ステップメールはどう活用する?シナリオや頻度についても解説
メールマーケティングにおける手法の一つとして知られるステップメールは、ターゲットに対して段階的に情報を発信し、関係性を築きながら最終的なゴールに向かってもらう方法です。類似する手としてメルマガが挙げられますが、これらの違いと活用方法を理解して使いこなすことが大切です。本項ではこの「ステップメール」について解説します。
ステップメールとは
どのようなメールのこと?
ステップメールを活用したマーケティングでは、ターゲットに対してあらかじめ設定しておいたメールを一定の期間段階的に送ります。顧客の興味を引き出すため、例えば、自社が運営している公式サイトやオウンドメディアなどで、資料請求をしてくれた方に送るといったケースで使用されるケースが有名です。最大の特徴は、最初に登録したメールが自動的にターゲットへ送られることにあり、仮に5通を設定していたとすれば、指定した期間内に設定した相手に対して自動的に5通のメールが順次送信されます。また、ステップメールでは、全体で何通のメールをどれくらいの頻度で送るかを決めることができます。
ステップメールを活用するメリットは、見込み客と関係性を築きながら、いかに自社の製品やサービスがよいかをアピールできる点にあります。こうした持続的な取り組みによって購買意欲をかきたて、見込み客を優良顧客に育てることができます。そして、コンテンツを通じて商品・サービスのよさなどを伝え続け、最終的にクロージングに発展していきます。特に、じっくり検討したい高価な商品の場合に、より効果を発揮する手法といえるでしょう。
メルマガとの違いは?
メールマガジンのことを省略してメルマガと呼びます。無料で配信されているものもあれば、有料で情報を発信しているものもあります。ステップメールとの大きな違いは、運営者から一斉に配信される点にあります。例えば、100人の購読者がいた場合、メルマガは全員に対してまったく同じ内容のメールを送付します。一方のステップメールは登録したあと、1通目が届き、期間を置いて2通目、3通目が届きます。
ステップメールが顧客の興味度合いに応じて段階的にメールを送付するのに対して、メルマガは同じ情報を登録者で共有する手法です。そのため、顧客の興味を引き出す情報よりは、株の値動きや政治情勢など、最新の情報を提供する際に役立ちます。また、メルマガの読者は登録した時点からのものしか読むことができません。登録時、すでに15通の配信を行っていた場合、読めるのは15通目とそれ以降のものとなるため、必ず1通目から配信されるステップメールにくらべて読者間での情報の格差が大きくなります。
ステップメールの活用方法
ある商品を購入してくれた顧客に対して、別の製品やサービスを売りたい場合にステップメールを活用することができます。ここでは4~5通に分けて段階的にメールを送っていくケースを考えます。
最初に送るメールでは、購入してくれたことに対するお礼や商品の使い方などを伝えます。2通目には、顧客が疑問に感じやすいことに対するアンサー、アドバイスなどを記述します。顧客が「ありがたい」と感じる有益な情報を発信することで、企業に対する信頼感もアップすることが期待できます。
3通目で、顧客が購入したものに関連するアイテムをいくつか紹介します。「これを買った人は、これも一緒に買っています」といった具合です。4通目では、3通目で紹介した関連商品の活用事例、概要などを伝えてください。うまくいけば、すでに自社の商品を買ってくれた顧客が、また新たに何かを購入してくれる可能性が高くなります。そのためには、顧客が購入したものと相性のよいアイテム、併せて買うことでメリットが感じられるものを紹介しなくてはなりません。
ステップメールが向いていないケース
安価かつ買い切りタイプの商品にはステップメールは向いていないといえます。そもそも低価格な商品はじっくり検討する必要がないからです。一方で、高額なものだと多くの方は「失敗したくない」と考え、「今買うべきかどうか」と時間をかけて検討します。
ステップメールで段階を踏みながら接触を繰り返し、信頼関係を構築するのは顧客の背中を後押しするためでもあります。最初は迷っていた顧客も、送られてくるいろいろな情報を整理していく中で、購買意欲が刺激される可能性が出てきます。やはりステップメールは即時的に購入を決断できる商品やサービスの販促には向いていないといえます。
ステップメールを送る手段
手動でその都度送信することも可能ですが、見込み顧客や送ったメールの数を管理する必要があり、人的なコストや時間もかかります。そのため、基本的には専用のシステムを利用することになるでしょう。
