オウンドメディア運用の5つのポイントと投資対効果を最大化する方法
オウンドメディアは顧客の興味・行動に寄り添った情報発信により、見込みの高いリード発掘が可能で、顧客との中長期的な関係を築いていける自社メディアです。リード獲得戦略のひとつとして有効なオウンドメディアですが、運用の負担が重く、成果を出せずにいる企業は少なくありません。
この記事ではオウンドメディアの概要やメリット・運用時のポイントについて、BtoBマーケティングに長けた弊社の視点で解説します。
オウンドメディアとは
オウンドメディアとは、自社独自で運用・管理するメディア全般を指す言葉です。広義には自社サイト・ブログ・SNSアカウント・パンフレットなど、自社発信のメディアであればデジタル・アナログ問わず含みます。
ただし昨今では、消費者に役立つ情報を発信するウェブサイトや自社ブログを総称して「オウンドメディア」と呼ぶことが多いです。そういった意味では、オウンドメディアと企業の公式サイトをはじめとしたホームページとは趣旨が異なります。
たとえば、企業の公式サイトに掲載される会社概要や理念などは、特にその会社のことを知りたいと考えていない消費者の興味は惹きません。一方オウンドメディアでは、ターゲットとするペルソナにとって役立つ内容を掲載し、かつ興味を惹く話題をコンテンツとするのです。
オウンドメディアは、以下のような種類のメディアとよく比較されます。
【ペイドメディア】
TVCM・ラジオCMなどコストをかけて活用する広告メディア
【アーンドメディア】
口コミサイトやSNSなど、消費者の評判・信頼を得るのに適したメディア
インターネットの普及とともに広がった、もっとも新しい形態です。評判によって形成されるメディアを指します。具体的にはSNSや個人ブログなどです。
口コミや評判など生活者側が発信するため、企業側がもっともコントロールしにくいメディアです。
オウンドメディア・ペイドメディア・アーンドメディアの3つをまとめて「トリプルメディア」と呼びます。トリプルメディアは互いに排他的な関係にあるのではなく、それぞれの利点を生かしシナジーを生み出すことが可能です。
トリプルメディアを比較すると、オウンドメディアやアーンドメディアは自社サービス・商品を消費者に「見つけて」もらわないといけません。一方的に消費者へ情報をとどけるペイドメディアと比べ、成果を出すまで時間がかかります。そのためオウンドメディアは、成果が出るまで長い目でみる必要があります。
メディア戦略のためのトリプルメディア活用
トリプルメディアそれぞれの特徴については「メディア戦略のためのトリプルメディア活用」でも詳しく解説しています。参考にしてください。
オウンドメディアの目的は?
さまざまある集客方法の中で、企業がオウンドメディアを運用する目的にはどのようなものがあるでしょうか。以下、主な目的となるものを4つ紹介します。
- ブランディング構築・認知度向上
- 顧客ロイヤルティ向上
- リード獲得
- 採用強化
1.ブランディング構築・認知度向上
オウンドメディアは、ブランディングの構築や自社の認知度を向上させる手段として有効です。オウンドメディアで商品の情報とともに、開発のプロセスや、自社ならではのこだわりといったストーリーを盛り込むことで、消費者の共感や理解が得られます。自社商品をリピートしてくれるようなコアなファンの獲得も可能です。また、ブランディングにより業界における自社の立ち位置を創造できることで、商品やサービス、企業の名前が認知されるようになります。
このようにして商品や企業自体をブランディングして獲得したユーザーは愛着や信頼を寄せる固定ユーザーとなり、ブランディングはそのユーザーの選択行動に対して非常に有利に働きます。
2.顧客ロイヤルティ向上
オウンドメディアは新規顧客だけでなく、既存顧客も閲覧します。オウンドメディアで商品の詳しい使い方や、活用方法を発信するのも有効です。その結果、消費者に自社商品の魅力をより深く知ってもらえる他、自社に対する共感が醸成されます。これにより、顧客ロイヤルティの向上につながるのです。
3.リード獲得
企業がオウンドメディアを運営する目的のなかでもとりわけ重要なものは、利益に直結するリード(見込顧客)の獲得です。オウンドメディアを用いて消費者にとって有益な情報を発信することにより、見込顧客に興味をもってもらえます。仮にオウンドメディアがGoogleなどの検索エンジンで上位表示されれば、多くの消費者を呼び込むことも可能です。
なお、BtoBでは顧客の意思決定に時間がかかります。見込顧客獲得だけでなく、その醸成(ナーチャリング)まで視野に入れる必要があります。
4.採用強化
