ユーザー一人ひとりに合わせることで、より高い効果を獲得するパーソナライズについて
マーケティングにおいて、ユーザー一人ひとりに最適な情報を提供することは、もっとも大切な取り組みといえます。近年はその重要性が多くいわれ、実際にそれに取り組む企業も増えています。
この記事ではビジネス、マーケティング全般におけるパーソナライズ(パーソナライゼーション)と、Webサイトを含めたデジタルマーケティングにおけるパーソナライズを解説していきます。
ビジネス、マーケティングにおけるパーソナライズ
前半は、ビジネス、マーケティングにおけるパーソナライズという、広いジャンルについて解説していきます。この場合は、「パーソナライゼーション」と呼ばれることが多くあります。
パーソナライゼーションとは
まずは、パーソナライゼーションとは何かについて押さえていきましょう。
たとえばある商品に関心を持った時に、「ここがこうなってくれていたら、購入するのだけど」と考えた経験はないでしょうか。あるいは実際に相談して、「特注なら承れます」といった回答をされたことなど。
自身の理想とする商品を制作してもらうことは、いうなればオーダーメイドです。BtoBの取り引きにおいては、特注といった呼ばれ方をするでしょう。この場合は小ロットでは不可で、金額も高くなるのが常です。
商品やサービスを個々人に合わせて提供していくというのは従来無理でしたが、豊富なデータやシステム、取り引きの形態やビジネス手法の変化により、これに対するハードルが下がってきています。
商品やサービスをお客さま一人ひとりの要望に合わせて提供していく。それがマーケティング、ビジネスにおける広義のパーソナライズ(パーソナライゼーション)です。
事例
実際にそんなことが可能なのか。事例を紹介しましょう。
xSleepは、パーソナライズされたマットレス(寝具)を提供するSleepTechブランドです。
※xSleepのニュースリリースに掲載の画像。
一人ひとりに、最適な眠りを。オンライン診断で作るパーソナライズドマットレス「xSleep」が事前登録開始!
SleepTechとなっているように、オンライン診断をもとに個々人に合う、最適なマットレスの提案をおこなっています。
オンライン診断から得られたデータ、それにAIをもちいて最適なマットレスを提案するという、パーソナライズ商品の代表といえるものです。
なおマットレスという商品だけではなく、一人ひとりに最適な睡眠を提供するというのもポイント。つまりモノからコトへ。お客様へ提供するのは商品だけではなく、最上の体験ということになります。広い意味でのマーケティングにおいては、(モノだけでなく)こうした体験を提供する企業が成功をおさめるようになっています。
関係の深い3つの要素
パーソナライズした商品やサービスを提供できるようになった背景には、ビジネス的な側面が大きく変わってきたという背景があります。関係が深い3つを紹介しましょう。
D2C
パーソナライズ商品、サービスを提供できるようになったことと第一に関係が深いのがこれです。「Direct to Consumer」を省略したもので、製造者が仲介をはさむことなく直接、消費者と取り引きをおこなう形態です。
つまりは企画-受注-製造-販売の流れを一貫しておこなえるので、ユーザーに合わせた内容が提供できるのです。
こうしたことが実現可能なのか。気になるのはコスト面でしょう。
D2Cという形態そのものは自社によるダイレクト販売なので、高い収益性が出ます。
一方で顧客を開拓していく費用や、自社のこうした取り組みを軌道にのせていくまでにかかる時間やコストも考えておく必要があります。
サブスクリプション
サブスクリプション、いわゆるサブスクもパーソナライゼーション(あるいはD2C)と関係が深い事柄です。サブスクそのものは「一定期間に」「一定額で」商品やサービスの利用ができる仕組みです。デジタルでは浸透している形態ですが、一般でも動画配信サービスが広く使われ、ファッションなどひと昔前には考えられなかった分野でもサブスクの導入がおこなわれるようになってきました。
D2Cはサブスクが前提といった見方もされますが、必ずしも絶対条件ではありません。サブスクがD2Cとセットとされるのは、長期的な取り引きがおこなわれないと、収益面でメリットが出ないからなどと説明されます。しかしより本質的なことは、顧客とのエンゲージメントを高めるという意味になるでしょう。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスはお客様のデータを収集、蓄積しそれを活用しながら、関係性の構築と継続を高めていくものです。お客様に価値を提供することで、こうしたことを実現していきます。カスタマーサポートと違い、問い合わせがあった時のみ、その事柄についてだけ回答するというのではなく、積極的に動きお客様の疑問や不満を解消し、継続を高めることをしていきます。
カスタマーサクセスを経由して、たえずデータがアップデートされるという側面もあります。顧客の満足度をあげるというだけでなく、そこに蓄積されたデータをもとにビジネス全体を改善していくという役割も担います。