ステップメールには無料と有料のシステムがありますが、どちらにもメリット・デメリットがあることを理解しなくてはなりません。無料で利用できる配信システムの場合、費用がかからないのが最大のメリットです。金銭的なリスクがほとんどないため、お試しとして利用できるのもうれしいポイントです。
デメリットとしては、利用できる機能やサービスに制限があることです。運営や管理、保守などにおいても一抹の不安は拭えません。ビジネスで使うのなら必要な機能を利用できるかどうか、セキュリティや管理体制はどうなのかを見極める必要があります。
有料のものだと、豊富な機能を制限なく利用できるのがメリットです。サポート体制も整っているため、困ったときに相談できるのも有料版ならではでしょう。デメリットとしてはコンスタントに費用が発生することが挙げられます。ただし、それ以上の価値(高いROI)が見込めるのであれば価格は問題にはなりません。
マーケティングオートメーション(MAツール)を導入して、ステップメールを配信することも可能です。本来人が行うはずだったマーケティングのオペレーションを効率化・オートマティック化できるのが最大の特徴です。メール配信機能も備わっており、段階に分けて送れるだけでなく、ユーザーが開封したかどうか、サイトの閲覧、クリックの履歴などもわかるため、ユーザーの属性や行動に合わせて情報を配信できるのがメリットです。また、HubSpotなどのリストという機能を使えば、例えば九州地区だけの人に送るステップメールや価格ページだけを閲覧した人に送るステップメールなど細かなシナリオを設定することも可能になります。ちなみにMAツールの場合には、このステップメールのことを「ナーチャリング メール」と言います。
ステップメールを送る頻度
顧客や見込み客との接触頻度を増やすことで親近感を抱いてもらうことができ、それが購買意欲につながると考えるため、なるべく顧客との接点を増やす必要があります。とはいえ、1日に何通もメールを送付するのはリスクが高いといえます。受信ボックスの中が、セールス関連のメールばかりだと不快感を抱かれてしまう可能性があります。
何を売るかにもよりますが、最初は1日に1通を一つの目安とするとよいでしょう。あまり効果が感じられないと感じたらメールを送る頻度に変化をつけたり、内容を改善したりしてみましょう。また、営業主体のメールというよりも顧客との信頼関係を築く事に集中した方が結果的に良い成果に結びつく場合があります。
これらを試行錯誤しながら、分析を行ってリアクションのよかった頻度を導き出してください。
シナリオ設計のポイントも解説!ステップメール施策の流れ
ステップメールはポイントを押さえてターゲットを設定し、シナリオを組み立てた上で文章を作成してください。そして、結果を細かく分析しつつ、配信を行う頻度やコンテンツの中身を見直していきましょう。
目標を設定する
まず、送る相手にどんな行動をしてほしいのかを決めなくてはなりません。問い合わせをしてほしいのか、商品を買ってほしいのかなど、最終的なゴールを決定します。
ターゲットを決める
ステップメールでは10~20代の女性と、50~60代の男性に送る場合とでは何もかもが大きく違ってくるため、ターゲットの属性によってコンテンツはもちろん、文体なども変える必要があります。そこで、自社の商品やサービスや製品を売る相手を明確化します。特に、製品とターゲットの親和性などを分析しておくと最終的なゴールにたどり着く見込み顧客の増加が期待できます。
例えばターゲットが若い女性であれば、カジュアルな内容・文体のほうが親近感を持ってもらえる可能性がありますが、同じようなカジュアルで砕けた文章を50代の男性に送った場合は不快感を与えてしまい効果が著しく下がってしまうことが想定されます。このように「最終的にユーザーに何をしてもらいたいのか」を考えるのと同じくらいターゲット設定は重要であるため、「誰に何をしてほしいのか」を強く意識して目標設定と対応させて考えることが大切です。
シナリオを設計する
一つひとつのメール単位で考えるのではなく、すべてのメールをトータルで考えてシナリオ設計を行います。一般的なメルマガだと1通ごとにまったく異なる内容になることも珍しくありませんが、ステップメールは最終的にユーザーに行動してもらうことが目的であり、そのための流れを作らなくてはなりません。一つの物語のようにシナリオを設計することが大切です。
