コンテンツマーケティングにも広告は必要?成果を出すための戦略的な広告への取り組み
コンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングに「広告」という言葉はそぐわないと考えている方は多いのではないでしょうか?
確かにこれらのマーケティング手法は、検索エンジンやソーシャルなどを通じて「ユーザーから見つけてもらう」ことを基本にしていますので、広告で集客をすることとは違います。
しかし、現実のコンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングに広告は不要かというと、答えは「NO」の場合が多いものです。
ここではコンテンツマーケティング(インバウンドマーケティング)と広告の関わりや実際に押さえておきたい広告手法、そして広告をどう使っていけば良いかについて解説していきます。
コンテンツマーケティングと広告
コンテンツマーケティングに広告?企業担当者の反応は・・・
まず、コンテンツマーケティングを導入したいという企業担当者とコンサルタントの会話の一例を見ていきましょう。
企業担当者:「コンテンツマーケティングを導入したいと考えています」
コンサルタント:「それは良いですね」
企業担当者:「計画から実務の準備までを相談したいのですが。大枠としては既存のサイトの中に、特集コンテンツを設けたいです」
コンサルタント:「SEOを考えても、今のサイトの中でコンテンツを増やしていくというのが良いですね」
企業担当者:「そのSEOですが、これで集客をしないといけないんだから、キーワードの洗い出しから協力を頼みます」
コンサルタント:「はい。ところで、広告とかは考えていますか?」
企業担当者:「えっ、コンテンツマーケティングするんですよ。どうして広告がいるんですか?」
ここで大抵の場合、このコンサルタントの力量は疑われます。ほとんどの担当者は広告を使わない手法がコンテンツマーケティングと考えているからです。しかし、実際のコンテンツマーケティングでは広告も利用されています。
コンテンツマーケティングに広告が必要とされる理由
コンテンツマーケティングは時間がかかる
まず第一に挙げられるのが「コンテンツマーケティングで成果を出すためには、一定の時間が必要」という点です。
企業活動ですから、何の成果も見られなかったら大抵は指摘が入ります。最悪は「コンテンツマーケティングなんてダメじゃないか」と中止になってしまいます。
最初はいくらコンテンツを投入しても流入が増えてきません。
筋トレやダイエットなどと一緒で効果が出なくても続けることで、ある日突然上昇気流に転じます。もちろんしっかりとした設計のもと正しいコンテンツマーケティングを行なっていたらの話です。
コンテンツマーケティングで成果が出始めるまでは、本来の目的とは違うかもしれませんが、自然検索からの集客以外に広告という手段も用意することを考えるのが妥当です。
SEOの面からある程度のトラフィックはあった方が良い
「検索エンジンて、たくさんアクセスがあるサイトを上位に持ってきたりするんじゃないの?」と言われることも多いです。確かにGoogleの検索ロジックの中にこの「アクセス数の多さ」も入っていると言われます。
もちろん200以上あるうちのロジックの一つですし、アクセス数は多くても直帰や滞在時間が短いとマイナスに作用してしまう場合も考えられます。
「ユーザーは多く訪れるけど、満足度の低そうなサイトだな」と検索エンジン側が判断しかねないのです。
検索エンジンはランキングサイトではありませんから、単なるアクセス数の多さだけを参考にしません。しかしアクセスが多くかつユーザーの満足度が高そうなページの場合は、上位表示されていく可能性があります。
質の高いコンテンツとユーザビリティに優れたサイトという前提で、アクセス数を増やしておくというのはSEO対策にもなるわけです。
そのための手法の一つとして広告を考えるのも良い手と言えるでしょう。
即効性を求めるなら広告で
「とにかく早く成果を出したい!」と誰もが思います。
このような場合には、やはり広告が必要です。コンテンツマーケティングにプラスして広告を使うべきです。
コンテンツマーケティングは、時間がかかります。その一方で資産になるメリットがあります。広告はお金がかかります。その一方で即効性が高いのです。
時々見られるのですが、すぐに売上を出すよう厳命している上司が「コンテンツマーケティングが流行っているらしいから、それをやってはどうか」と言ってくることがあります。
「コンテンツマーケティングは成果が出るまでに時間がかかるので、今のタイミングでは広告費用も考えるべきです」と説得するのもマーケティング担当者の大切な役割と言えるでしょう。
広告の現状
敬遠されているが、成果も出る
広告がユーザーにどう思われているのでしょうか?
