Web関連の10大ニュース 2017年を振り返る
2017年の終わり、「Webやマーケティングも多様化しているから、さすがに10個だけのニュースを選ぶのも無理がある」と考えていました。
しかし節目の時期に一年を振り返らないと未来は拓けないなどと思い、独断と偏見で2017年を振り返って10個のニュースを選びました。
なおマーケティングやWebデザイン、テクノロジーという粒度だとかえって絞りにくいので、全部まとめてWeb関連のニュースとしてみました。
10位 モバイルファーストインデックス延期
2016年は「デジタルマーケティングの10大ニュース」として選び、そこで堂々の1位を「モバイルファースト」にしました。
そこで2017年はMFI(モバイルファーストインデックス)が大きな話題になるうんぬんとも書いたものの、Googleがあっさりと延期を発表。
まだ具体的なロジックも不明なため「スマホ大事ですよね」という話題に留まりました。
しかし年末、どうやら部分的にGoogleはモバイルファーストインデックスに動いたようです。ログを見れば、スマホ用のクローラーが多く訪れているサイトもあるとか(これ自体2018年から前倒しではないか、というツッコミどころなんですが)。
延期にはなったものの、2017年に滑り込みでその影が見えてきたモバイルファーストインデックスです。
9位 Google AdWordsの新管理画面登場
Googleの提供するツールは、仕様変更は当たり前。
リスティング広告の「Google AdWords」も、2017年の夏前後から新管理画面が登場しました。とはいえ完全移行ではなく、まだベータ版という提供の仕方になっています。学習や慣れが必要なため従来の管理画面を使っている人も多いようです。
しかし曜日や時間別の状況が一目で分かったり、セッションなどの指標を組みかえてのグラフ表示などが簡単だったり、分析関係では使い勝手の良さが実感できます。
「高速になった」と表示されているんですが、読み込みが止まることがあり、そこはまだまだという印象もあります。
8位 さようならIE
長く制作者たちを悩ませてきた存在、IE(Internet Explorer)。
IE9が2017年4月にサポートを終了したことで、IEへの対応から多くのWeb制作者、Webサイトが開放されています。
銀行などの信頼性が高いサイトでも、サポート終了に伴い非対応ブラウザになったことを告知する所もあります。今後対応を止めるサイトは、ますます多くなっていくでしょう。
なおすべてがサポート終了となったわけではなく、IE11はまだサポートを継続中。
2020年までなので、制作者の間では「東京オリンピックまでは対応しないといけない」が合言葉になっているのだとか。
7位 画面が独特のiPhone X
iPhoneが大好きなユーザーは歓喜し、 でも中には「ちょっと高すぎるな・・・」という声も上がったiPhone X。
この10周年記念モデルは、「フルスクリーン」や「画面に出っ張るフロントカメラ」の存在で、多くのデザイナーたちに違った意味での衝撃を与えるものでした。
結論として必ず対応しないといけないWebサイト、アプリはそう多くは無さそうですが、見え方や体験は異なってくるため、UXに気を使う必要はありそうです。
今回は大きな影響があるとはなりませんでしたが、「メジャーな新しい端末でもこういう事があり得るんだ」というのは、ちょっとした驚きでした。
6位 チャットとチャットボットの広がり
サポートや問合せの定番手法と言えば、「電話」「メール」といったところです。
最近これに加えて、「チャット」が言われることが増えてきました。
チャットが企業や各種サービスのコミュニケーションツールとして、広く普及してきた証拠でしょう。
しかしチャットを入れるだけでは、単純に回答するオペレーターの存在が必要になります。
それを解消するのが、「チャットボット」です。
AIを搭載することで、ユーザーの問いに対して自動で答えが返ってくるというのが一般的な機能。さまざまな会社から提供され始めているので、機能アップはもちろん価格帯もリーズナブルなものが増えてきました。
まずは学習をさせないといけませんので、それを含めて実用に足るかどうかは見ていく必要がありますが、うまく使っていけば最も手軽に導入できるAIと言えるかもしれません。
LINEとの組合せでも、今後大きく広がっていく可能性があります。
5位 VRとAR
VR=仮想現実、AR=拡張現実。
言葉としては頻繫に聞くものですが、ビジネスで大きく関わっているという人はそう多くはないのではないでしょうか。
しかし今年、何人かから最近力を入れていることとしてこの「VR」、あるいは「AR」という名前を聞きました。その人たちは皆、Webの制作会社の人たちです。ネイティブアプリはもちろん、最近はJavascriptでこれらの実現も可能になってきています。