採用強化を目的として、オウンドメディアを活用する事例も少なくありません。自社サイトでは掲載しきれない自社商品に対する想い・こだわり・社内の様子などを掲載します。オウンドメディアによって、自社に興味をもってくれた人材の採用が可能です。オウンドメディアを使った採用活動のことを「OMR(オウンドメディアリクルーティング)」と呼びます。
オウンドメディアのメリット・デメリット
ここからは、オウンドメディアを運用するメリット・デメリットについて説明します。
メリット
まずはメリットをみていきましょう。オウンドメディアを運用する大きな3つのメリットをご紹介します。
1.顧客の興味・行動に寄り添ったリード発掘が可能
昨今では、世の中に情報が溢れ、消費者も日常的な消費活動において商品やサービスに関する情報を処理しきれなくなっているともいわれています。そうしたなかでは、消費者の興味・行動に寄り添うような、本当に有益な情報の発信が求められます。
消費者の求める有益な情報の発信に、オウンドメディアは適しているのです。ターゲットとなる顧客に対するパスが十分でないときも、ターゲットが関心を寄せる事柄を把握し、それにつながる検索キーワードを押さえることで見込みが高いリードを獲得できます。
2.顧客との中長期的な関係を築いていける
顧客との関係性について、商品売買が終了した時点で終わるのでなく、より中長期な関係に発展させるのにも役立ちます。マーケティングでは単発の施策だけでなく、長期的な視野で顧客との関係性を強化するのが重要であることはいうまでもありません。
オウンドメディアなら、顧客のアクセスログも取得可能で、企業の顧客に対する理解を深めるのに役立ちます。こういったデータを活用して顧客の行動傾向を丁寧にフォローすることにより、自社と顧客との関係を中長期で醸成する仕組みを構築可能です。
3.時間とともに成長(投資効果が累積される)
オウンドメディア用に作成したコンテンツは、企業の資産として蓄積されていきます。その結果オウンドメディアが成長し、より多くのリードを獲得できるようになるわけです。
オウンドメディアは、出稿を停止した途端に効果がなくなる広告とは一線を画します。一度消費者にとって有益なコンテンツを作れば、それが持続的にリードを獲得し続ける資産となるのです。
デメリット
次にデメリットをみていきましょう。オウンドメディアの運用で負担となる3つの要素をご紹介します。
1.時間がかかる
オウンドメディアで成果を出すまでにはある程度時間がかかります。単発利用できる広告と比べて、オウンドメディアは年単位での運用計画を立てる必要があります。なぜなら、メディアにコンテンツが蓄積され、検索エンジンで上位に表示され流入が増えるまでに時間を要するからです。一方、戦略をしっかりと立ててPDCAを回しながら運用することで軌道に乗りさえすれば、蓄積したコンテンツに対する訪問者が少しずつ増えていきます。
2.手間がかかる
オウンドメディアを運営する場合、継続的にコンテンツを追加・編集し続けることが求められます。最初のころは、コンテンツの適切な作り方に関するノウハウがなく、時間がかかる企業も多いでしょう。コンテンツ作成後は、効果測定・分析といった作業も必要です。その分、手間がかかり担当者に負担がかかるのは否めません。
3.お金がかかる
オウンドメディアを成功させるためには、単体の運用ではなくCSM・CRM・MAといったツールの導入が推奨されます。また、オウンドメディアを運営・維持するリソース・スキルが自社にない場合は、外部リソースを活用するコストも必要です。これらの結果、オウンドメディアの運営にあたり一定以上のコスト負担は避けられません。
オウンドメディアの構築の進め方
オウンドメディアは自社のブランディングやリード獲得に適した施策ですが、実際にどのような手順で構築すればよいでしょうか。オウンドメディアの構築の進め方には、企画、立ち上げ準備、運用と3つのフェーズにわかれており、一貫した目標をもって取り組む必要があります。
1.オウンドメディアの企画
まずは「なぜオウンドメディアの運用を始めるのか」「誰に向けて発信するのか」「どのようなコンセプトにするのか」などの企画を考えます。
オウンドメディアでは、次のことを特に考えていきます。
- 目的
- 対象となるユーザー(ペルソナ)
- ユーザーの態度変容を促すシナリオ(ジャーニー)
- スケジュール
- コンテンツの内容
BtoBでは、契約決定までの時間がかかるため、リード獲得を目的とすることが多くなっています。なかでもよくあるのが、資料ダウンロードにあたって顧客情報(コンタクト情報)を取得し、顧客育成(ナーチャリング)を図るパターンです。
スケジュールに関しては、オウンドメディアの継続の可否を決める、マイルストーンも入れておきます。KPIを決めておき、それぞれのポイントで数値に基づく客観的な判断ができるようにしておきます。
