Z世代の深掘りと、マーケティングへの生かし方
Z世代について、基本的な知識を次のマーケティングへ向け、気になるZ世代の基礎をおさえるという記事で紹介しました。
ここではZ世代について海外も含めた記事や調査の紹介、マーケティングのポイントなど深掘りしていきたいと思います。
Z世代とY世代(ミレニアル世代)の比較
まずはZ世代の特徴をより明確にするため、その一つ前のY世代との比較を詳しくしていきたいと思います。なおここでは、Y世代と大きく重なるミレニアル世代も同じとみなしていきます。
この二つについて、ビジネスやマーケティングに関わりが深い項目について比較してみましょう。
Z世代 | Y世代(ミレニアル世代) | |
デジタルとの関わり | 非常に強い | 強い |
新製品やサービスへの期待 | 非常に高い | 高い |
企業への信頼 | 低い | やや低い |
価値観 | 現実的 | 理想主義 |
ブランドの見方 | それほど重視しない | 重視 |
体験に求めるもの | リアル | 非日常 |
ほとんどの解説において、Z世代≒デジタルネイティブといわれるほどデジタルが浸透した世代、というのに異論はないでしょう。
次にZ世代の保守的、リアリストという特性を考えると、新製品やサービスへの期待が非常に高いというのは少し意外に映るかもしれません。しかしZ世代はIoTやVR、AIといった高度なテクノロジーも当たり前に捉えています。そこからイノベーションが生まれることについては、現実的なこととして見ているのかもしれません。
企業への信頼の低さやブランドをそれほど重視しないことは、これまでのマーケティングのやり方と照らし合わせると、ネガティブな要素です。ただし企業への信頼は、ミレニアル世代から明らかな低下傾向が見られていました。SNSの影響はもちろん、企業の不祥事といった根本的な問題も影響していると考えられます。
Z世代に対するマーケティングへの取り組みに関して、「現実的である」「リアルな体験を重視している」ことは、大きなヒントになります。海外の報道によると、Z世代はコロナ以降にリアルな店舗(書店など)を利用したい、という意向がY世代よりわずかに高かったそうです。リアルも上手く活用したマーケティングは、これからも考えていくべきでしょう。
Z世代のタイプ分け
ひと口にZ世代と言いますが、その中にはさまざまなタイプが存在します。有名なものとして、佐藤尚之氏による四つのタイプ分けがあります。
様子見フォロワー
- 価値観のばらつきが大きい。
- 目立った特徴がない。
- 男性に多め。
省エネペシミスト
- 人づき合いが苦手。
- 頑張りを避けがち。
- 悲観的な傾向。
- 真面目、モノへのこだわりがない。
ソーシャルよいこ
- SNSに熟練。
- トレンドに敏感。
- 新しいもの好き。
- 他人の目が気になる。
人生ガチ勢
- リーダー気質。
- 前向き。
- 社交的。
- 伝統的、保守的な価値感。
この分類は約3000人のZ世代、ミレニアル世代を対象にした調査から導き出されているということで、信憑性は高いといえます。
いずれも一般的なZ世代の特徴を持つのがわかるとともに、リーダー気質を備えるタイプもあります。このあたりも現代の若者をステレオタイプに捉えていると、見逃してしまうかもしれない側面です。
こうしたタイプ分けがされると、Z世代をいずれかに割り振ろうとしてしまいがちですが、実際は各タイプ複数の特性を持つ人が多く見られるとのことです。また「成長」「所属するコミュニティの影響」を受けることも、念頭におくべきとのこと。これは当然で、Z世代にあたる小学生が、大学生になっても同じ性格とは限りません。それは個人の成長もあるでしょうし、取り巻く環境(コミュニティ)の影響もあるでしょう。
4タイプの性別、世代別の分布データを見ると、同じZ世代でも年代で違うことがよくわかります。
Z世代=「若者」とひと括りにしていませんか? 4タイプの特性とソーシャル利用を解説:MarkeZine(マーケジン)
BtoBマーケティングを考える場合には、特にコミュニティの影響は大きいといえます。その個人が変わるというのではなく、所属する企業のカルチャー、あるいは上司の性格などに合わせた行動が大きくなるのは当然だからです。企業におけるその人の立場というのもあるでしょう。Z世代をBtoBマーケティングに生かしていく場合には、4つのタイプの特徴を念頭に置きつつ、所属する組織のことも考えた打ち手が必要になってくるでしょう。
さまざまな調査データ、ニュース
ここではマーケティングの指針になりそうという観点で、さまざまな調査データやニュースをピックアップしていきたいと思います。詳細については、各リンク先でご確認ください。
【Z世代の意識調査#004】「サステナビリティ」に関する価値観と行動の実態調査(株式会社メディアジーン・㏚TIMES)
Z世代の大きな特徴である、サステナビリティに対する意識調査が具体的かつ詳細にされています。
「無駄なく長く使えるものを」「節約」というキーワードに関する考え方が、よく見えてきます。
Z 世代に聞く理想の将来像「人生の時間割」調査(シチズン時計)
Z世代が描く将来像に関する調査。BtoBにおいても、これからマーケティングの対象になってくる層がどういった将来像を描いているか、押さえておきたいデータです。
