いつか役立つかもしれないマイナーなビジネスフレームワーク10選
フレームワークは日本語にすると「枠組み」や「構造」のことです。ビジネスの世界でフレームワークというと戦略立案や課題解決に役立つ分析や考え方の枠組みのことであり、それを使うことで効率よく、スピーディーに物事を進めることができます。
このフレームワークですが、マーケティングにおいても多数存在します。分析や戦略立案では「3C」や「SWOT」、消費者の購買プロセスでは「AIDMA」などが有名です。
今回は、メジャーなものを排除してマイナーなフレームワーク、そしてもしかしたら役立つかもしれないものをご紹介していきます。
AIDCA
消費者の購買モデルとして有名なのは「AIDMA」ですが、「AIDCA(アイドカ・アイダカ)」というフレームワークも存在します。
ダイレクトマーケティングをはじめとし、店舗販売やサンプリング、あるいは住宅のような高額な商品、情報システムやソフトウェアの場合には、このAIDCAの方が適しているという意見もあります。
AIDCAは「Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Conviction(確信)→Action(行動、購入)」が、それを構成する要素と流れです。
AIDMAではActionの手前にくる「Memory(記憶)」が、「Conviction(確信)」に置き換わっています。
AIDMAはその成り立ちが広告宣伝ですから、それがベースになった考え方です。しかしダイレクトマーケティングのように、一般的な広告よりもセールスに近いような場面では、購入の確信を強くさせる必要がある、生活者の立場から見ると購入への確信が高まらないと行動ができない、というのは納得ができます。
AIDEES
「Attention(注意)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Experience(体験)→Enthusiasm(感動)→Share(共有)」の頭文字を取ったのが、「AIDEES」です。「アイデス」と読みます。
これもまたAIDMA、さらにAISASのような消費者の購買モデルのバリエーションです。デジタルマーケティングに携わる方にとっては、このモデルは理解しやすいでしょう。最後が「Share」になっているのは、口コミやソーシャルメディアを指すものです。
また「Action」ではなく「Experience」となっているのも、現代的なフレームワークといえそうです。
現代はコモディティ化で、モノの価値やそれに対する執着が低下しています。さらにサブスクリプションビジネスの広まりもあり、所有するという意識も薄れてきています。そうした理由もあり、「モノから体験へ」といったことが叫ばれてきています。購入という行動を無くし、体験と感動を入れたAIDEESは、そういった部分をよく表したモデルといえそうです。
AISCEAS
「アイシーズ(またはアイセアス)」と読みます。
構成要素と流れは、「Attention(注意)→Interest(興味)→Search(検索)→Comparison(比較)→Examination(検討)→Action(購買)→Share(共有)」です。
こちらはAISASのバリエーションとなっています。
AISASはインターネット時代になったことで生まれた購買心理モデルですので、このAISCEASもインターネットに軸足を置いたモデルです。
名称をAISASと比べてみると、ステップがふたつ多いことがわかります。増えているのは「Comparison」と「Examination」。AISASよりも、細かく行動を表すという意図があるからです。確かに比較、検討といったプロセスは重要なステップとして、加えておく方がより具体的な把握に役立つかもしれません。
Dual AISAS
AISASについてはもう一つ、発展形を紹介しておきましょう。
Dualというのは「二重の」という意味ですから、「Dual AISAS」はまさにひとつのモデルの中に、AISASが二つ存在するものです。
広める:「Activate(活性化)→Interest(興味)→Share(共有)→Accept(共鳴)→Spread(拡散)」
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購入する:「Attention(注意)→Interest(興味)→Search(検索)→Action(行動)→Share(共有)」
下段の流れが、従来からあるAISASです。その上の「広める」という流れは、購入にいたるプロセスの最初にくる、「Attention」のまわりに存在するものです。
「広める」は具体的には、認知の段階でのSNSの影響力を示すものです。認知段階から一方的に情報を受け取るのではなく、SNSらしくこの時点で共有、拡散といった要素が入ってくるというユニークなモデルです。
ユーザーみずからのさまざまな行動と、インターネット上での複雑な購買心理、行動がよく表されているモデルといえます。
TOWS分析
「TOWS分析(トゥーズ分析)」は、SWOT分析をもとにしたフレームワークです。
SWOT分析は「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の4つを並べたものですが、TOWS分析はこれに掛け合わせを加えます。そのため「クロスSWOT分析」と呼ばれることもあります。
SWOT分析は現状分析のフレームワークとしては非常に優秀なのですが、そこから戦略づくりを進めていくのには物足りない、といった意見があります。
そこで4つの要素をマトリックス化して掛け合わせることで、戦略づくりのフレームワークにすることを可能にするのが、このTOWS分析です。