また、オウンドメディアに限りませんが、サイトを立ち上げる場合は目的がはっきりしていないと、ほぼ失敗します。
オウンドメディアの目的としてよくあがるのが、次の三つです。
- 認知度の向上
- リードの獲得
- 購入やサービスの申込み、BtoBであれば問い合わせの増加
オウンドメディアの取組みが急激に増えた時期によくあげられたのが「認知度の向上」です。しかしこれは「オウンドメディアをやり始めたけれど、目的は明確ではなかった。成果もわかりにくいし、認知度の向上ということにしよう」というふうに、結果として認知度の向上に落ち着かせたものです。
結局は「PV数はそれなりに稼いでいるが、資料請求などが増えない」「認知度の向上がそもそも実感できない」ということで、サイトが閉鎖になってしまうケースが多くなります。
リード獲得はBtoBでよく聞かれる目的です。代表的な手法としては、資料ダウンロードでユーザー情報(コンタクト情報)を取得、メールなどプッシュ施策も交えながらナーチャリングをしていくというものです。これについては数値的な評価もしやすく、オウンドメディアを作る意味が大いにあります。
ただし広告と獲得件数があまり変わらない、むしろ減ってしまったという際は、サイト運営の縮小、場合によっては閉鎖ということもあり得ます。広告のようにCPAで明確に評価できないという点も、マイナスに見られてしまうことがあります。
購入やサービスの申込みは、オウンドメディアだけではハードルが高いといえます。オウンドメディアを作るよりも決済などサービスの向上、商品力向上など別のところに力を入れた方が良いサイトは、多々あります。一般的にリピート購入を促すような消費財はオウンドメディアではなく、定期購入やCRMの施策をうつことの方がずっと効果的です。
企画段階で目的について検討する際は、以下にあげるポイントに注目します。
- 目的達成にあたり、オウンドメディア活用は最適な手段か
目的に対してオウンドメディア活用が必ずしも適切とは限りません。例えば、短期的なリード獲得を目的とする場合には、オウンドメディアは効果が出るまで時間がかかるため有効ではありません。 - カスタマージャーニーは意識できているか
購入につなげたいペルソナを明確にし、顧客が商品を認知してから購買を検討する各段階において、どのような情報が必要かを考え、的確に伝えられるコンテンツを用意する必要があります。 - オウンドメディアの効果を測る指標は存在するか
目的に適した指標をあらかじめ設定しておくことが重要です。
これらが出揃うなら、オウンドメディアの具体的な準備へと入っていきましょう。そうでない場合には、オウンドメディアをおこなうことは踏みとどまった方がいいかもしれません。
やることが決まったら、ユーザーファーストの原則に従ってペルソナを考えていきます。ペルソナは「作らないといけないから」というのではなく「その情報をどんな人に届けたいのか」という視点でしっかり作りましょう。
データをきちんと揃え、顧客と直に接する担当者とのヒアリングも必ずおこないます。ペルソナを作ったら、態度変容を促すシナリオを作ります。態度変容がポイントです。
具体的には、たとえばセキュリティ製品なら
- 「気になる用語があった→その意味を伝える」
- 「内容に関心を持った→その必要性を解説する」
- 「自分ごとにしてもらう→業種、業界別の事例を紹介する」
- ・・・
といったシナリオを作ります。
この例でユーザーは、最初は言葉の意味を知りたいだけだったのが「セキュリティ製品を入れないとまずいのではないか」という内面の変化を起こしました。こうなると、オウンドメディアの施策は半分成功したといえます。
あとは比較コンテンツ、製品の選び方などよりコンバージョンに近いコンテンツで、刈り取りをおこなっていきます。「良い記事だったな」だけではビジネスとしての成果に結びつきにくいことを、よく理解するようにしましょう。
2.オウンドメディア立ち上げの準備
運用の目的を明確化したら、メディアを立ち上げる準備をしていきます。立ち上げの準備では、おもにサイト制作とコンテンツ制作の2軸でプロジェクトを進めていきましょう。
サイト制作 |
要件定義 UI設計 サイトのトーン&マナーの策定 CMSなど導入技術の決定 デザイン、コーディング プログラム実装 テスト確認、公開 UIをユーザーフレンドリーに |
コンテンツ制作 |
記事設計 編集体制づくり ライターの確保 ライティングのガイドライン作成 コンバージョンポイントの設定 集客の方法 |
オウンドメディアの運用では、コンテンツを蓄積しSEOによって集客を目指すのが一般的です。ただしSEOだけでは短期間では十分な成果が出ない可能性もあるので、サイトやコンテンツの制作以外にもSNSでの告知や広告出稿などの集客方法も検討する必要があります。
