Web接客ツール KARTEとMAツールの関係について
「接客ツール」という言葉は、このブログを読んでいるほとんどの方が見聞きしたことがあるでしょう。
その中でもっとも有名なツールが、「KARTE」だと思います。接客ツールの代表ともいえるKARTEついて、マーケティングオートメーションツールとの比較も加え紹介していきましょう。
KARTEの概要
デジタルマーケティング分野以外の人に、「KARTEとは何ですか?」と聞かれた場合、「接客ツールです」と答えると何となくわかってくれます。ですのでこうした説明は非常にしやすいのですが、以前KARTE側の人に聞いたところ「接客ツールとは呼んでほしくない。CX(顧客体験)プラットフォームです」といわれました。事実、KARTEのWebサイトではCXプラットフォームと記載されています。
まずは概念的な話をすると、KARTEは「オンライン上でも、リアル店舗のような接客が実現できるようにしたい」というのがスタートとなっているようです。リアル店舗のような接客とはそのユーザーが今なにを望み、どんな対応をしてもらいたいかを考えて即座に行動する、といったことです。昔のWebサイトは静的なページが中心、動的な要素が加わっても検索をするなどユーザー自らが操作をしなければいけないものでした。
しかしKARTEを使うことで、こうしたユーザーに合わせた対応がオンライン上でおこなえるようになります。
具体的な機能を記載しましょう。
- ポップアップ
- チャット
- コンテンツの出し分け
- アンケート
- ABテスト
- LINEやメール、メッセンジャー等によるプッシュ
- ユーザー一人ひとりのサイト内行動の可視化
細かくわけると他にもいろいろありますが、主だったものはこんなところです。ポイントとなるのはこれらを「ユーザーの行動や気持ちに合わせて出していく」ということです。
KARTEが接客ツールではなくCXプラットフォームだというのは、各機能ではなくユーザー行動に合わせていくことを重視しているからといえます。
接客する
Webサイト上で、チャットやポップアップを見かける機会は多いでしょう。KARTEはこれらをユーザーに適したタイミングに合わせて出しています。
たとえばチャットについて、Webサイトを訪れてあらかじめ表示されていたり、ユーザー自らが必要に応じて立ち上げるというタイプがあります。KARTEの場合はユーザーが何か質問したいと考えたタイミングでチャットが表示されます。とはいえ、ユーザーの考えを読解術のようなもので読み取って立ち上がるわけではありません(それは凄いことですが、ちょっと怖いテクノロジーですね)。
「このページの滞在が20秒以上あるようだったら、そのユーザーは何か迷っているのではないか」と仮定して、20秒経過のタイミングでチャットが表示されるようにするのです。ポップアップについても然りです。一定以上の時間が経過したのちにポップアップを出す、という設定をしておきます。「このページにこの時間滞在しているのだから、掲載商品に関心が高まってきているのだろう」と仮定して表示設定をするのです。
わかりやすいように時間の設定での出し分けを紹介しましたが、KARTEの真骨頂はそこではありません。
「どういった経路をたどってきたか」
「何回目の訪問か」
「ページのどの位置まで見ているか」
「アンケートでどんな回答をしているか」
これらのアクションにより、さまざまな出し分けをおこなっていけます。
この出し分けの起点となるのが、イベント計測です。ほとんどの方はGoogleアナリティクスやAdobeアナリティクスのイベントをご存知でしょう。KARTEは閲覧やコンバージョン、さらにユーザーの属性といったものまでイベントとして定義しています。GoogleアナリティクスやAdobeアナリティクスとは、やや異なる範囲となっているのでその点には慣れが必要です。
KARTEで自由度の高い接客をおこなうためには、このイベントでどういった情報を取得しているかがポイントになります。
たとえば「ページ内で見出しCが表示されたタイミングで、チャットを立ち上げる」ということがしたければ、見出しCの位置で値が記録されるようにイベントを設定しておく必要があります。
このイベントの設定はGoogleタグマネージャーを使ってもできますが、エンジニアリングの知識が多少ないと厳しいかもしれません。
またさまざまな出し分けのためのテンプレートが用意されていますが、既成のものだけでは足りずカスタマイズをすることも多くあります。そうした場合にもある程度HTML、CSS、JavaScriptの知識が必要になりますので、エンジニアなしできちんと運用するのは厳しいでしょう。
ユーザーを知る
前章で紹介したように、KARTEはイベントで記録されたユーザー行動をもとに自在な接客ができるツールです。ユーザー行動が記録されていますから、それを管理画面上で見ていくこともできます。
