Google広告の中心となりそうな二つ。動的検索広告とレスポンシブ検索広告
Google広告のもっともスタンダードなのは、「検索連動型広告(リスティング広告)」です。ユーザーが検索をするクエリに合わせた広告を配信する、お馴染みの形です。しかしその中身は、いろいろ変わっています。
ここでは、これからGoogle広告の中心となっていきそうな「動的検索広告(DSA)」、それと「レスポンシブ検索広告」について紹介していきます。特に後者は必須となってきますので、具体的なノウハウも合わせて解説していきたいと思います。
動的検索広告(DSA)
まずは動的検索広告(DSA)について解説していきます。これはWebサイトやビジネスの規模、広告主の状況により必要に応じて導入していくものです。そのためあらゆる場合に必須というわけではありませんが、Googleがかなり力を入れている様子がうかがえます。
概要
通常のリスティング広告の出稿は、「キーワードを決める」「それに合うランディングページを決める」「広告文を作成する」といった、点をつなぎ合わせるような作業をおこなうものです。
しかしこうした点をつなぐ作業をしていると、「獲得できたかもしれないキーワードのもれが出る」「Webサイトが大規模すぎて、すべてのキーワードを網羅しきれない」「ページが多すぎて適切なランディングページを設定するのが難しい」などの問題が出てきます。
またこの後に触れますが、日々これまでとは異なるクエリでの検索がおこなわれているため、どんなに過去のデータを調べてもカバーしきれるものではありません。
動的検索広告(DSA)はこうした困難を解決できる方法です。Googleが次のようなことを、自動でおこなうからです。
- Google広告に登録されたWebサイトをインデックスし、内容を把握する。
- ユーザーが検索した語句と、広告主のビジネスとの関連性を見極める。
- 検索語句に合わせ、カスタマイズした広告(見出し、リンク先)を配信する。
つまり無数のキーワードを調査したり、ランディングページを精査して設定していた手間を省け、かつ幅広くもれがないユーザー(クエリ)に配信できる方法です。次の項目で、具体的なメリットを解説していきましょう。
メリットとデメリット
動的検索広告には、いくつものメリットがあります。
- 幅広いキーワードが対策できる。
この機能ができた背景として、Googleは「毎日検索される語句のうち、約15%はこれまで検索がなかった語句」というデータをあげています。通常のキーワード登録でこれを対応するのはほぼ不可能ですが、自動で検索語句とビジネス、Webサイトを判別することでこれが可能になります。
- 時間の節約ができる。
上記のキーワード登録はもちろん、ランディングページの精査や登録も必要です。広告文の作成と登録にも時間がかかります。これらについてもGoogleが動的に生成しますので、調査や設定にかける時間を減らすことができます。
ECサイト以外にも、記事コンテンツへの流入をはかる場合に使えます。自然検索やSNS以外に広告を併用して記事コンテンツに呼び込むケースは多いですが、それに対してもメリットが大きい機能です。
一方でデメリットもあります。
- 更新が頻繫なサイト(日々タイムセールをおこなっている等)には推奨されない。
- ページのタイトルやコンテンツが整理されておらず、それぞれのテーマが明確でないサイトでは力を発揮しない。
- 画像が中心、ログインしなければ多くのコンテンツにアクセスできないといった場合も不向き。
- 細かな表示や入札のコントロールはできない。
- ブランドを棄損するような配信がされる可能性もあり得る。
特にデメリットに感じるのは、「細かなコントロールができない」という点でしょう。Google広告の自動化が進んできているとはいえ、ブランドを棄損しないようある程度の管理は必要、という企業は多くあります。組織としてどう方針を調整していくか、といったことが課題になります。
レスポンシブ検索広告
動的検索広告は必要に応じて使うというものでしたが、ここから紹介するレスポンシブ検索広告は、今後必須といえます。設定方法まで、きちんとマスターするようにしましょう。
概要
Google広告でレスポンシブ検索広告がほぼ必須になる、としているのには理由があります。2022年6月30日から、拡張テキスト広告の作成ができなくなり、広告の新規作成はこの方法となるからです。また既存の広告(登録済みの拡張テキスト広告)は、編集もできなくなります。つまり広告の運用者が手作業でおこなう範囲に、大きく関わる機能なのです。
レスポンシブ検索広告の説明の前に、従来の拡張テキスト広告のポイントを復習しておきましょう。
■拡張テキスト広告
次の要素を登録します。各条件も一緒に記載します。
- 見出し
30文字(全角15文字)
3つまで登録可 - 説明文
