コンテンツマーケティングの事例を業界別に紹介

ビジネスの世界では「コンテンツマーケティング」という言葉が注目されています。その内容とは、消費者に利益をもたらすコンテンツを公開し、売上につなげていく手法のことです。一方で、「コンテンツ」の意味を正しく理解できず、Webでの宣伝を展開しきれずにいる企業も少なくありません。この記事では、コンテンツマーケティングの成功事例を通して、業界別に実践的な導入方法を紹介していきます。

コンテンツマーケティングの手法は様々

まず把握しておきたいポイントは、コンテンツマーケティングを行う媒体に正式な定義はないということです。ホームページはもちろん、ブログ、SNS、動画サイトなど、「コンテンツ」が発生するすべての場所がマーケティングの舞台になります。その手法は業種・職種によって様々です。コンテンツマーケティングに挑む際には柔軟な発想を持ち、自社のポテンシャルをもっとも発揮できるツールを選ぶ必要があります。また、ターゲット層によっても効果が現れる手法は異なります。

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コンテンツマーケティングの事例紹介

以下、コンテンツマーケティングの成功事例を業界ごとに解説していきます。インターネットと会社経営が切り離せなくなった現代において、あらゆる業種が消費者に訴求するための「コンテンツ」を用意するようになりました。その中で成功と失敗に分かれるポイントは、「手法と事業内容のマッチング」「消費者目線」が挙げられます。

いかに最先端のツールを用いてマーケティングを行っても、事業内容に合っていなければターゲット層の関心は集まりません。また、消費者の知りたい情報が反映されていなければ、アクセス数も増えていかないでしょう。成功しているコンテンツマーケティングでは自社の事業をより魅力的に見せ、消費者を惹きつける工夫がなされています。その結果、消費者がコンテンツを通して「これなら自分の問題が解決できる」と感じることが大切です。これらの要素に注目しながら、事例を見ていきましょう。

アパレル業界の事例

実店舗からECサイトへの移行は、アパレル業界のマーケティングにも大きな影響を与えました。これまで、紙媒体での宣伝が主流だったのに対し、ECサイトに消費者を呼び込むためにはWeb部門の強化が必須になったからです。そこで、多くの大手企業はコンテンツマーケティングを意識的に取り入れ、成果を収めています。

たとえば、あるブランドは消費者に対し、毎日のコーディネートを提案するサイトを立ち上げ、購買意欲をあおる手法を取り入れました。Webでは大量の情報を頻繁に更新できるため、紙媒体に対する優位性を押さえた手法だといえます。そのうえ、同サイトではスタッフの私服なども公開し、消費者に親近感を持ってもらう工夫をしています。コンテンツマーケティングでは、訴求する側の趣味・嗜好すら商品化することが可能です。

一方、アパレル業界ではWebマーケティングが実店舗の売上につながらない問題が深刻でした。Web経由で実店舗に消費者が訪れたとしても、その場で他ブランドのECサイトと商品を比較し、結局は自社で購入しないまま帰ってしまう現象が起こっていたからです。そこで、ホームページで割引クーポンを発行し、Webでつかんだお客様をリアルで離脱させないための対策がとられるようになりました。ECサイトとリアルを連動させ、相乗効果を高めていくにはコンテンツマーケティングが非常に大きな役割を果たします。

IT・ソフトウェア業界の事例

直接的に商品・サービスの魅力を伝えるだけがマーケティングではありません。特に、IT・ソフトウェア業界が相手にしている顧客は、広い意味でのソリューションを求めてサイトを訪れます。彼らは、業務を効率化したい企業経営者や自社システムのセキュリティを高めたい情報システム担当者、アクセス解析の精度を高めたいWeb担当者など、何らかの問題を抱えている人たちです。そこで、IT業界のコンテンツマーケティングでは、一見、商品とは無関係に見える記事をブログに掲載していく手法もとられています。ネットユーザーはブログの内容に一目置くようになり、発信元である企業への信頼度を高めていきます。

もちろん、自社製品と絡めたブログ記事もコンテンツとしては大いに有効です。ただし、その場合も商品紹介に終始するのではなく、応用シーンまで提案することが大切です。自社のサービスと契約したり、ソフトウェアをインストールしたりすれば、どのような利益が生まれるのかを戦略として発信する必要があります。しかも、売り手からの一方的な商品PRでは、買い手のニーズを満たせません。コンテンツマーケティングでは、あくまで顧客の問題を明確にリサーチしたうえで、ピンポイントな提案に落とし込むことが成功のコツです。

