Oracle Marketing Cloudで実現するモダンマーケテイング

デジタルディスラプションというデジタル社会の破壊的なイノベーションが、世界中で巻き起こっています。例えば、2012年に90億台だったインターネット端末は、2020年には500億台になると予測されています。また、モバイル端末の契約者数は60億人を超え、その比率は世界人口の87%に達しています。その結果、ソーシャルメディアには、26%の人たちが嫌な対応を受けた経験を投稿し、それがきっかけとなって86%の個人や法人が取引を中止してしまうのです。その反対に、94%の人たちはより良いサービスに対価を払っています。このような市場の中で、洗練された顧客を獲得していくためには、「体験の差別化」が求められています。その鍵を握るのが、最先端のデジタルマーケティングです。

マーケターのジレンマ

日本オラクルが都内で開催した Modern Marketing Tour – Tokyoは、世界で開催されているイベントの日本版になります。その目的は、最先端のマーケティングテクノロジーによって、「体験の差別化」が求められる市場に、どのようにアプローチし成果を得るかを紹介するものです。イベントの最初に登壇したオラクルマーケティングクラウド統括本部長のネメルカ・トニー氏は、日本法人のマルケト社を設立した実績もあり、米国やその他の国々において25年以上のキャリアを積んできました。トニー氏は、その経験から「優れたカスタマーエクスペリエンスと収益は、これまでは両立が不可能だった」と指摘します。

Modern Marketing Tour – Tokyo
米国での調査によれば、70%のCMOが、より良い顧客との関係を築くために、カスタマーエクスペリエンスを重視するべきだと考えています。しかし一方で、75%のCEOが「CMOにはROIを優先してほしい」と考えているのです。
「CMOとCEO、両者のジレンマを満たすためには、MA(Marketing Automation)とアドテクの収束が促進されなければなりません。それは、顧客の行動データの統合や、一貫性のあるクロスチャネル・エクスペリエンスの統合に、重複コストの削減などの成果をもたらします」とトニー氏は提唱します。
そして現在のデジタルマーケティングが抱える課題をトニー氏は、以下のように整理します。

  • 一人の顧客とのインタラクションに一貫性がない
  • マーケターが顧客の行動の変化に十分な速度で対応できない
  • コンテンツがパーソナライズされていない
  • デジタル・エコシステムによってマーケティング戦略&計画が脇道にそれる

この課題を解決するために、トニー氏は4つのステップを紹介します。

  • ステップ1 : 現実の顧客に関連データを結びつける
  • ステップ2 : リアルタイムでインタラクションをオーケストレートする
  • ステップ3 : 個別化したコンテンツで顧客を引き付ける
  • ステップ4 : 必要に応じたマーケティング・エコシステムを活用する

「デジタルとオフラインの分断が、顧客視点を見失う要因になっています。そこで、オフラインと商取引データ、オウンド・デジタル・チャネルとサードパーティ・データという4種類のデータソースを結び付ける取り組みが求められています。米国では、自社のマーケティングのリアルタイム性が、業績に貢献していると考えているマーケターは、わずか12%しかいません。特に、Webでのリターゲティングには、リアルタイム性が必要です。そのためには、顧客の体験をオーケストレートして、複数のチャネルにコンテンツを配信する方法が必要なのです」とトニー氏はマーケターが取り組むべき課題を整理します。

多くの企業では、顧客との接点やライフサイクルを通したコンテンツを集中管理するハブが欠けているため、現在の混沌としたマーケティング・エコシステムが、マーケティング戦略や計画を圧倒しています。
「これらの問題を解決するために、オラクルでは”データ”と”アプリ”と”メディア"という3つのコンポーネントに分類する方法を推奨しています。そしてOracle Marketing Cloudでは、データの結び付けと分析から、エンゲージメントの作成に、エクスペリエンスのオーケストレーション、そして新しいサービスやツールの活用をサポートします」とトニー氏は説明します。

