります。

 幸い私たちにはITという武器があります。CRMMAツールの導入により営業活動は大幅に効率化できるようになりました。また、企業はインバウンドマーケティングの仕組みを導入することで営業活動の60%を省く仕組みを手に入れることが可能になります。近い将来にはAIや機械学習などの活用で、さらなる効率化も実現できる日も近いと言えるでしょう。

営業戦略において、これらITの活用やインバウンドマーケティングが競争優位のために必要不可欠であることを理解しておくことが重要なポイントです。

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営業戦略と営業戦術の違い

多くのビジネスユーザーは、戦略と戦術の定義があいまいなまま「営業戦略」などの言葉を使っているケースがあります。なんとなく戦略というと高尚そうだから使っているという場合もあるでしょう。

しかし、この両者の意味は大きく異なります。

前述した通り戦略とは、BtoB企業・BtoC企業を問わず、会社が向かうべき方向性とシナリオを描くことです。

戦術とは、直接目標に対して最も効果的に実現するための具体的な方法的技術をさします。つまり戦略を達成するための施策ということになるのです。

戦略は中長期なものであるのに対して、戦術は短期の行動である特徴があります。ゆえに両者は上下関係にあるため、戦略の失敗は戦術ではカバーできません。

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営業戦略立案・作成のためのポイント

営業戦略が確定したら「目標(ゴール)」、「計画(プラン)」、「実行(アクション)」、「管理(マネージ)」へとステップを進めます。

日本企業の多くが、実は営業戦略と言いながら「目標」「計画」部分のみに集中しています。冒頭の「トップ5社の売上を10%あげよう」というのは目標に過ぎないわけです。

営業戦略を成功に導くポイントは、一気に戦力を集中化させて一丸となって計画を実行することです。

全ての意思決定プロセスはこの戦略が基準(ルールブック)となり、経営者はもとより新人に至る全てのステークホルダーが同じ意思を持って行動することが成功への近道と言えるでしょう。

営業戦略の立て方

それでは一体どのように営業戦略を立てれば良いのでしょうか?

大きくは以下の流れに則って進めることが一般的です。

  1. 市場を取り巻く環境の理解
  2. 自社の営業現状分析
  3. 営業課題の把握
  4. コアコンピタンスの把握と定義
  5. 戦略目標の設定と基本戦略/個別戦略の策定

市場を取り巻く環境の理解

環境の理解では、自社の現在の立ち位置や方向性を明確化するためにマクロ環境や市場環境、競合の状況などを把握します。いわば客観的な視点での把握を行うフェーズです。マクロ環境の分析ではPEST分析などの手法を用いて行います。

孫子の有名な言葉「彼を知り己を知れば、百戦して殆うからず」。これは敵を知り、自分自身を知るならば、戦いに負ける心配はないという意味の格言です。彼とは市場であり競合であると理解できるように、まずは環境の理解ができていないと戦略は成り立たないということになります。

自社の営業状況分析

そして、自社についてもその実力値を数値化して共通認識として深く知っておく必要があります。 

製品毎、顧客毎、チャネル毎、エリア毎の売上分析はもちろんのこと、顧客の深層心理など調べられる範囲で徹底的に現状を把握します。例えば、PPMやSWOT分析、顧客分析ではABC分析などの手法を用いて行います 

また、意外と見落としがちな「営業活動分析」なども行うことも忘れてはなりません。営業活動分析とは自社の戦力である営業の活動を数値化することです。

訪問回数分析であったり、営業コスト分析、営業活動傾向分析、営業プロセス分析などを行います。

これらを実施すると、訪問時間が長いのに売上が達成できない、クロージングまでの平均時間にばらつきがあるなどのデータが浮き彫りになるため、営業担当者たちから反発を受ける可能性もあります。

しかし、この分析の目的は誰かを吊し上げることではありません。会社として営業効率を最大化するために何が必要なのかを見極めるためのものであることを理解することが重要なのです。

営業課題の把握

「営業活動分析」から見えてくる問題点に加えて、営業現場で困っていることなどを具体的な内容を体型的に整理するフェーズです。

現場の営業からは色々な意見が出てくるでしょうが、チームが全ての課題をリスト化してあぶり出すことが重要です。それらの課題には、営業担当者個人の問題もあれば会社の問題もあるはずです。

コアコンピタンスの把握と定義

コアコンピタンスとは「中核的競争能力」と訳され「競合他社に真似できない核となる能力」のことを言います。このコアコンピタンスは、ゲイリー・ハメル氏とプラハラード氏がハーバード・ビジネス・レビュー Vol.68(1990年)へ共同で寄稿した「The Core Competence of the Corporation」の中で登場し、企業競争とは自社のコアコンピタンスを用いて市場の主導権を獲得しようとする競争であると述べられています。

つまり、このフェーズでは、自社の強みは何なのかを明確化します。そのためには現場を知るチームでの話し合いは不可欠と言えるでしょう。ただし、自社の評価は甘くなりがちなので外部との違いを客観的に把握するベンチマークが必要になるかもしれません。

また、自社のビジョンに照らし合わせて将来的に獲得すべきコアコンピタンスは何なのかも同時に定義します。

このフェーズは、顧客や市場を定め、将来目指すべき方向性が導き出される重要なものと理解しておきましょう。

戦略目標の設定と基本戦略/個別戦略の策定

戦略目標とは、営業部門として「こうしていこう!」という結集の明文化です。今までの分析結果や課題の把握で、何に問題があり、どうすべきなのか、何を目指すべきなのかは理解できているはずですので、そこから目標を立てます。

ここで立てる目標は、根拠のない目標数値や非現実的な目標をかかるべきではありませんが、過去の実績の延長では戦略に意味がありません。そして、複数ある戦略オプションから基本戦略、個別戦略の策定を行い、実行計画へと移ります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

営業戦略が、その企業の価値であると言っても過言ではないほど重要であるということをご理解いただけたのではないでしょうか?ビジネスを推進する上で戦略は必要不可欠であり、今回の記事を参考に営業戦略を社内で検討して作成してみてはいかがでしょうか。

本記事が皆様の企業経営にお役立ていただければ幸いです。

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