Googleアナリティクスでオーディエンスレポート内に「ユーザーエクスプローラー」という機能がありますが、あのビジュアル版というふうにイメージしておくといいでしょう。ユーザーエクスプローラーはテキストだけですが、KARTEのものはずっと見やすくなっています。
またKARTEでは、そのデータがリアルタイムで更新されていくというのもポイントです。KARTEの管理画面内でセグメントも作ることができますが、それを適用させてユーザーの動きを追うのにも便利です。
Googleアナリティクスはユーザー一人ひとりの行動を追う、という機能についてはユーザーエクスプローラーまでにとどめています(ヨーロッパなどでプライバシーに対する規制が強化されているので慎重にしているのではないか、という意見があります)。Adobeアナリティクスはユーザー行動を細かく追うという機能は今のところありません。
そのためログデータを抽出してBIツールで見るという方法が取られますが、準備に手間がかかりKARTEほどは見やすいデータにはなりませんので、これについても優位にあるといえるでしょう。
マーケティングオートメーションと比較して
接客ツールと近しく語られるものに、マーケティングオートメーション(MA)があります。MAとKARTEのような接客ツールとの違う点としていえるのは、MAが真価を発揮するのはリードを獲得してからということです。資料のダウンロードなどでユーザーの情報を得て、それに対してメール配信などでナーチャリングをしていく、というところにMAの強みがあります。その過程で必要になるスコアリングもMAの代表的な機能です。
またKARTEはBtoC、MAはBtoBで力を発揮するというところも違います。リードを獲得してそれを見込み客にまで育てていくといった長めのスパンでのマーケティングは、どちらかといえばMAが得意とするところです。
大きく括るとKARTEは匿名時点、MAはユーザーの情報(連絡先)を得てからのツール、といったイメージでしょうか。
しかし昨今はこうした括りも、一概にはいえなくなってきています。
実際のところKARTEもユーザーの情報を得てからの接客の仕方が選べます。MAの代表格はMarketoやPardot、データ基盤とセットということではb→dashなどですが、Marketoは他のツールとの連携、b→dashはホールインワンとして全般的な機能を揃えていますので、実のところ接客ツールの領域にも入ってきます。
HubSpotはMAという言葉と同時期に注目されたツールなので、MAツールとして認識されることが今も多くあります。しかしKARTEが接客ツールという狭い意味でのカテゴライズをされたくないように、HubSpotもまたMAという呼び方はしません。実際のところリードを獲得して育てていく、スコアリングをするといった機能はHubSpotのごく一部の機能であって、そこだけにフォーカスすると見誤ってしまいます。
HubSpotも標準的にユーザー行動に基づくコンテンツの出し分けやチャット、そしてユーザー一人ひとりの行動を可視化することができます。さらにCRMやコンテンツ制作ができるCMS、SEOやABテストの機能も付いた、統合型のプラットフォームとなっています。用途に合わせてセールス、カスタマーサポート向けのプランもありますので、MAや接客ツールという狭い括りには到底おさまりません。
KARTEやb→dash、そしてHubSpotに見られるように「このツールは接客」「あのツールはMA」といったカテゴリ分けは現実にはなくなってきている、ボーダレスに多くの機能を所有するようになっているというのが昨今のマーケティングツールの動きです。
またそのツール単独で機能は持っていなくても、別のツールとの連携してカバーできるということも多くあります。
まとめ
最後に紹介したように、接客ツールやMAという言葉にとらわれずに、ツール選びは次のような視点でおこなうといいでしょう。
- 自社のビジネスに必要なマーケティング手法は何か(そのツールで実現できることと合うか)。
- 今後追加したり、必要になるのはどんなことか(連携も含め今後用途を広げていけそうか)。
つまりそのツールの機能+拡張(連携)のしやすさ、という視点で選ぶと失敗しにくいでしょう。サポートや学習コストが少なくてすむ、というのも大事なポイントです。
マーケティングも完全にデジタルの時代に入り、アイデアや企画力といったソフトパワーだけで乗り切るのは難しくなりました。今回紹介したKARTEのようなリアルタイムの出し分けは、こうしたツールなしには不可能だからです。
今も中小規模のビジネスであればWebサイトの制作、運営費だけでコストが消化されるというケースも目立ちます。しかしビジネスの成功、成長は美しいサイトだけでは実現できません。海外では中小規模のビジネスにこそマーケティング予算をさいている、という事例が多くあります。デジタルマーケティングの導入が不可欠になってきている昨今、制作や開発、マーケティングの各予算の振り分けについて、ビジネスを成長させる視点で考えていきたいものです。そういう意味ではKARTEのようなツールを有効活用する体制こそが重要なのかもしれません。