BtoBマーケティングで注目のSNS、LinkedIn(リンクトイン)について
BtoBにおいて重要なSNSとされているのが、LinkedIn(リンクトイン)です。この記事ではLinkedInの基本的な知識と日本の現状、実際のマーケティング活用などを解説していきます。
LinkedInとは
まずはLinkedInとは何かについて、基本的な特徴をまとめてみましょう。
- ビジネスに特化したSNS。
- 世界で約200か国が利用、利用者は7億5000万人以上。
- 創業者はリード・ホフマンで、サービス開始は2003年。現在はマイクロソフトが買収。
○○に特化したSNS、というサービスの存在は多くの方がこれまでも耳にしたことがあるでしょう。さらにビジネスに特化しているというのは、BtoBにおいて魅力的です。なぜなら、すでにターゲティングがされているからです。しかしそうしたジャンル別のSNSはうまくいかず、FacebookやInstagram、Twitterという一般的にメジャーなサービスがデジタルマーケティングのSNSでは中心、というのが大方の認識でした。
しかしLinkedInはグローバルで広く使われているSNSで、サービス開始から長い運用実績があります。7億5000万人以上が利用と記載しているだけだとイメージがわきにくいと思いますので、上位の国々の登録者数をあげてみましょう。やや古いデータを参考にしているので、現在はもっと増加しているはずです。
- アメリカ:約1億5,000万人
- インド:約4,700万人
- 中国:約4,000万人
- イギリス:約2,300万人
- フランス:約15,000万人
4位のイギリスを大きく引き離すトップ3の国々は、ITの先進国です。ここでの登録ユーザーが多いということでも、LinkedInが魅力的なデジタルサービスと捉えられていることの証とも思えます。
LinkedInの特徴を、もう少し細かく見ていきましょう。
- 満足度が高い。
- 外へ向かってつながっていける。
- 採用、マーケティング活用で大きな効果が期待できる。
- 海外では、BtoBマーケティングのソーシャルトラフィックの半数以上はLinkedInから。
- 法人向けの機能があり、会社(団体)ページを作成することができる。
- SlideShare、学習コンテンツなどの利用も可。
満足度が高いというのは、主観的な意見のようにも思えます。しかしLinkedInがビジネスユーザーやBtoBマーケティングにおいて満足度が高いというデータは、海外の調査で明確になっています。
外へ向かってつながっていけるというのは、Facebookと比較することで明らかになっていくでしょう。Facebookはコミュニケーションを取るということが主眼で、実生活でつながりを持っている人とオンラインでもつながる、といった形が多くなります。
一方でLinkedInは見知らぬ人であっても、つながりを求められることがたびたびあります。一般的なSNSだとこうした見知らぬユーザーからのリクエストは不信がわき承諾しないことが多いはずですが、LinkedInはそれが正解とはされていません。ビジネスに特化したSNSであるため、掲載したスキルやプロフィールに関心を示す人が申請してくる。その後のビジネス上のつながりや、価値ある情報の提供といったメリットがもたらされる可能性が大いにあるからです。これは創業者のリード・ホフマン自らが語っていることです(ただし、承認後にじっくり吟味することは必要としています)。
一方で利用ユーザーの中には、見知らぬ申請は一切承認しない、という使い方をしている人も多くいるようです。実名制といえさまざまな不正行為をおこない、良くないおこないをするユーザーもいるので、これも正解といえます。
このように実生活でつながりがない人からのリクエストを承認するかどうかは、利用者みずからの判断としか言いようがありません。ただFacebookよりも広くビジネス上のつながりの可能性を持つ、それにより利用方法も異なるSNS、といったポイントは押さえておいていただきたいと思います。そしてこうした特徴から、採用やBtoBマーケティングにも有効という評価になっているのです。
BtoBマーケティングにおけるLinkedInの有効性に関しては、HubSpotの海外ブログが「Facebook、Twitterと比べLinkedInはリード生成に277%が効果的」という記事をアップしていますので、リンクを掲載しておきます。
LinkedInの機能的な特徴についても、少しふれておきましょう。
「LinkedIn Learning Solutions(LinkedInラーニング)」というサービスが提供されています。これはLinkedInに登録しているユーザーが使える、オンライン学習サービスです。これに関しては日本語コンテンツも豊富で、企業研修にも使われています。
もうひとつの特徴が、法人向け機能の充実です。
会社(団体)ページを作ることができ、ここでの投稿ややり取りが、マーケティングに大きく関わる機能となっています。
法人向けの機能としては、対象別に次の四つが提供されています(先ほどのオンライン学習サービスも、この中のひとつです)。
- LinkedIn Talent Solutions:人事向け
- LinkedIn Marketing Solutions:マーケティング向け
- LinkedIn Sales Solutions:営業向け
- LinkedIn Learning Solutions:学習コンテンツ
日本での現状
概要を見ていけばLinkedInが魅力的なSNSというのはわかると思いますが、それが今一つ実感できないのは、日本での利用が少ないからです。日本の登録者は約200万人、これはトップ10にもまったく届かない低い数です。
ソーシャルメディアの研究と情報発信をおこなうソーシャルメディアラボには、年代別の内訳が掲載されています。
2023年5月更新!性別・年齢別 SNSユーザー数(Twitter、Instagram、TikTokなど13媒体)