3.オウンドメディアの運用
オウンドメディアの運用はおもにコンテンツ制作がメインで、「記事を投稿する」→「効果を分析する」→「改善を図る」を繰り返します。コンテンツ制作においては自社制作の他、手が足りない場合は外注を検討するのも手です。検索上位を狙うためのSEOも継続して実施する必要があります。
また、オウンドメディアでのマーケティングを効果的に進め、獲得したリードを売上につなげるためには、各種ツールの利用も必要です。具体的にはMA(マーケティングオートメーション)・CRM(顧客関係管理)・SFA(営業支援システム)などのツールがあげられます。(有効なツールの例や詳細は記事後半の「どのようなデジタルツールを選定したらよいか?」で説明します。)
成果を出すための運用で意識すべき5つのポイント
集客に成功しているメディアは、ほとんどがいきなり目指した結果を出したわけではなく、常に適切な改善を積み重ねることによって目標を達成できるようなサイトに育て上げてきているのです。オウンドメディアの運用で成果を出すためには、5つの戦略のポイントについて正しく認識しておく必要があります。
- 運用目的(ミッション)は明確か
- 成果指標が設定されているか
- 戦略が設計されているか
- 実行するためのプランや体制はあるか
- 適切な評価がされているか
1.運用目的(ミッション)は明確か
まずはなぜオウンドメディアを運用するのかを明確にし、各担当者と認識を共有します。戦略や成果指標は目的の上で成り立つため、ミッションの認識が間違っていると、目標値や評価の軸がぶれてしまうので、それぞれの担当者と共有したうえで進めましょう。
2.成果指標が設定されているか
次に必要なポイントは目標設定です。まずは目標をどこに置くかが重要なポイントになってきます。たとえば商品紹介サイトであれば、最終的なコンバージョンポイントは商品購入ですが、いきなり目標を商品購入だけにしてしまうと、細かな戦略を立てることが困難になってきます。そのため、購入の手前であるメルマガの登録や申込ページへの移管数など、購入につながるアクションをまずは中間目標におくといいでしょう。商品購入(KGI)を達成するための行動数(KIP)で見ると、より詳細の戦略を詰められるようになります。
KGIとは、重要目標達成指標のことであり、簡単に言うと最終目標値のことです。「KGIが達成されれば、オウンドメディアは量的にも質的にも成功していると実感できるような基準」を設けることが良いとされています。オウンドメディアのKGIは四半期ごとに測定可能な数値基準を設定し、毎期末ごとに見直しと修正を行っていきましょう。
3.戦略が設計されているか
KGIを設定し具体的なゴールが決まったら、戦略を立案します。戦略を立案するというと、少し難しい言葉のようにも見えますが、特に難しいことをする必要はありません。
実施することは、「マーケット分析」と「ペルソナ」、「具体的な戦略」の決定です。
①マーケット分析
戦略を立案するためには、誰よりもマーケットについて深く理解する必要があります。マーケット分析については、当サイトでも過去に説明したことがある4C分析を利用します。
改めて簡単に説明すると、4C分析では顧客視点に立った上で下記のことを明確化していきます。
- Customer Value(ユーザーが得る価値)
- Cost to the Customer(ユーザーの負担コスト)
- Convenience(利便性)
- Communication(コミュニケーション)
やみくもにマーケット分析を実施するのではなくて、フレームワークと呼ばれる考え方の枠組みを利用することで、物事に対して筋道を立てて論理的に落とし込んでいくことができます。
②ペルソナ
ペルソナの歴史は、心理学者のユングが「人間の外的側面」について定義したことから始まり、今では商品やサービスの「理想のユーザー像」として、頻繁に利用されるようになっています。
調査データや顧客情報を利用し、まるで実在する人物であるかのように、理想のユーザー像を導き出していきます。自社の顧客となるべき典型的な人物像の価値観や行動などを具体的にイメージすることにより、それに合わせた施策を適切に取りやすくなります。
- 年齢
- 家族構成
- 住まい
- 仕事
- 役職
- 情報収集手段
- 趣味
- ライフスタイル
- 座右の銘
- 人間関係
上記のような情報から1人の人物像を導き出すことで、ターゲットとすべき人物が明確になります。しかしながら、商材によっては複数のペルソナを設定した方が都合が良いこともあるので、戦略のサイクルを回していく中で、反省点からその都度、柔軟に設定していくと良いでしょう。
ペルソナとは?インバウンドマーケティングを成功へと導く最初の一歩
