マーケティングROIとは|コンテンツマーケティングにおけるROIの考え方
「マーケティングROI」という言葉をよく耳にすることがあると思います。
海外ではマーケティングに対する費用対効果を算出するため以前から用いられていますが、マーケティング後進国とされている日本で注目され始めたのはごく最近のことです。
そもそもROIとは何か?マーケティングROIとは何か?
そして、コンテンツマーケティングにおけるROIの考え方をここで解説していきます。
「マーケティングROIって何?」という方、コンテンツマーケティング(またはインバウンドマーケティング)を展開している企画担当者の方は是非参考にしてください。
ROIとは
ROIとは「Returne on Investment」の略であり、日本語では「投下資本利益率」と一般的に意訳されます。
つまり、「投資に対してどれだけの利益を上げることが出来たか?」を数値化するための指標です。
「費用対効果を具体的な数値として表したもの」と考えると分かりやすいと思います。
言葉で言うのは非常に簡単なのですが、なかなか複雑で理解するのに時間がかかるのが「ROI」なんですね。
そこでROIの具体的な計算式を紹介しておきます。
ROIの計算式
ROIを計算する際はまず「粗利」を計算します。
粗利とは「売上げ総利益」のことで、売上げから仕入れや製造にかかった金額(≒売上げ原価)を引いたものです。
次にこの粗利から投資額を引きその合計を投資額で割り、最後に100をかけることで投資額をパーセンテージで表します。
式にすると以下の通りです。
[粗利(売上げ-売上げ原価)-投資額]÷投資額×100
この式を用いることで、投資額に対して発生した利益率を計算することが出来ます。
実際の数字で例を挙げてみましょう。
≪式を用いた実例≫
A社は自社製品に対し100万円の投資額を投じて販売を行った。製品の価格は1つ5,000円で1,000個の販売を達成したため売上げ額は500万円。売上げ原価は1つ当たり1,000円かかる。
上記の例をもとにすると、計算式は以下のようになります。
“[400万円(500万円-100万円)-100万円]÷100万円×100“
この計算式からはじき出されるROIは「300%」となり、投資額に対し300%の利益率を得たことになります。
では、投資額を300万円とした場合の例も挙げてみましょう。
“[400万円(500万円-100万円)-300万円]÷300万円×100“
上記の計算式でのROIは「33.3%」となり、投資額に対し33.3%の利益率を得たことになりますね。
つまり前者のほうがROIが高いということがお分かりいただけます。
ROIの基本を知ったところで、次に今回の本題であるマーケティングROIについて解説していきます。
マーケティングROI
マーケティングROIとは「マーケティング投資額に対し得た利益率」であり、ROIとは考え方が異なります。
マーケティング投資額とはキャンペーンやプロモーションに対しかかった費用のことであり、ROIで言う「投資額」にあたります。
それではマーケティングROIの計算式を紹介していきます。
マーケティングROIの計算式
基本的な計算式はROIと変わりませんが、マーケティングROIは粗利からマーケティング投資額とさらに「販管費」を引きます。
計算式は以下のようになります。
[粗利(売上げ-売上げ原価)-販管費-マーケティング投資額]÷マーケティング投資額×100
マーケティングROIにおいて販管費を引く理由としては、「マーケティング投資額には含まれないから」です。
メーカー製品であれば販売へと至るまでに輸送費や人件費などがかかります。
これらはマーケティング以前にかかる費用であるため、マーケティング投資額には含まれません。
正確なマーケティングROIを算出するためには重要なポイントなので、きちんと押さえておきましょう。
それでは上記の計算式をもとに例を挙げてみます。
≪計算式を用いた実例≫
B社は自社製品販売のため200万円のプロモーション広告をかけマーケティングを展開。製品の価格は1つ1,000円で5,000個の販売を達成したため総売り上げ額は500万円。売上げ原価は製品1つあたり200円かかり、販管費は総額で50万円かかった。
上記の例をもとにすると、式は以下のようになります。
“[400万円(500万円-100万円)-50万円-200万円]÷200万円×100“
この計算式からはじき出されるマーケティングROIは「75%」であり、つまり200万円のプロモーション広告費用に対し75%の利益率を得たことになります。
このように基本的な計算方法はROIと変わらず、重要なポイントはやはり販管費をしっかりと引くことですね。
コンテンツマーケティングにおけるROIの考え方
近年オウンドメディアを始めとしたコンテンツマーケティングの展開が盛んに行われていますが、コンテンツマーケティングにおけるROIはどのように算出すればいいのでしょうか?