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先取りしたいマーケターのビジョン

トニー氏に続いて登壇したリンチ・クリス氏は、Oracle Marketing Cloudのプロダクトマーケティング統括責任者です。今回のModern Marketing Tour東京のために、米国サンフランシスコより来日し、Oracle Marketing Cloudの最新テクノロジーを紹介しました。
「マーケターが事前に決定した顧客の行動予測は、十分な速度でリアルな顧客に適応できていません。例えば、ECサイトで顧客がカート内の商品を放棄したときに、マーケティングツールがそのシーケンスを処理する間に24時間も費やしてしまえば、その間に顧客はライバルのサイトから購入してしまうのです。こうした問題に対処するためには、顧客の行動に迅速に適応できるマーケティングテクノロジーが必要なのです」とクリス氏は提唱します。

リンチ・クリス氏

そしてクリス氏は、実店舗とオンラインでの接客を連携させて、リアルタイムにクーポンを配信するケーススタディを想定し、デジタルマーケティングのフローチャートを構築する例を紹介しました。さらに、ECサイトを利用中に、メールやSMSなどで決済を中断した顧客に、決済を促す仕組みを提供するテクノロジーや、メールを開封しなかった顧客に対して、その他のチャネルからアプローチを試みるB2Bの事例なども紹介しました。

「Oracle Marketing Cloudは、すべてのデバイスやチャネルにおいて起きている接点を一人の特定の顧客につなげ、オンラインとオフラインの両方で持つばらばらの接点を統合します。また、匿名のデータと既知のデータを結合し、データの質をあげます。そして、行動起点のオーケストレーションに適応することで、顧客自身の行動パスに影響を与えるように促します」とクリス氏は、最新のデジタル・マーケティングが実現するべきビジョンを語りました。

今、マーケターに必要なこと

三人目に登壇した大山忍氏は、マーケティングオートメーション、クロスチャネルマーケティング、DMPといった最先端のデジタルマーケティングの実行支援を行う「Oracle Marketing Cloud」の日本のリーダーの一人です。大山氏は、ゲストのアイ・エム・ジェイ執行役員CMO江端 浩人氏(写真NG)と対談しました。江端氏はB2CとB2Bにおけるマーケティングの違いを次のように説明します。
「B2Cのマーケティングは、まず商品についてのクエスチョンを出し、その後にそれがビックリマークになる体験を提供することで成立します。なので、買いたいという衝動を引き出すためには、そのクエスチョンマークをいかに大きくするかを考えて、その期待に応えるビックリマークを大きくすればいいのです。それに対して、B2Bのマーケティングでは、決済までに長いプロセスがかかるだけではなく、決済においても複数のマネジメント層が関係するので、B2Cのように簡単にはいきません」

江端氏の分析を受けて、大山氏もB2Bマーケティングの難しさに共感します。
「B2Bマーケティングでは、実際に導入する立場の人だけではなく、決済者が別にいたり、さらに上位のマネジメント層への理解などを得なければならないので、いろいろな立場の人たちに合わせたストーリーを作らなければいけないですね。そのため、より精緻なマネジメントが求められると思います」

大山忍氏

こうしたB2Bマーケティングの課題に対して、日本は海外と比べて遅れていると両者は指摘します。
その理由について江端氏は「これまでの日本では、B2Bで活用できるメディアが少なかったのです。海外では、B2Bマーケティングを行おうと計画したら、まず組織を作ります。体制を作って人をリクルーティングして、デジタル・マーケティングを推進しようとします。それに対して日本では、既存の組織で対応しようとするので、海外のようにスマートにいかないのです」と分析します。

組織から改革に着手できない日本のB2Bマーケティングの問題を解決するために、大山氏は国内の事情に適した対応策を提案します。

「日本のCMOは、社外のベンダーやパートナーを上手に活用していくべきでしょう。社内のマーケターは、市場動向や業界事情など、本来のコアコンピタンスに集中し、自社が求めるマーケティングのために、チャネルやツールをどのように活用すれば最大限の成果が得られるのかを考えるのです。そして、それをパートナーと協力して、精緻なマーケティング計画や最先端のテクノロジーを活用して、顧客のナーチャリングやリード獲得を計っていくべきでしょう」