ペルソナについては「ペルソナとは?インバウンドマーケティングを成功へと導く最初の一歩」でも詳しく解説しています。参考にしてください。
③具体的な戦略
マーケット分析やペルソナから策定されたデータを利用して、具体的な戦略を考えていきます。実際の顧客像を明確にすると、その顧客へのアプローチ方法や競合との差別化ポイントから戦略を明確化できます。
例
- コンテンツマーケティングによる情報提供
- ソーシャルメディアマーケティングによる認知の向上
- インフルエンサーマーケティングによる権威付け
- ○○のキーワードを中心としたリスティング広告による意識づけ
などの戦略的施策を作ることができます。
ここまでくれば、それぞれの施策に関してKPIを設定し、ゴールに必要な要素を明確にすることができるでしょう。
ちなみにKPI (Key Performance Indicator)は、重要業績評価指標を表す言葉で、KGIを達成するために必要な過程の達成度合いを計測するための指標です。上記のゴールに「1ヵ月以内に売上を1000万円以上にする」というものがありましたが、このKGIに対するKPIを考えるのなら、下記のようなことが言えます。
- メール送信数を2倍にし、サイトへの再訪率をXX%にする
- 既存のリスティング広告費用の単価を30%下げる
というように、KGIの達成に必要な施策を考えていきます。
4.実行するためのプランや体制はあるか
実際に施策を実行するときには、目標設定や効果測定のためにもデータ計測が必要不可欠です。オウンドメディアのデータ計測ではGoogleアナリティクスがよく使われます。Googleアナリティクスでは、サイト流入やCV数など想定した効果が出ているのかを数字で把握することができます。
また、HubSpotなどのMAツールはより細かな情報分析を行えるため、あわせて利用するといいでしょう。
MA(マーケティングオートメーション)とは?導入の流れやポイントを解説
MA(マーケティングオートメーション)については「MA(マーケティングオートメーション)とは?導入の流れやポイントを解説」でも詳しく解説しています。参考にしてください。
5.適切な評価がされているか
データ計測で得られた結果は短いサイクルで確認し、常に分析と改善を重ねましょう。分析では結果を構成するデータを紐解き、どこに原因があるのか、どのような改善を行うのかを検討します。
例えば問い合わせ数が伸び悩んでいる場合、以下の要因が考えられます。
- アクセス数が少ない
- メディア内の回遊が少ない
- 問い合わせへの誘導が適切でない
このような要因のうち、どれかひとつが悪かったり、複合的に課題があったりするため、先入観を持たずに論理的に数字を読み取ることが重要です。
そして、改善するポイントが明確になればすぐに実行します。自社のサービス、競合、市場、顧客の行動は常に変化していくため、常に改善を重ねていきましょう。
オウンドメディアで成果を出すためには、以上の5つのポイントを抑えて運用していきましょう。
オウンドメディア企画・立ち上げ・運用時に必ず出てくる疑問点
オウンドメディアの運用において、ノウハウがなければ必ず疑問点が浮かび上がります。次に打つべき施策がわからなくなった場合は、すぐに解決方法を調査しましょう。本章では弊社がオウンドメディア運営をサポートする中で特によく聞かれる疑問点を5つ紹介します。
- どのような記事を書いたらよいのか?/セッション数を増やすにはどうしたらよいか?
- どうやってリード/コンバージョンを獲得するか?
- どうやって顧客の購買ステージを高める/ナーチャリングするか?
- どのようなデジタルツールを選定したらよいか?
- ツールを使いこなせるかが不安/現状のリソースで実施できるか不安
1.どのような記事を書いたらよいのか?/セッション数を増やすにはどうしたらよいか?
記事の執筆にあたっては、検索意図や競合の調査、ソリューションの理解が欠かせません。その上で、以下の要素を満たす質の高いコンテンツを作成します。
信頼性:信頼性が低い記事では顧客が離れてしまいます。
専門性:専門性が低いと、読む価値がないと判断されてしまいます。
権威性:素人より専門家の書いた記事の方が、より読者を集めやすいです。
訪問数が伸び悩むページについては、適宜改善案を検討しリライトを行います。その他、内部リンク構築・モバイル対応・読み込みスピード向上といったSEOも必要です。
検索意図とは?その重要性と調べ方について サジェストキーワードと関連キーワードの違い
ユーザーの検索意図については「検索意図とは?その重要性と調べ方について サジェストキーワードと関連キーワードの違い」でも詳しく解説しています。参考にしてください。
2.どうやってリード/コンバージョンを獲得するか?
