企業は若者に対するマーケティングにどう取り組んでいくべきか?

残念なことに人間は誰でも歳をとります。

平野ノラのネタに笑う人もいれば、意味がわからない人もいます。メインフレームやCOBOLの話で盛り上がる世代もいれば、はじめしゃちょーで盛り上がる世代もいます。

マーケッターであればターゲットとなる世代の人たちの心を捉えられるようにしておきたいものです。

今回は、若者に対するマーケティングについてのポイントをご紹介します。「世代が違いすぎてどうメッセージを届ければ良いかわからない」と考えているマーケッターのヒントに少しでも貢献できれば幸いです。 

世代間で本質は変わらない購買行動

まず最初にお伝えしたいこと、それは「基本的な欲求、感じ方、考え方はいつの時代もどの世代も変わらない」ということです。

大人世代からよく聞かれる言葉は次のようなことです。

  • 今の若者の考え方がわからない
  • 消費意欲がないようだ
  • ソーシャルメディアで繋がりを持とうとする
  • インターネットで多くの情報を得ている
  • テレビじゃなくてYouTubeをみる
  • スマートフォンでいろいろやっている
  • パソコン離れ

などなど

若者世代の考え方がわからない、というのはいつの時代も言われている事です。

「今どきの若いものは」というセリフはよく聞く言葉ですよね。

言われていた人がいつからか言うようになる典型的な言葉、それが「今どきの若いものは」です。最近では「ゆとり世代だから」などというのかもしれません。

この言葉からもわかるように、いつの時代も若者世代は奇異なものと映っているのです。

今の若者世代の考え方や行動が突然変異している訳ではなく、その時代の環境がそのような奇異と映る行動をさせていると考えた方が正しいのですが。

仮に昭和時代にSNSやインターネット、スマートフォンが普及していれば、その時の若者は今と同じような行動を取っていたはずです。

しかし、当時は情報源の多くはテレビやラジオ、雑誌が主流でした。物を買う場合も店頭に出向いて店員の話を聞き、吟味して買っていました。

環境の変化(情報源の変化)により、売り手主導から買い手主導になったとはいえ、本質的には「情報を得て、吟味して、購入する」行動は変わっていないのです。

若者世代と大人世代の購買行動

若者世代はモノを買わない?景気の影響

 購買行動については、マーケティングの中身と関わってきますので少し詳しくみていきたいと思います。

多く言われるのが、”最近の若者世代はモノを買わない”という事です。

以前、機会がありファッション関係の学校に通う学生たちに話を聞きました。

驚いたことに、ブランドもののファッションには興味はなくファストファッションに興味があるのだそうです。そして、ほぼ全員がその考えで、ここまで若い人は消費意識が低いのかと痛感させられました。

一般の若者ならいざ知らず、ファッションを専門に学ぶ学生ですからそれにお金をかけるだろう、ブランドへの関心は高いはずだという予測が見事に裏切られたという話ですが、これは若者の意識というよりも景気と密接な関係があるような気がします。

今の10代後半というと、2000年頃に生まれた世代です。平成で言えば平成10年頃。

景気は悪いのが当たり前の時代ですから、ファッションにお金をかけたりブランドに興味を持つという暮らし方をまったく経験していないのです。

ですから買い物はファストファッションになるでしょうし、ブランドものへの憧れも持ちません。

大人世代だって同じ

これは大人世代にもいえることです。

タクシーの運転手さんに聞くと、今は週末金曜日も平日も、夜のタクシーの利用はほとんど変わらないそうです。終電の時間になると街からパーッと人が消え、タクシーに乗る人もほとんどいないのです。聞けばこの状態が10年以上近く続いていると言います。

今の若者に消費意欲がないのではなく、世代を超えて全体的に消費を抑える時代を生きているのでしょう。 

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情報入手経路を抑えることの重要性

マーケッターの基本ですが、ターゲットとなる世代の情報入手経路を理解することは重要です。

ターゲット世代がテレビを一切見ないのであればテレビCMをやる必要はありません。ターゲット世代がインターネットを一切見なければWebサイトを持つ意味もありません。

いくらコストをかけてもリーチできなければマーケティング活動が意味をなさないものになってしまいます。

つまり、その世代の情報入手経路を抑えることがマーケッターにとって重要な仕事の一つということです。

それでは若者世代の情報入手経路について見ていきましょう。

若者世代でも情報入手の方法は千差万別

若者の購買行動を考える際にもう一つ重要になってくることが「同じ若者世代でも情報入手の仕方や消費の仕方は違う」という点です。

これはマーケティングの考え方として押さえておくべき重要なポイントです。 

一般に中学、高校、大学生を10代の若者として括るケースが多いのですが、自由になる「時間」「お金」の違いから中高生と大学生の間には線引きされます。

例えアルバイトをしても、高校生が自由に使えるお金はお小遣いに若干プラス程度でしょう。お金があっても、まったく親の監視下を離れて自由に買い物をするということもできないはずです。また学校の拘束時間もあります。高校生以下の世代は放課後や休日に「店舗に足を運ぶ」という行動を行います。友だち同士、あるいは欲しいものがある場合は家族を伴ってになります。

つまり、高校生以下の購買行動はかなり制約が入ります。

これが大学生になると、自由になる範囲が広がります。 インターネット通販でも、高校生以下は自由に購入できません。クレジットカードを持てないことも影響し、自分だけで買い物ができません。代引きや後払いなど他の決済方法を利用しても、やはり親にまったく管理されず買えるというのはないでしょう。