デジタルマーケティングにおけるパーソナライズ
後半は範囲を狭め、デジタルマーケティングにおけるパーソナライズを見ていきます。ビジネスモデルに対するパーソナライズはすぐに動いたり変えることは難しいので、より実践的、すぐにでも取り組める分野といえます。
パーソナライズについて
デジタルマーケティングのパーソナライズには、次のようなものがあります。
- 広告
- Webコンテンツ
- メールなどのプッシュ施策
パーソナライズ広告は、デジタルマーケティングに携わる多くの担当者がご存知でしょう。Googleをはじめ多くの広告サービスはこの形式を提供していますので、実際にパーソナライズ広告の出稿をしている方も多いはずです。
パーソナライズ広告の定義は、「ユーザーの興味、関心に合わせて配信する」です。これにはさまざまなデータが活用されていますが、サードパーティーcookieは規制が強まってきているために、これからどういった方式でユーザーの興味や関心を導き出していくか。広告サービスによって精度の違いが出てくるかもしれません。
Webサイト(コンテンツ)、メールでのパーソナライズ施策も、基本的な考え方は広告と同じです。ユーザーの興味、関心に合わせた内容を提示していきます。おすすめ商品といった出し方はその代表的なものです。ユーザーが過去に閲覧した商品を見せるといった施策は、比較的簡単にできるものです。
同じおすすめ商品を出す場合も、パーソナライズとレコメンドは仕組み上の違いがあります。パーソナライズはそのユーザーの登録データ、行動データにもとづいて表示されます。一方レコメンドは複数ユーザーのデータから傾向を導き出し、おすすめ商品を提示します。
なおパーソナライズと混同されがちな言葉としてカスタマイズがありますが、こちらはユーザーみずからが設定などを変えることを指します。
取り組みに必要なこと
デジタルマーケティングにおいて、パーソナライズをおこなうために必要なものをあげておきましょう。データはもちろんですが、それぞれの施策を実行するためのソリューションが不可欠です。
たとえばメール配信においては、マーケティングオートメーションツール(MAツール)が代表的なものです。レコメンドをおこなう場合、それに特化したレコメンドエンジンがあります。
こうした個別のツールを使う以外にもスクラッチ、つまりオリジナルで開発するといった方法もあります。複数のデータを呼び出して最適なコンテンツを表示するという大規模なものもあれば、単純な条件でコンテンツを出し分けるといったことは、JavaScriptでも対応できます。
一方、パーソナライズに関するさまざまな機能を有するツールも増えています。すでにMAツールの多くはメール配信だけでなく、Webページ上での出し分けなどに対応しています。LINEの配信をサポートしているツールも多く見かけるようになりました。
HubSpotも豊富なパーソナライズ機能を持つツールです。よく知られるのが訪問者ごとに、CTAを変える機能です。コンバージョンに近いポイントをパーソナライズすることにより、コンバージョン率が大きく向上したというデータも出ています。
現代のマーケティングにおいて、こうしたテクノロジーの活用は欠かせません。自社に最適なツールを導入する、それを使いこなすというのがますます重要になってくるでしょう。
注意すべきポイント
パーソナライズ施策をおこなううえで、大切なポイントをあげておきましょう。
- ペルソナで、ユーザー像をきちんと把握する。
- 最適なシナリオを描く。
- 施策は常に評価をおこない、より最適な状態を目指していく。
- 出す情報の質とともに、タイミングも大切。
ここで実践的なアドバイスとして特に強調しておきたいのが、タイミングの大切さです。パーソナライズはデータにもとづく最適な情報を出しますが、タイミングが考慮されていない施策が目立ちます。顕著な例が、ポップアップです。多くのパーソナライズツールにポップアップ機能がありますが、出すことが目的になっていることがほとんどで、ユーザーが欲するタイミングが考慮されていません。
マーケティングの基本はユーザーが「求める情報を」「求めるタイミングで」提供することです。内容と同程度に、タイミングも重要というのを常に考えるようにしましょう。
共通すること
パーソナライズの前提になるのは、データです。
ここまで見てきたように、マーケティングやビジネス全般におけるパーソナライズ(パーソナライゼーション)も、デジタルマーケティングにおけるパーソナライズもデータが基礎となるのは共通しています。
データを蓄積、活用するためにはデータ基盤の構築が必要です。CDPを導入する、あるいはオリジナルで開発するといった方法が取られますが、どちらもコストが高めという難点があります。
中規模、小規模事業者は統合型のソリューションを導入するというのも手です。HubSpotは中小規模の事業者が導入しやすく、質の高いパーソナライズを実行できるソリューションとなっています。
パーソナライズの本格導入に関心がある事業者様は、お気軽にお問い合わせください。