品質の高い記事を蓄積することが、メディアとしての信頼を得てリード/コンバージョンにつなげる近道です。たとえば、メディアのターゲットが経営層向けなら、作業のディテールより将来に向けた方向性を示唆します。一方、現場向けならホットな話題で共感を得るなど、ペルソナを意識したコンテンツ作りがポイントです。カスタマージャーニーに応じたオファーを設計しましょう。
3.どうやって顧客の購買ステージを高める/ナーチャリングするか?
オウンドメディアの運用にあたって、特にBtoBの場合1度のサイト閲覧で商品やサービスの購入にまで至ることは稀です。ナーチャリングを続け、根気強く成果につなげることを目指す必要があります。
具体的には、記事の購読状況・資料のダウンロード状況・メール開封状況などから顧客の興味を少しずつ明確化していき、適切な施策を打つのです。その際に、MAツールを利用すると効果を出しやすくなります。
MAツールとは、従来は人が行っていた定型業務を自動化し、さらにその精度も高めるマーケティング支援ツールです。オウンドメディアにMAツールを組み合わせることで、顧客に応じた施策を打ちやすくなります。
4.どのようなデジタルツールを選定したらよいか?
オウンドメディアの運用にあたり、具体的には以下のようなツールが有効です。
- CMS
HTML/CSSといった専門知識なしで、質の高いコンテンツを作成できるツールです。
どの検索KWで各WEBページへ流入してきているかも把握でき、活用することで運用改善を効果的に進められます。 - CRM
顧客に関するデータを管理し、顧客との関係を強化する機能を備えたツールです。 - MA
マーケティングにおける定型作業を自動化するとともにその精度を高め、マーケティングを支援するツールです。例えば、特定のコンテンツをダウンロードした顧客に対して、関連性の高いセミナーに誘導するメールを自動的に配信するといったようなことができます。
オウンドメディアの運用では、CMSで顧客を惹きつけるコンテンツを作成し、顧客情報(属性・行動履歴など)をCRMに蓄積し顧客解像度を高めます。その上でMAを利用し、顧客の興味に応じたマーケティング活動を展開・自動化するのです。
加えて、CMS・CRM・MAは個別に運用するのではなく、並列的にシステムとして構築・利用することが推奨されます。その方が、これら機能をスムーズに連携させ、より効率的に設定したゴールへ近づけるためです。また、これからこういったシステムの運用を検討する場合は、クラウド型を検討することをおすすめします。クラウド型なら運用をサービス事業者に任せられる上に、常に最新の状態で利用可能です。スケーラビリティが高いため、スモールスタートして徐々に拡張していくことも容易で、徐々に成長させていくオウンドメディアの特性とも相性が良いのです。
<CMS/CRM/MAがオールインワンで利用可能なHubSpot>
HubSpotは、CMS/CRM/MAをオールインワンで提供するマーケティングプラットフォームです。これ1つでCMS/CRM/MAの機能が使える上に、Google Analyticsとも連携可能です。そのため、HubSpotならコンテンツの改善点や顧客の取得情報をワンストップで参照できます。(各Webページから直接HubSpotへ入り、そのページの検索キーワードや検索数を参照可能)
これらに加え、適切な活用を支援する動画コンテンツも豊富に用意されています。
5.ツールを使いこなせるかが不安/現状のリソースで実施できるか不安
ツールの適切な使い方が分からないときは、ツール導入時のトレーニング及びサポートを含めたオファーを受けることが推奨されます。自社でスキルのある人材を確保するのが難しいときや、ツール利用のノウハウがないときは外部ベンダーの活用も検討すべきです。
オウンドメディアの運用事例【2選】
ここでは、過去からのオーソドックスなもの、そして最近公開されたオウンドメディアでの傾向などもあり、過去との違いなど興味深い発見がありましたのでToC事例 / ToB事例を交えながらご紹介します。
1.くらし良品研究所
くらし良品研究所
株式会社良品計画の運営する「くらし良品研究所」は、オウンドメディアという言葉が一般化する前からある、老舗のメディアサイトです。
https://www.muji.net/lab/living/170517.html
その記事ページは、今の視点で見るとかなりオーソドックスな作りです。PCサイトでは両側に各種情報を掲載した、3カラムレイアウトを取り入れています。サイドカラムには広告が入っているメディアが多いですが、このサイトにはそれはありません。
基本的には別カテゴリや、関連テーマの記事へのナビゲーションになっています。
ソーシャルメディアのボタンについては、記事の最後にTwitterとFacebookのいいねボタンのみが配置されています。