基本的なROIの計算式を持ちいれば簡単に計算出来るように思いますが、そう単純ではないのがコンテンツマーケティングのROIです。
例を挙げつつ解説していきます。
≪一期(年間)を通じた例≫
コンテンツマーケティングのおける一期を通じたROIを計算するのは、基本的な計算式を用いるだけなので簡単ですね。
オウンドメディア運用の毎月50万円(年間で600万円)のコストをかけ、一期を通じて800万円の粗利を得たとします。
“[800万円-600万円]÷600万円×100“
この計算式からはじき出されるROIは「33.3%」であり、オウンドメディア運用で33.3%の利益率を得ていることになりますね。
しかしコンテンツマーケティングにおいて重要なのは、一期を通じたROIの算出ではなく月別もしくは四半期ごとのROIを算出してマーケティングを展開していくことです。
≪四半期ごとの例≫
一半期ごとの投資額を150万円とし初半期の粗利は130万円。これに対し成長率が10%で推移した場合。(小数点以下切り上げ)
1年目)
第一半期:“[130万円-150万円]÷150万円×100=-13.3%
第二半期:“[143万円-150万円]÷150万円×100=-4.6%
第三半期:“[158万円-150万円]÷150万円×100=5.3%
第四半期:“[174万円-150万円]÷150万円×100=16%
四半期ごとに計算すると上記のようになり、第二半期までは赤字であるものの第三半期で黒字に転じるのが分かりますね。
このままの成長率で推移していくと、二期を通じたROIは以下のようになります。
2年目)
第一半期:“[192万円-150万円]÷150万円×100=28%
第二半期:“[212万円-150万円]÷150万円×100=41.3%
第三半期:“[233万円-150万円]÷150万円×100=55.3%
第四半期:“[256万円-150万円]÷150万円×100=70.6%
このように、三期目に突入する頃にはROIが70.6%に達してします。
ただしこれはあくまで単純計算であり、実際のコンテンツマーケティングでの成長率は毎月変動するものです。
なので正確な成長率を算出し、ROIを求めることで「コンテンツマーケティングでどれだけの利益率を得られるか?」を算出することが出来るでしょう。
マーケティングオートメーションツールで効果を測定
企業はコンテンツマーケティングだけを基軸にマーケティング活動を行っているわけではありません。確かにコンテンツマーケティングの効果は非常に高いことが立証されていますが、広告やイベント、セミナー、テレマなど多岐にわたる活動を通じて日々のマーケティング業務をこなしています。
そこで絶対にお勧めしたいのがソース分析です。HubSpotなどマーケティングオートメーションツールを導入することで、全体のROIの把握だけでなく、どのマーケティング活動が効果があり、どのマーケティング活動が効果がないかを可視化することが可能になります。
マーケティングROIで大まかなマーケティング部門の貢献度を把握し、個々の活動の状態を知ることで質の高い活動をリアルタイムかつ効率的に行うことが可能になるでしょう。
マーケティングROIの注意点
マーケティングROIを求める上で注意するべき点を2つ紹介しておきます。
数値に依存しない
マーケティングROIを計算することで、マーケティング投資額に対する利益率を算出することが出来ます。
しかしあくまで「粗利に対する利益率」を算出するため、その他マーケティングによる効果を測定することは出来ません。
つまりサービス・製品の認知度やブランド力向上など「目に見えないマーケティング効果」を算出することは出来ません。
多くの企業では年間のマーケティングプランを策定する際に予算化を行います。その時にブランディング(アウェアネス)に20%、リードジェネレーションを含めたインバウンドマーケティングに50%、インフラ費用に30%などと規定しています。
この配分自体は企業が置かれた状態により変化しますが、このように決めることによってマーケティングROIを算出しやすくなることも事実でしょう。
ROASと混同しない
ROASとは「Return on Ad Spend」の略であり、日本語にすると「投下広告費用回収率」となります。
利益ベースで計算するROIに対し、ROASは売上げベースで考えるためROIとはまったく違った結果になります。
ちなみにROASの計算式は以下の通りです。
“[広告による売上げ-広告費用]÷広告費用×100”
計算式を見て分かる通り、ROASでは粗利を求めません。
つまり単純な売上げ(広告による)をもとに算出するため100%以上の数値でなければ「赤字」ということになります。
ちなみにROIでは0%を下回らなければ黒字計算です。
ROASの優れている点は「粗利を求めなくてもいい」ということで、マーケターはプロモーションごとの回収率を簡単に求めることが出来ます。(ROIでは粗利を求めるために決算をしなくてはならないので)
ROIの計算に慣れている方がROASを計算すると混乱する場合があるので十分に注意しましょう。
おわりに
いかがでしょうか?本稿で少しでもマーケティングROIについて理解して頂けたのなら幸いです。
一見複雑ですが、慣れればマーケティングROIを算出するのはそう難しいものではありません。また、細かい分析などを行いたい場合にはマーケティングオートメーションツールは必要不可欠ですので導入することをお勧めします。