「敬遠されている」というのが答えです。
それを如実に示す、私が遭遇した事例をいくつか紹介しておきましょう。
- ページ内の無数の要素の中で、ヒートマップツールを使ってユーザーの視線を調査してみると、広告箇所は真っ青、色がつかない場合もあった。つまりほとんどのユーザーは広告をスルーしていた。
- フローティングする広告で、×ボタンが付いていてユーザーの手で消せる場合、広告自体のクリック数より×ボタンを押した数の方が大きく上回っていた。
- ユーザーからの声でも「広告が鬱陶しい」が上位を占める。中には「有料サービスになっても良いから、広告は掲載しないで欲しい」という意見もある。
この他にもブラウザやアプリのアドブロック機能を使い、広告を非表示にしているというユーザーも多いと聞きます。
広告対策だけではありませんが、cookieが残らない設定をしたり、対策用アプリの利用率が高い、というデータに頭を抱えている担当者も多いことでしょう。
総じて「敬遠されている」という状況なのです。
その時代だからこそ広告ではない「コンテンツマーケティング」や「インバウンドマーケティング」が脚光を浴びるのですが、一方で広告に関する効果もいまだ確認されています。
最近のネット広告に関する調査データから、一部抜粋して見てみましょう。
インターネット広告に関するアンケート調査:マイボイスコム株式会社(PR TIMES) 2016年5月30日
誤ってのクリック(誤タップ)や、表示を消すための×ボタンを押したという層も多い中、それでも3割近いユーザーが意図的に広告をクリックしています。
バナー広告離れが多く言われますが、実際にクリックされている割合ではそのバナー広告が圧倒的です。またクリックしたのは「興味がある商品・サービス」が突出しています。
広告にはお得情報などインセンティブがないとダメなのではないか、という意見も聞かれますが、実際のクリックではあまり重視されていないことが分かります。
これは現在の広告のトレンドともピッタリと重なりますので、次で具体的に見ていきましょう。
コンテンツマーケティングで押さえておくべき広告は?
現在の広告トレンドで押さえておくべきなのは、次の4点です。
- ネイティブ広告
- 運用型
- リターゲティング
- スマートフォン
ネイティブ広告のことを「記事広告」と理解している人もいるようです。しかし、記事広告は、広告から飛んだ先の広告ページの一つです。
ネイティブ広告の本来的な意味は「掲載するページのデザインやフォーマットに馴染む形で掲載される広告」です。
例えばyahooニュースのこの画面では、上から3番目はニュース記事ではなく広告です。掲載面の体裁に合わせてあるので、ユーザーの体験を阻害することなく、広告を目にすることができます。
「広告」という記載も付いているので、ユーザーが誤解しないというのもポイントです。
このように掲載面のデザイン、フォーマットに合わせるという意味では検索連動型広告(リスティング広告)もネイティブ広告の一つです。
リスティング広告は企業規模に関わらず出稿しやすい広告ですので、コンテンツマーケティングとの組み合わせでも優先的に選択されます。
またリスティングは運用型広告の代表でもあります。
ユーザーの興味、関心がある広告を出稿するリターゲティング広告も多く使われています。検索連動型とセットで出稿する、という認識で良いでしょう。
ターゲティングの精度が高い運用型広告と言えば、ソーシャルメディアでの広告も広く使われるようになっています。
これらをうまく使いこなすことで即効性のある効果が見込めるでしょう。
しかし、こうした広告にもデメリットが存在します。
検索連動型広告は普及が進み、ユーザーも検索結果ではなく広告だというのを認識してきた事もあり、CPAを下げるのはかなり難しくなりました。
また、ソーシャルメディア広告も一時期のブームが落ち着いて、必ずしも費用対効果が高いとは言えなくなっています。
現在の広告運用はいかにデータを分析、活用できるかが成否の分かれ目となってきています。
大企業でもまだまだ手つかずの面がありますので、今後はデータ活用をいかに取り入れていくかに注力していきましょう。
広告は戦略的に組み込む
前章で、今取り組むべき広告の種類について押さえられたと思います。
締め括りとして、いかに広告をコンテンツマーケティングと組み合わせるかについて解説しておきましょう。
ポイントは「コンテンツマーケティングを行う上で、どの段階でどれぐらい広告を取り入れていくか」です。
例えばコンテンツマーケティング着手段階では一定の広告予算を投入、半年後、1年後と年を追うごとに広告予算を削減していく、というロードマップを描いていきます。
最終目標は広告をなくすことです。
こちらの図(HubSpotのソース分析画面)は、とあるB2B企業のコンテンツマーケティングの成果です。具体的には訪問数の月ごとの推移を表しています。
この企業は2015年8月よりコンテンツマーケティングを開始しました。軌道にのせるために2015年8月から12月までの5ヶ月間広告を行なっていました。赤い部分が広告からの流入です。緑が自然検索からの流入です。
その後、広告をやめました。広告をやめて不安でしたが、広告からの流入が顧客化していないことがこのソース分析より判明したため、止めることが妥当であると判断したのです。コンテンツが出揃ってきたのも、その判断を後押ししました。だいたい8ヶ月目くらいから上昇トレンドに転じています。今では広告出稿せずにコンテンツがせっせと働いてくれているコンテンツマーケティングの良い事例です。
コンテンツマーケティングでは成果指標を定めたり効果測定をしにくい、というのが常に課題として上がります。そのような場合にはHubSpotなどのツールを導入すると良いでしょう。全てが可視化されます。