さらに「Strengths×Opportunities(強みを生かした拡大と持続)」「Strengths×Threats(強みを生かした脅威への対処)」のように、それぞれの掛け合わせから違った戦略を導き出すことができるのもメリットです。
TOWS分析を使うことで具体的な戦略を出すことや、プレゼンで効果的なストーリーを提示できるようになるはずです。
デコンストラクション
「デコンストラクション」を一言で言い表すと、「バリューチェーンの再構築」となります。
バリューチェーンは事業活動を、「価値の連鎖」として捉えることです。このフレームワークで分析することにより課題の発見や、競争優位性を高める差別化戦略の構築がしやすくなる、といったメリットがあります。「事業活動の棚卸し、現状分析をおこなうこと」と捉えてもいいでしょう。
デコンストラクションはバリューチェーンの再構築ですから、これらを俯瞰したうえで、様々なシチュエーションに対して異なった視点から見ていきます。そのうえで新たに構築する、といったことをおこなっていきます。こうした取り組みをすることで、新規事業や新たなビジネスモデルを生み出せる可能性があるフレームワークとなっています。
具体的な方法として、「どこが費用対効果の低い所なのか」「自社の事業が顧客のバリューチェーンの一部なのか、全部なのか」といった5つのチェックポイントも提示されています。
このチェックポイントにあてはめ、自社のビジネスモデルの整理をおこなったり、他社と比較しての位置づけなどを広い視点で見ていきます。
さらに「レイヤーマスター」「オーケストレーター」「マーケットメーカー」「パーソナルエージェント」という四つの分類も提示されています。これらについても自社のビジネスモデルにあてはめて考えていけば、非常に効率のいい分析がおこなえるでしょう。
4C分析
これは有名なフレームワークかもしれませんが、4P分析に比べて企業であまり実践していないように感じたのであえてご紹介します。
「Customer Value(顧客価値)」「Cost(顧客にとっての経費)」「Convenience(顧客利便性)」「Communication(顧客とのコミュニケーション)」という、4つの要素を用いた分析方法です。
4P分析とよく比較して紹介されますが、4Pが企業(売る側)視点からの分析なのに対して、4Cは顧客(買う側)視点の分析というのが大きな違いです。
これはプロダクトアウトが主流であった時代に生まれた4P分析から、コモディティ化が広がり顧客満足度をあげることが重要課題となった現代に合わせた、4Pからの発展形と言うこともできます。
この4C分析を使うことで、顧客ニーズにあう取組みができるわけですが、一方で4P分析との組み合わせもおこなえます。4P+4Cにより、企業と顧客の両面という広い視点で見ていくことができるメリットもあります。
CAPDサイクル
PDCAは非常に有名なマネジメントサイクルです。
多くの企業が取り入れていますが、古い考えだという意見や、生産管理(品質管理)を念頭においているので、すべてのビジネスにあてはまるものではない、といった意見もあります。
そんな中で提唱されている別のマネジメントサイクルのひとつが、「CAPDサイクル」です。よく見てみるとPDCAの順番が入れ替わっていますが、実際にこのサイクルは「Check(検証)→Action(改善)→Plan(計画)→Do(実行)」という流れになります。つまりCheckから回していくマネジメントサイクルです。
「まだやっていないのに計画は立てられない」「まずはやってみることが大切」、といった点を考慮したマネジメントサイクルです。
PDRサイクル
こちらもPDCAのような計画からではなく、CAPDサイクルと同じく実行に重きを置いたマネジメントサイクルです。
「Prep(準備)→Do(実行)→Review(見直し)」が、この要素と流れです。3つの段階、つまりPDCAやCAPDに比べてひとつ少ないことからわかるように、よりスピーディーに回していくことができるビジネスサイクルになっています。
OODAループ
読みは、「ウーダループ」です。
「Observe(観察)」「Orient(方向づけ)」Decide(意思決定)」Act(行動)」の4つの要素で構成されます。意思決定のためのフレームワークとして、非常に注目を集めています。
観察のObserveは情報収集といった意味合いが強く、このモデルではこの部分がスタートとして重視されているのが特徴です。またループ(loop)となっている通り、一方向に向かいそれを繰り返していく、というマネジメントサイクルとは考え方自体が異なります。
OODAループは変化へ対応できる柔軟さと、高速で実行していけるという点がメリットです。そのため変化の激しい現代に、ピタリとはまるモデルといえます。
PDCAと比較されることが多いこのOODAループですが、前提となる状況や適用領域も違うことから、別ものとして捉えるべきという意見もあります。
まとめ
定番、有名どころとは異なる10個のフレームワークを見てきました。それぞれの内容からわかるように、ほとんどが過去からの発展形、あるいは比較して論じられているものです。
昔から存在するフレームワークの有用性が失われたとは決して思いませんが、時代が変われば乖離が出てくるのも事実。今回紹介したフレームワークにしても、早くも時代とのズレが出てきたり、定番に比べてあまり使われていない分、その実効性が定かでないといったデメリットもあります。しかしこうした多くのフレームワークを知ることで、いざという時に対応できる、あるいは多彩な考え方をしていける、というメリットは享受できるはずです。