シナリオを設計する際は、見込み客の立場に立ってとどのように接触し、何を伝えていけば行動を促せるのかを重視します。例えば、全部で4通送る場合は1通目で挨拶、2通目でお役立ち情報の提供、3通目で問題提起、4通目で口コミを交えながらのクロージングといった具合です。
文章を作成する
文章がダラダラと長くなりすぎると要点がわからなくなり、メールのインパクトが薄れてしまいます。かといって、極端に短すぎると事務的な印象を与えてしまうので匙加減が大切です。特に、1通目は挨拶やお礼がメインとなることが多いので、簡潔にまとめる必要がありますが、その中でも事務的にならないように配慮が必要なので、特に慎重に文言を選定する必要があります。
また、文章を作成するときは正しく日本語を使えているかどうかを重視します。いかに情熱的な気持ちで書いた文章でも、正しい日本語でないと相手から軽んじられたり相手に悪い印象を持たれたりするため、メールの内容が伝わりません。作成したあとに、社内のスタッフ数人でチェックするなど、正しく書けていることを確認しましょう。
また、ターゲットに合わせた文体になっているかどうかも大切なポイントです。「これを読むのはどんな人なのか」という部分を意識しながら言葉を選んでいきます。また、読みやすさも重要なポイントです。誤字脱字がないか、句読点やスペースを使って読みやすくなっているかを確認して、不備のないようにします。素晴らしいことが書いてあっても、読み手が読みづらいと感じると最後まで読んでもらえません。
メールを送る
配信の設定ができたら、設定通りにユーザーにメールが送付されていきます。ここで大切なのは、メールを送る間隔です。すでにお話したように、どれくらいの間隔がベストなのかは扱う商品やサービス、顧客の属性などによって変化します。例えば、定年後の方に送るのであれば、早起きをしていると想定して朝早くに送付したり、サラリーマンであれば帰宅後の21時ぐらいを狙って送付したりもできます。そして、扱う商品やサービスによって毎日同じ時間に送ったほうが効果がある場合もあれば、夜に疑問を投げかけて翌朝に次のメールで解決方法を送付する形式のほうが効果が出る場合もあります。複数のグループに分けて、効果が見込める方法を模索するなど、メールの送付は答えがない分、考えることがたくさんあります。
結果を分析する
一度設定しておけば、あとは自動的に数回に分けて送信してくれるのがステップメールのメリットです。そのため、設定してそれで満足してしまう方もいますが、それだけでは成果は向上していきません。大切なのは、検証と分析、改善を含めたPDCAサイクルです。最初からきちんと成果を出せるケースもありますが、多くの場合はそうはいきません。ある程度配信が終わった段階で、内容や頻度を見直しましょう。
商品を買ってもらうのが最終的なゴールなら、それが達成されているかどうかを判断基準とします。もし、ゴールに至った見込み客が少ないのであれば、何がいけないのかを考える必要があります。例えば、送るスパンが短すぎる、メールの内容が読みにくい、売り込みが強すぎるといったことも考えられます。このように何度も分析と改善、実践を繰り返すことで次第にコンテンツのクオリティが高くなるので、継続的に結果を分析して改善していきましょう。
ステップメールで結果を出すために気をつけたいこと
ステップメールの目的は、見込み客や顧客とコミュニケーションを密にすることで信頼関係を築き、そこから行動につなげていくことです。信頼関係を築くためには、売り込もうとしすぎてはいけません。あまりにもあおり文句や売り込みが過度だと、ユーザーも嫌になってしまい読まれなくなる可能性があります。最終的には商品やサービスを売る場合でも、最後のメール以外ではなるべくそうした印象をなくしておくことが大切です。「顧客のためになることを伝えたい」という雰囲気を感じてもらえるような内容を心がけましょう。また、定期的なメンテナンスも忘れてはいけません。特にリンク先にアクセスできないといったケースは意外と多く、見込み客を逃してしまっている可能性があります。
加えて、現在は多くの企業がステップメールを活用しています。そのため、消費者も日常的にたくさん送られてくるメールに目を通しているのは想像に難くないでしょう。そのような状況の中で、きちんと最後まで読んでもらうためには「読みたい!」と思わせるオリジナリティが必要となります。特に「役に立った」「もっと読みたい」と思わせられるようなメールなら他社との差別化にもつながるため、一般的な情報ではなく、より専門性の高い情報を発信するとよいでしょう。業界の秘密などを発信するとスムーズに信頼関係を構築でき、サービスや商品の購入にもつながりやすくなると考えられます。