店舗離れが多く言われますが、こうした高校生以下の購買行動を考えておけば、リアル店舗の役割は重要になってくるわけです。

若者世代の情報収集

 それでは実際の購買行動をするにあたり、若者世代はどういった情報収集を行っているのでしょうか。

 インターネット広告代理店のオプトが行った、コスメ用品に対する「若者世代の購買行動変化」のデータを参考に見ていきましょう。

世代の区分けは、次の通りです。

  • 第一世代 14-22歳
  • 第二世代 23-32歳
  • 第三世代 33-49歳
  • 第四世代 50歳以上 

「若者世代の購買行動変化」のデータ【認知】コスメ購入時の全体との差【購買・利用のきっかけ】コスメ購入時の全体との差

最終的な購入場所はどの世代も店舗ですが、 認知や検討段階で違いが出ています。

ここで第一世代として区分される若者層では、認知で「SNSの個人ユーザー情報」「キュレーションサイト」「検索エンジン」「ショッピングモールサイト」の割合が高く、購買のきっかけでは「SNSの個人ユーザー情報」「検索エンジン」の比率が高まります。

「キュレーションサイト」も認知の時と同じく利用されていますが、その割合は減っています。これは若者世代の情報選択の鋭さ、何を信頼できる情報としているかの目安にもなります。

 逆の見方をすれば、信ぴょう性に問題が出て下火になったキュレーションサイトですが、認知という点では若者世代に依然強い影響力を持っていると言えます。

実際、若者世代はその情報の信ぴょう性うんぬん以前に、キュレーションサイトを「暇つぶしメディア」として重宝していると言います。

このあたりも大人の感覚だけで測っていてはダメな点でしょう。 

この調査は残念ながら14歳から22歳という幅広い括りの若年世代になっています。つまり大きく購買行動が変わる中高生、大学生がまとめられているのです。

また選択肢にありませんが「リアルな友人、知人からの情報」というのがあれば、それも上位にくるはずです。

実際に多くのユーザーが信頼できる情報源としてリアルな友人、知人からの情報を挙げるのは定説です。

交友関係がまだ大きく広がっていない中高生では、家族も含めてこうしたリアルな情報源は、購買行動に特に大きな影響力を持つと言えます。

ここで紹介したオプトの購買行動に関する調査データは下記で参照できますので、ぜひ参考にしてみてください。 

実践的情報源のポイント

 ソーシャルメディア

若者に向けたマーケティングで実践的に使える情報をいくつか挙げておきましょう。まずはソーシャルメディアについてです。

ソーシャルメディアはデジタルマーケティング手法の定番の一つになっていますが、残念ながら十分な効果を出せている企業アカウントはそれほど多くありません。

それは、商品や企業のPRの場としてSNSを活用する、という意識がまだまだ強いからです。SNSはコミュニケーションの場なので、そこにPRや宣伝をいくら突っ込んでも効果は出せません。

成功事例として多く言われるのが「シャープさんとタニタくん」です。これはPR要素をほとんど無くし、その環境に馴染む情報発信を行うことで共感を得ています。

こうしたプラス要因は多く言われることなので、敢えて二つの点を指摘しておきたいと思います。

  • 何を成果とみなしていくか。
  • 企業ブランドとのバランスをどう取っていくか。 

確かに大きな話題にはなっているものの、実質的な企業メリットとして何を、いつもたらすかについては不明です。またこれまで培ってきた企業のブランディングとは異なる手法にもなります。

シャープやタニタの手法を真似てソーシャルメディアの運営を改善していくというのはアリかもしれませんが、「効果測定」「ブランドとのバランス」まで考えて行うと、より意義のある取り組みになりそうです。

ソーシャルメディアで話題性のあるコンテンツづくりのポイント 

それではソーシャルメディアで話題性のあるコンテンツ作りのポイントをご紹介します。

最近は以下の2つがトレンドになっています。

  • ダンス(動き)
  • 面白い言葉 

富士フィルムの「写プライズしよう。【フジフイルム公式】」もその二つの要素を組み込んだキャンペーン展開をしています。

写プライズしよう。【フジフイルム公式】

昨年大ブームになった逃げ恥の「恋ダンス」のように、みんなが楽しく踊れて広がっていく、というのを今は多くの企業が狙っています。

モバイルアプリ

若者世代はアプリを多く使いこなしています。

SNSもWebブラウザではなくアプリ、というのが基本です。アプリに関してはトレンドの移り変わりが激しく、また若者世代にとって今は「新しいものは特にない」という状態のようです。

それだからこそ、アプリを使ったマーケティングはチャンスの時期ともいえるかもしれません。

これまでの流れでは、「何らかの機能」→「ユーザー数が増える」→「SNS化」というのが成功パターンのようです。

最初からソーシャルメディアを作ろうとして取り組むよりも、まずは若者世代のニーズを捉えた機能を考える方が良いのかもしれません。

経年変化に注意する

弊社ではB2B企業に向けてオウンドメディアのサービスを提供しています。

IT系企業のクライアントから情報システム部門のCIOにリーチしたいという要望をいただくことがよくあります。

10年前にはインターネット経由でこのようなCIOと呼ばれる方々にリーチするには得策ではありませんでした。しかし、インターネットを当たり前のように使いこなす世代の人たちが出世しCIOになってきています。昔の若者世代が歳をとり経験を積みキーパーソンになっているのです。

先日も上場企業の経営層からいきなりWeb問い合わせを受けました。

時代は常に変化します。

今の若者世代が主流になることを前提にマーケティング戦略を考える必要があります。

マーケッターが「今時の若いものは」というのは禁句かもしれませんね。