20代以降で、年代があがるごとにきれいに減少しているのがわかります。また利用が多い20代でも、一桁の利用者割合にとどまっています。
主要なSNSについて、Googleで月間の検索数がどのくらいあるか見ていきましょう。
- LinkedIn:201,000
- Facebook:3,350,000
- Twitter:9,140,000
桁がまったく違うことがわかります。ただし単純に検索ボリュームだけを比べると、ビジネスに特化しているLinkedInの数字が低いのは当然です。
どういったニーズでの検索が多いかについても、触れておきましょう。FacebookやTwitterは「保存」「検索」「ログイン」といった、利用に関連するキーワードが組み合わされています。一方LinkedInは、「LinkedInとは」が上位で、他の言葉との組み合わせは低い数字になっていきます。このことからLinkedInは、まだそれがどういうものか調べているような段階、と考えることができます。
グローバルと比べ、日本での利用がこれだけ少ないのはどういった理由でしょうか。さまざまな考察がされていますが、私が有力に思うひとつが「日本人に合わない」です。
これには二つの側面があります。
まずは気質的な面です。Facebookも基本的には実名ですが、ビジネスのつながりを作っていくLinkedInはそれがいっそう強い傾向があります。日本はTwitter利用が多い国として有名ですが、こうしたSNS利用の状況を考えても、実名のSNSは日本人に受け入れにくいといった印象は受けます。
もうひとつの側面は、プロフェッショナルなつながりを目指して作られたSNSで、それが日本の個人や社会には合っていないということです。LinkedInは自分のビジネス上のプロフィールを発信することになりますが、個人より組織といった文化の日本人に、そうした発信の仕方は合っていないのではないかと言われます。もちろん個人や職種、立場によってはLinkedInでの発信が合っている日本人もいるとは思いますが、絶対数は少ないはずです。
こうしたネガティブな土壌があり、日本での利用が広がらないことからLinkedIn≒転職、採用のもの、マーケティングには無縁のSNSという認識になっているのではないでしょうか。このためLinkedInをマーケティングに取り入れることが必要、と強くはいえない状況なのも確かです。
しかし、世界で主流となっているBtoBマーケティングのエッセンスを身に着けておくことは、必ずプラスになるはずです。その意味で次に、LinkedInのマーケティング利用を少し解説したいと思います。
マーケティングの利用
LinkedInのマーケティング利用は、大きく二つに分かれます。
法人向けサービスの利用と広告です。
法人向けサービス
LinkedInを使ってのマーケティング、その具体的な成果は認知の拡大であり、さらにはリード獲得へとつながっていきます。広告以外に、次の方法が提示されています。
- 会社(団体)ページの活用
- ブログ投稿
- SlideShare
LinkedInの法人向けサービスにおいて、活用が大きいのは会社(団体)ページです。Facebookも同じようなページの作成は可能ですが、採用にも利用できるなど、よりビジネスに特化した機能が充実しています。
会社(団体)ページを軸にして、「企業、ブランドの認知」「商品やサービスのPR」「採用」といったことをおこなっていきます。日本では商品やサービスに関心が向くことが多いですが、世界では「その企業やブランドが、どういった考えを持っているか」といったことが重要視されるようになっています(企業の存在価値までを含めた、パーパスブランディングの盛り上がりはその一例です)。ですからLinkedInの会社(団体)ページで情報を発信していくことは、これからも重要となっていくでしょう。
もちろんこうした取り組みは、すぐに結果に結びつくものではありません。長期的なマーケティング戦略として取り組んでいくことになります。
これらコンテンツマーケティングに近い方法以外にも、LinkedInでのマーケティング手法はいろいろあります。もう少し積極的な方法としては、「InMail」があります。これはLinkedIn内のメール機能で、ターゲットや内容をカスタマイズして配信することが可能です。
広告
LinkedInでは、広告機能も提供されています。メリットとして、対象となるビジネスユーザーが集まっていること、そしてターゲティングの精度が高いことです。配信先はLinkedInだけでなく、設定によりパートナーサイト(アプリ)への掲載も可能です。次のような種類があります。
- LinkedIn スポンサードコンテンツ
- LinkedIn スポンサードインメール
- LinkedIn ディスプレイ広告
- LinkedIn ダイナミック広告(フォロー広告、スポットライト広告)
これらの広告に対して目的、フォーマット、ターゲットなどを選んで配信していきます。
LinkedInとHubSpot
HubSpotはSNSを使ったBtoBマーケティング、つまりLinkedIn向けの機能も持っています。
たとえばLinkedIn Sales Navigatorとの統合機能です。LinkedIn Sales Navigatorは先ほど簡単に触れたInMailに関する機能です。HubSpotとの統合を使うことで、いっそう効果的で効率の良い配信が可能になります。
またHubSpotの提唱するインバウンドマーケティングは、情報を見つけてもらうための手段としてSNSを重視しています。LinkedInに関してはオウンドメディアの情報を拡散するだけでなく、会社(団体)ページそのものを情報発信の場とも捉えているので、積極的な連携をおこなっています。
日本でのLinkedInの活用はまだ不透明な部分も多いですが、海外での成功事例も踏まえビジネスを向上させるヒントを探りたい方は、ぜひお問い合わせください。