製造業の事例

これまでの製造業では、中小企業が大企業に対してブランド力のハンディキャップを背負ってきました。消費者心理としては、有名企業で大量生産されている商品を購入したほうが安全と考えるのが当然です。そのため、中小企業には、質の高い商品を生産しているにもかかわらず、それを売上に結びつけられない悩みがありました。しかし、コンテンツマーケティングにおいては、自社の強みを発信する姿勢が基本です。ホームページの内容を充実させ、自社製品について個別に詳細な説明を載せるなどすれば、企業規模にかかわらず発信力を身につけることは可能です。さらに、製造過程を動画で記録し、技術力をPRする取り組みを行っている企業もあります。

そして、ネットユーザーが商品に対して不足している知識を補うためにもコンテンツは応用できます。業界になじみがないユーザー相手に、専門的な口上を並べても大きな反響は得られません。そこで、根本的な商品の働き、規格、種類などを詳しく記事にして説明していきます。そうやってユーザーの初歩的な理解を進めてから、自社商品の強みを公開すれば、ユーザーの支持を集められます。こうしたユーザー教育の一環として、商品の資料をホームページからダウンロードできるようにしている企業も出てきました。大手との間にあるブランド力の差を埋めるため、製造業でコンテンツマーケティングは重宝されています。

不動産業の事例

消費者の生活に大きく関与する不動産業では、物件購入後のビジョンを明確に示す必要があります。そのため、コンテンツマーケティングにおいても視覚的なイメージを利用した成功事例の多さが特徴です。たとえば、フィクション作品の間取りを取り上げて、いかに魅力的な設計になっているかを解説するサイトは有名です。そして最後に、「こんな場所に住みたいなら」と、おすすめの物件を紹介する段取りになっています。ユーザーからすれば、物件の雰囲気をはっきり捉えられるうえ、自分のライフスタイルに合う家も探しやすくなります。また、有名作品と物件を絡めることにより、作品のファンをサイトに誘導できるのも強みです。

そのほか、物件そのもののみならず、近隣情報までガイドしているサイトもあります。住宅物件を探しているネットユーザーの場合、家賃や築年数と同じくらい周辺環境も大切なポイントです。もしも治安が悪かったり、駅やスーパーまでの距離が遠かったりしたら、好条件の物件でも買い手はなかなかつきません。コンテンツマーケティングはユーザーの不安に先回りし、解決するために効果的です。さらに、サイト内に育児コラムや地元住民のコメントなども掲載することにより、ユーザーが物件を契約する際の決め手を増やせます。

スポーツ・アウトドア業界の事例

体験型のサービスを提供しているビジネスでは、言葉だけで訴求しても魅力がなかなか伝わりません。そこで、コンテンツマーケティングの重要性が高まります。あるスポーツ施設ではホームページでインタビューを定期的に掲載し、ネットユーザーがサービス内容を想像しやすいように工夫をこらしています。たとえば、施設の会員がサービスの感想、自分が得られたメリットを語っているインタビュー動画を通し、ベネフィットを広くアピールするやり方が実践されてきました。また、施設の器具や販売商品の開発者にインタビューすることで、ネットユーザーにサービスへの思い入れを持ってもらうことが可能です。

そのほか、施設に足を運んでもらうハードルを下げるためにも、コンテンツマーケティングは役立ちます。スポーツやアウトドアのルール、ノウハウを動画で紹介し、興味を持ってもらう手法は様々な施設で行われています。さらに、施設で開催されているイベントなどの動画を公開すると、楽しさが臨場感とともに伝わるでしょう。会員層もチェックできるので、見込み客が入会について抱く不安を払拭し、集客へとつながります。

インテリア・雑貨業界の事例

業種によっては、あまりにも露骨に宣伝臭を放ってしまうと見込み客を逃がしてしまうことがあります。コンテンツマーケティングでは、ターゲット層を想定しながら心に響く内容を掲載するようにしましょう。たとえば、インテリア・雑貨業界では、ターゲット層は「商品への思い入れ」を重要視しています。確かに価格やクオリティ、機能性なども大切ですが、それ以上に自分が愛着を持って商品を使い続けられるかどうかが購入のポイントです。そのため、商品のスペックや価格情報ばかりに言及しているコンテンツは、ネットユーザーの獲得につながりにくい可能性があります。