90文字(全角45文字)
2つまで登録可 - 表示URL
最終ページURLのドメインに基づく。 - パス
表示URLに2つまで設置可
レスポンシブ検索広告も、構成要素は拡張テキスト広告と同じです。ただし、次のように登録数が異なります。
- 見出し
3つまで→15個まで登録可 - 説明文
2つまで→4個まで登録可
レスポンシブ検索広告とは、拡張テキスト広告と同じ仕様で複数登録した「見出し」と「説明文」を、Google広告側がユーザーの検索行動により、効果的に組み合わせ自動で表示されるようにするものです。つまり見出し、説明文をアセット(部品)と考え、その組み合わせはGoogle広告にゆだねるわけです。Google広告側はこれをランダムに出すのではなく、機械学習により検索ごとに最適な形になるように表示してくれます。そのため人が考え運用するよりも、高い効果が期待できます。
メリットとデメリット
レスポンシブ検索広告のメリットは、次の通りです。
- 関連性の高い広告が表示される。
ユーザーの検索行動に合わせて、関連性の高い広告が表示されるようになります。広告運用者にとっては、時間短縮のメリットにもつながります。 - より多くの見込み客へアプローチできる。
複数の広告アセット(見出し、説明文)の存在は、検索語句との一致も増えるため、オークション数の増加にもつながります。つまり、より多くの見込み客へアプローチできるのです。 - スペースに合わせた柔軟な配信。
リスティング広告の運用は、登録するキーワードや広告文にだけ目がいきがちですが、配信面に対する最適化も大きなポイントです。具体的には画面幅に合わせた配信が必要とされます。レスポンシブ検索広告は、これも考慮した表示をおこなっていきます。 - 成果アップ
表示機会の増加、クリック数の高まりなどは成果アップにつながります。レスポンシブ検索広告を設定した広告グループのパフォーマンスも、向上していくでしょう。
メリットが盛りだくさんのレスポンシブ検索広告ですが、いくつかのデメリットも存在します。
- 意図通りの配信になるか。設定のバランスが難しい。
見出し、説明文の組み合わせのされ方によっては、意図しない表示になってしまうケースもあり得ます。たとえば必ずブランド、サービス名を見出しに入れたいという場合でも、完全自動に任せていると、表示されないこともあるからです。
ただしレスポンシブ検索広告はこうした点も考慮されていて、必ず表示させたい見出し、説明文を固定する登録が可能です。つまり「ブランド名を常に見出しの最初に表示」としておけば、実際の広告配信では「見出し:“ブランド名”-新サービス開始」といった形式になるからです。ただし固定をあまり使い過ぎると、結果的に拡張テキスト広告と変わらない配信となり、自動化のメリットがほとんどなくなるといったことも考えられます。必要最小限の使い方をするのが得策です。
もう一つのデメリットとして、完全自動化が十分でない面もあります。その証拠にGoogleは、レスポンシブ検索広告と拡張テキスト広告を組み合わせた登録を推奨していました。しかし2022年6月から拡張テキスト広告の登録ができなくなるということで、このデメリットはほとんどなくなってきていると考えて良さそうです。
レスポンシブ検索広告のノウハウ
最後に、レスポンシブ検索広告を成功させるポイントをいくつか紹介しておきましょう。
- 各アセットの特徴は異なるものに。
レスポンシブ検索広告はこれまでより見出し、説明文の登録数が多いので、それを負担に感じる方もいらっしゃるかもしれません。また単に複数のアセットを登録すればよいと考えて、ちょっとした言い回しの違うものをいくつも登録する方もいるようです。
しかしこうした「単なる表現の違い」「ほとんどが同じ訴求内容」といった登録では、成果はまず見込めません。上限の登録数になるよう登録することは大切ですが、それぞれが異なる訴求、特徴となるよう内容も重視した設定をするようにしましょう。 - キーワード、広告グループとの関連性も重視。
レスポンシブ検索広告はGoogle広告側が組み合わせを決定してくれますが、一つひとつのアセットの基本は従来のリスティング広告と同じです。つまりキーワードや広告グループと関連性を持たせたアセットが効果を高めます。
また広告見出しについて2~3つは、キーワードの類義語や語順の入れ替えといったバリエーションも含めて作っていくようにしましょう。 - これまでの見出し、説明文のノウハウを含めて登録。
レスポンシブ検索広告に変わるからといって、これまでの見出しや説明文を完全に捨ててしまう必要はありません。特に成果の高いものは引き続き使用して、組み合わせでどのような変化が起こるかを見ていきましょう。もちろん従来からのアセットを使うことで設定時間の短縮、それを参考にしてこれまで無かった内容を新たに追加するなど、情報ソースとしての利用価値もあります。