ソーシャルメディアのボタンを記事の上部、タイトル付近のみに設置した記事ページも見られますが、ユーザーが記事を読み終わってから、再び上に戻ってシェアするという行動は考えにくいです。記事の最後に置いた方が、利用されやすいでしょう。
またコメントについては自サイト内での記入ですが、Facebookのコメントプラグインを入れています。ですから投稿の際には、Facebookにも投稿するかどうかのチェックボックスが出ます。
こうした機能も、ソーシャルメディアでの拡散を考えれば非常に重要でしょう。
2.経営ハッカー
経営ハッカー
続いては、BtoBのオウンドメディアです。
クラウド会計ソフトなど、バックオフィス業務効率化のためのソリューションを提供するfreee株式会社が運営する「経営ハッカー」です。
経営者や個人事業主のために、会計や経理など事業に役立つ情報を日々発信しています。
https://keiei.freee.co.jp/articles/c0300184
記事ページは2カラムの構成。3カラムだとどうしてもメインコンテンツ箇所が小さくなってしまうからでしょうか、最近の記事ページは、2カラム構成が多い印象を受けています。
ソーシャルメディアのボタンは、記事の最後に設置しています。ボタンの中には、「Pocket」も含まれています。これはちょっとした保存に便利なサービスなので、設置しているオウンドメディアも目立ちます。
さてこのサイトの記事ページですが、サイドカラムは自社製品への誘導リンクとなっています。また製品への広告リンクだけでなく、複数種類の無料ガイドダウンロードページへの誘導もあります。
いずれもコンバージョンに結びつくメニューになりますが、資料ダウンロードでは個人情報登録後のメール配信やコンテンツの出し分けなど、マーケティングオートメーションと連携させるとかなり効果が出せそうです。
スクロールしていきサイドカラムが終了する位置では、記事コンテンツの終わりまで誘導バナーが固定で出るというのも面白い作りです。
最近のコンテンツマーケティングは効果測定が十分にできていないケースが多く、PVがそれなりにあればOKといった雰囲気もあります。しかしこうしたコンバージョンへの導線をきちんと工夫することで、成果に直結する施策は可能です。
またせっかくマーケティングオートメーションというツールがあるのですから、すぐのコンバージョンでなくても、ここからのナーチャリングも考えた戦略を組み立て、それに基づくページづくりで効果が出せます。
このサイトもスマホページになると、サイドカラムにあった製品誘導のバナーが揃って下側にいきます。
誘導バナーを下にさげた時の効果はどれぐらいになるのか。ヒートマップやアクセス解析の変数設定を使って、インプレッションと共に効果を測り、より効果的な配置方法がないかも探っていくようにしましょう。
オウンドメディアの投資対効果を最大にするには?
オウンドメディアの運用にあたり、構築の進行やポイントは重要です。ただし、投資対効果を最大化するためには、マーケティング全体を見渡す視点も必要となります。ここではオウンドメディアを最大限活用する具体的なポイントを紹介するので参考にして下さい。
1.あらゆるマーケティング施策でオウンドメディアとの相乗効果を意識する
オウンドメディアと、その他の広告などの手法を組み合わせることで相乗効果を生み出すことが可能です。オウンドメディアと相性のいいマーケティング施策を5つ紹介しますので、自社にとって最適な施策を選びましょう。
Web広告
Web広告は、短期間でコンタクトを獲得するのに適しています。オウンドメディア単体でのリード獲得には時間がかかるため、Web広告を併用し加速させるのも手です。オウンドメディアで作成済みのコンテンツを活かしてさらに高い効果を出せるのはもちろん、オウンドメディアの効果をより早くだせるようになることから一石二鳥といえます。
Web広告で最も一般的なプラットフォームがGoogleです。2022年3月時点でGoogleは日本で76.14%ものシェアを誇ります。Web広告を出してみるなら、まずはGoogle広告を使って見ると、多くの人にリーチしやすいでしょう。
Google広告の中心となりそうな二つ。動的検索広告とレスポンシブ検索広告
Google広告については「Google広告の中心となりそうな二つ。動的検索広告とレスポンシブ検索広告」でも詳しく解説しています。参考にしてください。
SNS
SNSもマーケティングの手法として利用できます。SNSマーケティングは、認知度アップ、顧客との関係性の構築、コンテンツディストリビューション(コンテンツをユーザーに届ける)などの役割を担っています。人気の高いブログ記事やコンテンツなどをSNSに投稿すると、拡散してもらいやすいです。その結果、それらの記事・コンテンツへの流入を増やしコンタクト獲得につながります。