身近な技術で実装が可能になれば、今後ますます広がりを見せていくことでしょう。
2016年に既にVR元年という声があがっていましたが、これからビジネスの現場で加速度をつけて広がっていくかもしれません。
4位 AbemaTVの大躍進
インターネットテレビと言えば、「Hulu」「Netflix」など海外の大手企業が勢力を伸ばしてきました。スポーツに特化したものでは、「DAZN」も有名です。
そんな中で、今年もっとも躍進を遂げたのが「AbemaTV(アメバTV)」ではないでしょうか。
サイバーエージェントとテレビ朝日の出資により立ち上げられた企業の運営ですが、ITとコンテンツを供給するテレビ局が組むとこれほど凄いのだ、というのを実感しました。
また先ほど紹介した巨大資本の外資ではなく、日本企業のタッグというのも興味深いところです。
爆発的に利用者を伸ばしているグロース手法も参考にしたいものですが、私が聞いた最も興味深い話は、次のようなものでした。
「元SMAPの三人が出演した『72時間ホンネテレビ』、あれだけの視聴があったにも関わらずサーバーが落ちなかったということに、Web関係者だったら興味を持つべきです」。
この業界にいるならばただ楽しんで見る、話題を知るだけではいけないんだなぁ、とつくづく感じた瞬間でした。コンテンツとシステムの重要性こそが今後のポイントなのでしょう。
3位 Criteo(クリティオ)の株価暴落、業績悪化
非常に評価の高いリターゲティング広告が「Criteo」です。デジタルマーケティング専門の代理店からも、「Criteoは優れている」と太鼓判を押す声が聞かれていました
ところがそのCriteoの株価が、2017年の夏に大暴落。年末になっても業績悪化のニュースが続いていました。
リマーケティング広告を支える技術、cookieによるユーザーの追跡がブラウザのSafariで困難になってきた事が大きな要因です。
従来と同じ形でリターゲティングが効かなくなれば、単なるディスプレイ広告に飛車角落ちとなるわけですから、高い効果は見込めなくなります。
これはCriteoという一企業ではなく、アドテク全体にも大きな打撃を与えるものです。
また影響は広告配信だけに留まらず、解析でのデータ取得にも不都合は出ています。
デジタルマーケティングに携わる人間にとっては、ブラウザのプライバシーポリシーに関する仕様変更は、非常に大きな問題と捉えて良いでしょう。
2位 AIスピーカー
「Amazon Echo」「Google Home」といったAIスピーカーの名前を聞く機会が増えてきました。
音声で認識した内容を返す、具体的にはニュースを読んでくれたり家電製品の操作をしてくれたりといった、日常生活を快適に、そして大きく変えていくものです。
実際には「朝、『何時?』と聞くと返してくれるのが一番役に立つ」とか、「独り言を拾われてちょっと怖い」なんて笑い話的なことを聞きますが、今後の生活にますます大きく入ってくるのは間違いありません。
「IoT」という言葉は数年前からよく耳にしますが、それが具体的な形となり身近に入って来た象徴が、AIスピーカーと言えます。
1位 データドリブンの時代へ
マーケティングを専門に行っている人は、何十年も前から「それは科学的、論理的なものだ」と言っていました。
ところがこのマーケティング、個人の経験や感覚に頼ることの方が遥かに多いというのが現実でした。というのもまずは、データを集める方法が乏しいというのがありました。集まったデータを蓄積するにしても、膨大なコストがかかるという問題もありました。
よしんばそうしたデータを持てても、分析の時間とコストを考えると実務に取り入れられるものではありませんでした。
しかしインターネットの普及でデータ収集は容易になり、維持管理コストも安価になっています。
BIツールなども広く普及し、利用者も増えたため、分析のハードルも下がってきています。
そうした背景をもとに、マーケティングの施策やさまざまな決定を「データに基づいて行う」ということが一般化してきました。
ようやくマーケティングが真の意味で「科学的、論理的なもの」になった時代と言えるでしょう。
まとめ
2017年の重大ニュースのポイントは「チャットボット(=AI)」「AIスピーカー(=AI+IoT)」と、近年話題になっていた技術が身近な実用的なものになって来たというのが挙げられます。VRやARもこの流れに加えて良いでしょう。
今後はこの中で、どの分野が大きく飛び抜けていくかが注目と言えます。
また1位になったデータドリブンへの取組みは、ビジネスにおいては非常に重要です。今成果を上げている企業は、これにしっかり取り組んでいる傾向があります。
具体的なツールとしてデータを蓄積するDMP、またユーザーへ働きかけていくマーケティングオートメーション(MA)などをどれだけ活用できるかで、成否が大きく分かれていくでしょう。