親友とはSnapchatでやり取り、課金にはシビア App Annieが語る、Z世代のアプリ利用実態(MarkeZine)
Z世代のアプリ利用について、グループインタビューなどをもとにした調査結果に関するインタビュー記事。この世代では、InstagramがSNSの主役になっているということがよくわかります。
また海外では、日々活発にZ世代に関する調査データやニュースが出ています。アメリカのHubSpotブログで紹介されたものの中から、日本とも関係がありそうなものをいくつかピックアップしておきましょう。
※リンク先がなくなっているものがいくつかあったため、ポイントを箇条書きにしています。
- 74%のZ世代が、自由な時間の過ごし方としてオンラインをあげています。(Insititute of Business Management)
- 毎週、約23時間ビデオのストリーミングをおこなっています。(Criteo)
- 60%が、読込みが遅いWebサイトやアプリを利用しません。(Insititute of Business Management)
- 60%が、VRの発展に従い今後より多く利用するとしています。(Cognizant)
- SNSにログインしている時間は、毎日約2時間55分。これはミレニアル世代よりも約1時間長めです。(Insititute of Business Management)
- オムニチャネルは重要と捉えられていて、オンラインとオフラインとが融合していることを望んでいます。(CMO Council)
- 4人に一人の割合で、SNSのインフルエンサーから新商品に関する情報を得ています。(Morning Consult)
より具体的なマーケティング関連の内容については、次の章に盛り込んでいきたいと思います。
(参考)
52 Gen Z Stats Marketers Need to Know in 2021(HubSpot)
マーケティングとの関わり
この記事のまとめとして、マーケティングとの関わりについて紹介していきます。特にBtoBで使えそうなものを念頭においています。日本でもいくつかものノウハウや事例は出ていますが、海外の方が取り組みは活発なため、ここでは海外の情報を主にしていきたいと思います。ただし日本と海外ではZ世代の事情が違う(人口に占める割合が低いことなど)ため、そうした影響が強そうなものは省いています。
SNSは必須対応。検索は?
Z世代とSNSの強い関係は、ここまで書いてきている通りです。
一方で検索エンジンも、多く使われています。日本国内での調査では、若い世代の方がむしろ検索行動が多いというデータも出ています。Z世代の検索行動については、回数よりも中身を知ることが重要そうです。
- SNSで出会った言葉を検索する、といった流れが多くある。
- ロングテールのワード、複数語の組み合わせでよく検索されている。
SNSで出会った言葉を検索する、という行動はイメージしやすいでしょう。補足するならばZ世代は多くのデジタルメディアを同じタイミングで使用しており、こうした行動も自然なのです。
ロングテールのワード、複数語の組み合わせは海外でいわれている内容です。要因の一つは、音声検索の利用が多いからです。これは日本には少しあてはまらないかもしれません。しかしGoogleのアルゴリズム自体が文脈の理解になっていますので、これを念頭に置くことがSEO対策としても大切になりそうです。
動画の重要性
動画に強く慣れ親しむZ世代に対して、動画が有効なのは言うまでもありません。ここであえてピックアップしているのは、BtoBにおいても取り組みやすい手法だからです。
Z世代に対してインフルエンサーマーケティングが効くというのは定説ですが、BtoBにこれを取り入れるノウハウは、まだ明確に示されていない状況です。一方で動画はさまざまなコンテンツで活用が可能で、とりわけ採用に関する成果は多く出てきています。
SNSを使った関係性の構築
BtoBマーケティングにSNSを取り入れている場合も、これまでは発信の意味合いが大きいといえました。あるいは繋がりを持っていても、軽い情報収集や連絡程度だったかもしれません。
Z世代に対するこれからはSNS本来の役割に重きを置き、ここで関係性を構築して強化する、というのが成功の鍵となりそうです。具体的にはLinkedInやFacebookの名前があがり、営業担当者もこうしたSNS上での活動を広げていくべきとしています。
広告よりもコンテンツ
広告を敬遠する傾向は年を追うごとに増えてきていますが、Z世代ではその傾向は強まっています。「売り込まれること」を極端に嫌い、不信感さえ持っています。
そのためコンテンツは、より重要な役割を果たしてくことになるでしょう。
企業価値を高める
Z世代は、企業への信頼をあまり持っていません。しかしこれを高くしなければ、購買には繋がらないでしょう。社会や環境問題にも関心が高いZ世代の信頼を得るために、企業としてこうした取組みはますます重要になるはずです(もちろん、表面的ではなく実直な取り組みが必須です)。企業価値を示すために、今後はブランドパーパスもより重要となってくるかもしれません。