デジタルマーケティングの中心的な存在、SNSの2022年
SNSマーケティングについては「デジタルマーケティングの中心的な存在、SNSの2022年」でも詳しく解説しています。参考にしてください。
Webinar/セミナー
オウンドメディアで獲得したリードをステージアップさせるためのオファーとしてWebinar/セミナーは有効です。Webinarはこれまで行ってきた会場を使ったリアルなセミナーをオンラインに切り替え、Web上のバーチャルな会場でビデオやセミナースライドなどを参加者に共有することで、直接会場まで足を運ばなくてもセミナーに参加できるようにした方法です。 参加者は場所を選ばずWebinarに参加できるため、よりセミナーへのハードルが低くなっています。
そして会場の制約がなくなったため、参加できる人数が100人を超えるWebinarも容易に開催できるようになりました。多くのリード顧客にアプローチするためにも、Webinarはこれからの時代マストで取り入れたい手法です。
WEB集客を加速させる!セミナーの開催方法やノウハウを解説
Webinarの開催ノウハウについては「WEB集客を加速させる!セミナーの開催方法やノウハウを解説」でも詳しく解説しています。参考にしてください。
CRM
顧客情報を管理しながら関係性を構築する手法をCRM(顧客関係管理)といいます。通常CRMツールなどが使われ、顧客との関係を一元的に把握できるようになります。CRMでは顧客情報、購買履歴、営業や問い合わせ履歴の管理ができます。獲得済みのリードからは、顧客がどの記事を読んだかやどのコンテンツをダウンロードしたかなどのアクセス履歴なども参照でき、その蓄積したデータをもとに顧客の興味関心や市場ニーズを分析し、営業管理やマーケティングに活かして売上につなげます。
CRMとは? 多機能なのに無料なHubSpot CRMを紹介
自社にCRMを取り入れるメリットについては「CRMとは? 多機能なのに無料なHubSpot CRMを紹介」でも詳しく解説しています。参考にしてください。
メールマーケティング
メールマーケティングとは、同一の内容のメールを全ての人に送信するメルマガとは異なり、ひとりひとりに最適化したメールを配信するマーケティング手法です。メールマーケティングは古いのではないかと良く討論され、LINEにとってかわられたと言われますが、それはBtoCの商材の販促の場合だと考えられます。BtoBの商材のナーチャリングには、メールマーケティングは今後も効果的であり続けるでしょう。またコロナ禍によるリアルイベント、展示会等の減少により、オフラインでのリスト獲得の機会が激減したことで、BtoB企業は、メールを使ったリードナーチャリングの価値を、より強く実感しています。
メールマーケティングを効率的に進めるためには、MAツールで顧客の興味に応じたコンテンツ情報を自動的にメール配信していくことで、オウンドメディア内の回遊率を高め、顧客の関心度を引き上げていくといいでしょう。
メールマーケティングは今も効果的? 現状と6つの種類を解説
メールマーケティングの重要性については「メールマーケティングは今も効果的? 現状と6つの種類を解説」でも詳しく解説しています。参考にしてください。
2.可能な限り早期立ち上げと素早いPDCAを意識する
オウンドメディアで成果を出すためには、できる限り早期に立ち上げることと、PDCAを継続的に回して改善を続けることが必要です。流入数やコンバージョンをはじめとした各種数値は日々変化するので、定期的な検証が必要です。
3.作業に忙殺されない
オウンドメディアで成果を出すためには、長く継続することが肝要です。オウンドメディアは時間の経過とともにコンテンツが増加し、運用の負担は増していくという特徴があるため、継続する上では想定以上のリソースが必要となるケースが多いです。
そのため、できるだけ作業に忙殺されてしまわないように、先手先手で効率化を進めましょう。作業に優先度をつけて対応することも求められます。
オウンドメディアによって、顧客の興味に寄り添ったかたちでのマーケティングが可能になります。ただしオウンドメディアを成功させるためには、専用ツールの活用などで効率化していくことが欠かせません。オウンドメディアの運営でお困りの場合は、専用ツールの導入や運用などを外部委託するといったことも検討すると良いでしょう。
まとめ
オウンドメディアとは、企業が独自に管理・運用するメディアを指します。成果を出す方法を知ることで、効率的なオウンドメディア運用が可能です。そして、オウンドメディアの適切な運用には、CMS/CRM/MAといった専用ツールの活用が欠かせません。自社で運用が難しいときは、数多くのBtoB向けのオウンドメディアの構築・運営の経験のあるリードプラスまでご相談ください。