ネットユーザーの心をつかむには、直接的にはマーケティングとは無関係に見える記事を掲載してみるのもひとつの方法です。たとえば、家具を訴求するのであれば「職人さんの思い」や「家具の成り立ちについての歴史」などをコラム形式で紹介します。読み物として面白い記事に触れるうち、ユーザーは商品に思い入れを重ねてくれます。また、企業への信頼にもつながり、「ここの商品を深く知りたい」との欲求をふくらませることも可能です。さらに、家具や雑貨は日常的に使い続ける商品なので、「効率的な使い方」「おすすめのインテリア」などを記事で紹介すると、高確率で需要があるでしょう。こうしたコンテンツはユーザーに商品を「早く使ってみたい」と感じさせるので、結果的に売上向上へとつながります。

士業の事例

会計士、税理士、弁護士といった専門性の高い仕事を引き受ける「士業」の分野では、見込み客をいかに顧客へと誘導するかが大きな課題となっています。なぜなら、専門性が仇となって「どんな利益が得られるのか難しくてよく分からない」と感じている見込み客も多いからです。そこで、ある税理士事務所ではクラウド会計ソフトをリリースし、ユーザーが気軽に経理処理の問題を解決できる仕組みを作り上げました。サービスのクラウド化は顧客側だけでなく、事務所側にとってもターゲットエリアを全国に拡大できるメリットを含んでいます。さらに、会計ソフトにまつわるコンテンツには税理士本人が登場することでスキルを実証し、ユーザーからの信頼を得られる流れが確立されました。

そのほか、ユーザーが抱えている問題の解決策を、具体的に提示できるのもコンテンツマーケティングの強みです。別の税理士事務所は、ユーザーのタイプ別にコラムを掲載しています。個人事業主から、大中小の企業経営者まで、職種ごとに起こりがちな悩みをQ&A形式で取り上げています。「飲み会の代金を会社の経費に計上する方法」といった実用的な知識があふれているため、多くのネットユーザーを引きつけることができます。そのうえで、問題に見合ったサービスが紹介されるので、効率的な集客ができるオウンドメディアになっています。

美容業界の事例

コスメやスキンケア用品など、美容業界では商品の訴求にコンテンツマーケティングが欠かせません。ただし、美容の世界では単に商品の魅力をアピールするだけだと、思ったように売上が伸びません。他社と比べて何が優れているのかをはっきり明示しなければ、競争率の高い業界で抜きん出た存在になれないからです。そこで、ある販売サイトでは「安全性」をアピールする形で、自社商品の魅力を紹介しています。まずは、コラム形式で正しいスキンケアの方法や、肌に良いとされる成分を解説します。そのうえで自社商品のこだわりをPRするため、普通の販売サイトよりも説得力が高まるのです。コンテンツが充実するにつれ、ECサイトやトライアル申し込みへのリンクは頻繁にクリックされるようになりました。

また、別の企業はWebマガジンを発行し、ホワイトニングなどの美容知識を定期的に更新しています。そして、コラム内で経営するクリニックへの予約を誘導したところ、集客の増加につながっています。そのほか、美容業界ではインスタグラムをはじめとするSNSとの連動も効果的なマーケティング方法です。ユーザーの「美しくなりたい」という願望に応えるには、実際に画像や動画でサービスを見せることが一番だからです。

人材・求人業界の事例

アルバイトや派遣先、就職先を探しているユーザーに対してもコンテンツマーケティングは効果を発揮します。とある人材・求人業界の企業はサイト内で様々な分野の社会人へのインタビューを掲載しています。記事を読んだユーザーは、仕事に対する不安や疑問を解消でき、安心して応募ができる仕組みです。また、仕事のやりがいを学んだり、先輩社員に憧れを抱いたりすることで、就業後のモチベーションアップにもつながります。最初はあまり関係がなさそうな話だったとしても、最終的にはあらゆる現場で活かせる教訓が得られるため、ユーザーに人気のコンテンツとなっています。

また、ユーザーをサポートする役割も、コンテンツは担っているといえるでしょう。ある職業において、必要とされる資格、免許をサイト内で丁寧に説明しておけば、キャリアアップのイメージが持ちやすくなります。そもそも、資格の勉強、試験の手続きなどは多くのユーザーが知りたがっている情報です。これらに関する記事はSEO的な意味合いも大きく、人材・求人業界のサイトでは積極的に紹介されています。そのほか、学生向けの就活情報もアクセス数を増やせるコンテンツです。履歴書の書き方、面接対策などは常にリサーチされている情報なので、最新の就活事情を踏まえて記事にすると、サイト自体の注目度を高められます。

飲食・グルメ業界の事例

コンテンツマーケティングの中でも、特に幅広い展開を目指せる業種が「飲食・グルメ」です。人気飲食店やトレンドのメニューなど、グルメ関連の情報は常に高い需要があります。ただし、その分ライバルも多いため、独自の観点からコンテンツを打ち出していかなくては、ページが検索上位に登場しにくくなるでしょう。たとえば、ひとつの品目についてだけに特化したサイトを立ち上げ、コンテンツを深く掘り下げていく方法があります。日本酒についてのページであれば、それ以外のお酒を取り扱わず、どこよりも日本酒について詳しいサイトを目指すのです。日本酒の歴史、種類などはもちろん、季節に合わせた味わい方なども紹介していくと、当分ネタ切れを起こすことはありません。そうやって「日本酒といえばこのページ」という評価が確立されると、同業種の中で抜きん出た存在になりえます。

あるいは、ユーザーの食欲を画像で刺激するのも、コンテンツマーケティングだからこそできる作戦です。お昼時、夕食時を狙っておすすめグルメの写真を解説入りで投稿していきます。旬のグルメをタイムリーな時期に特集するのも効果的でしょう。また、深夜にお腹が空いてくる時間帯でのいわゆる「飯テロ」も、商品に興味を持ってもらうにはぴったりです。そのほか、節約レシピや時短メニュー、お弁当グルメなど、生活に密着した記事も主婦層を中心に人気があります。サイトのアクセス数を増やすには、押さえておいて損はありません。

旅行業界の事例

現地情報が手軽に得られるという意味で、旅行業界のコンテンツはネットユーザーから注目されています。そのため、旅行代理店やキュレーションメディアなどは、サイト内で写真やガイド記事などを充実させ、ユーザーを消費に誘導しようと努力しています。中でも、ストーリー性に基づいたコンテンツマーケティングはユーザーから人気です。旅行とは体験に対してお金を支払っていく消費活動であるだけに、サービス提供者は見込み客に「楽しさ」を示していかなくてはいけません。単に情報が羅列されているだけではなく、自分が現地に行くとどのように楽しめるかまで伝える必要があるのです。そこで、記事の「主人公」を想定し、ユーザーが自分を重ねながらコンテンツを追えるような構成にする手法は有効です。ターゲット層に基づいて主人公像を設定すると、より多くの反響を得られるでしょう。

さらに、情報の量だけでなく、質にもこだわりたいところです。たとえば、各地の観光スポットに関する基本的な情報は、どの旅行サイトでも記されています。しかし、「おすすめの季節」「スポットの見学プラン」「近隣の宿泊施設」などの踏み込んだ情報があると、他のサイトとの差別化を図れます。また国内メディアでは、ご当地グルメやおみやげなど、地元民だけが知っている情報があると、ユーザーの好奇心はふくらんでいくでしょう。口コミを募集したり、現地のライターに取材を依頼したりして、全国各地のガイドをもれなく充実させることが大切です。

教育・レッスン業界の事例

eラーニングなどの浸透により、教育・レッスン業界のビジネスは多様化しています。一方で、見込み客の増加にともない、ターゲット別に応じた目的を示せなければ、売上にはつながりにくくなっています。コンテンツマーケティングでは、提供する教育サービスがどんな年代、業種に向けられているのかはっきり示すことが重要です。たとえば、「英語教育」ひとつをとっても、顧客の幅は大きく広がっています。あるメディアは、社会人から趣味人まで、様々な目的に向けてコラムを掲載しています。一方で、別のメディアはTOEIC対策など、ビジネス英語中心に学習の意味を紹介しています。効率的な勉強方法を掲載しているほか、国際的に活躍している有名人のインタビュー記事で見込み客の学習意欲をあおる内容です。

教育メディアは、ターゲットの絞り込みも重要です。とあるサイトでは、予備校や定期テスト対策などの記事が掲載されているものの、読者に設定されているのは保護者層です。小中学生が自ら費用を払って、教育施設に通うケースはごく稀です。実際に子供の教育を考え、費用を用意するのは保護者だといえます。そこで、保護者が子供の教育について抱いている不安を解消し、学習方法を伝授するコンテンツが好評を博しました。一方、自ら進路について思い悩むようになる高校生以上をターゲットにしたメディアでは、本人が読んで参考になる記事が掲載されています。

まとめ

コンテンツマーケティングは業種ごとに形態を変えながら発展しています。ただし、成功事例においては「消費者の求めるコンテンツを作成する」という基本が共通しています。自社サイトやSNSがなかなか盛り上がらないときは、ターゲット層を一度振り返ってみましょう。そして、彼らが読んで魅力的な記事になっているかを確認します。コンテンツマーケティングではSEOやトレンドも大切ですが、何よりもターゲット層の望む情報を掲載し続けることが肝心です。

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