メールマーケティングの実務で押さえておきたい。成果を出すための取り組みとポイント
Eメールを使った施策、つまりメールマーケティングは今でも効果的です。そして一斉配信のメルマガではなく、ターゲティングメール(セグメントメール)がその中心になっています。
これらメールマーケティングの現在地と種類については、下記の記事にまとめています。
この記事ではそうした状況をもとに、より実務に近い内容として、メールマーケティングの効果測定と成果の高め方について解説していきます。
効果測定
メールマーケティングはWebサイト(アクセス解析)やデジタル広告(リスティング広告、ディスプレイ広告)とは異なる、特有の項目があります。それらの項目と、効果測定をおこなううえでのポイントをまとめました。
項目
メールマーケティングの効果測定は、下記の項目を見ていきます。
- コンバージョン率
- クリック率
- 開封率
- 到達率
- 解約率
(1)~(2)は通常のデジタル広告と同じです。コンバージョン率は何をゴール設定にするかで変わってきます。クリック率はメール内のURLがどのくらいクリックされたかです。一方で(4)~(5)は、メールならではの項目です。
「開封率」はメールが開かれたかどうかで、これについては割と認識されています。「到達率」は、配信数に対して実際にメールが相手に届いた割合です。これは配信エラーによりカウントされる(総配信数-エラー数)ので、到達とは逆の数値で計算して「エラー率」を出す場合もあります。到達率は一時的なエラーと継続的なエラーがあり、継続的なエラーが多い場合にはリストのクリーニングなども必要です。
「解約率」はメルマガの受信許諾を解除した割合です。「オプトアウト率」とも呼ばれます。メールマーケティングをより幅広く捉えるなら、これとは逆に最初の「登録率」も加えるといいでしょう。
効果測定のポイントとやり方
メルマガ内のクリック、そこから発生したコンバージョン率をアクセス解析ツールで計測する場合、Googleアナリティクスならリンク先のURLにUTMパラメーターを加えます。この対応は筆者が見る限り、多くのWebサイトでおこなわれています。
開封率を取得するためには、メルマガをHTMLにする必要があります。テキストメールだとサーバーへの通信が発生しないため、開封したという情報を取得できないからです。
HTMLメールは一般化しているので手法として問題ないはずですが、BtoBに限ってはまだテキストメールも多く使われています。メールに画像を利用したり凝ったものにする必要はない、という考えも多いからです。ただし、テキストメールに見えるものの作りはHTMLメール、という手法も多く使われています。開封率を意識して、こうした形態を取るのがいいでしょう。開封率はGoogleアナリティクスでもイベント設定をすることで取得できるようになりますが、全体の母数となる配信数やエラーが起こった数、解約率などを同時に出すことはできません。インポート機能を使ってGoogleアナリティクスにまとめるという手法もありますが、実際に多く使われるものではありません。メールの効果測定については専用のツール、メール配信(ターゲティングなども含む)と一体になったものを利用するのがいいでしょう。
成果を高めるためには
ここではメールマーケティングの成果を高めるためのポイントについて解説していきます。
基本
前章で書いたメールマーケティングの効果測定項目は、次の順番で起こります。
開封率→クリック率→コンバージョン率
※到達率と解約率は、並列にこのフローにのる種類のものではないため、ここでは含めていません。
つまり、まずはメールを開封してもらわないと話にならないわけです。開封の鍵となるのは、「件名」です。そのためメールの件名は、かなり熱心に考える必要があります。開封率を上げる件名の要素を、いくつかピックアップしてみましょう。
- 限定感、ユーザーのメリット、情報の鮮度、お得感などをアピールする。
- 数字を使い、具体性を持たせる。
- 《》などで訴求したい個所を強調する。
- ユーザーの受信環境での、実際の見え方を考える(アピールポイントは先に書く)。
こう書くと、インバウンドマーケティングに精通した方はお気づきと思いますが、SEOの「ページタイトル」の付け方と共通する点が多々あります。違いとしては、SEOの場合はキーワードを盛り込まないといけない点があげられます。メルマガの場合はこの制約がない分、表現の自由度はあがります。ただしSEOは検索順位を上位にできれば、ページタイトルの訴求よりもそちらがCTRに影響します(ただしトップ3に入れた場合です)。しかしメルマガには検索順位はないため、件名だけでシビアに開封するかどうかが判断されます。また無数のメールの中で埋もれず目に留めてもらわないといけない点など、SEOのページタイトルよりも力を入れる必要があります。
メルマガの開封率について、目安となる相場は10~20%程度とされています。ただしこれは全体的なもので、休眠客やずっとアクションがないユーザーの場合は1桁台に落ちることもあります。逆に優良顧客の場合だと、開封率は20%をさらに上回ることもままあるとされていますので、ターゲットごとの件名づくりも大きなポイントです。
件名だけでなく、送信元もユーザーが開封を決める重要な要素となります。信頼できる送信元となっていない場合、開封はおろかスパムメールとして処理されてしまい、以降の大きな損失につながりかねません。企業名、サービス名を入れるなどは信頼性を担保するうえで大切です。そこに担当者名を加えるかどうかなど、工夫をしていくといいでしょう。
開封されたからといって、必ずメルマガ内のリンクをクリックしてWebサイトにアクセスしてくれるわけではありません。メルマガ内のリンクのクリック率は1~3%程度とされていますので、開封したユーザーの半数以下しかクリックされない計算になります。
メールを開封してすぐの、文面でのつかみは大切です。つまりWebサイトでいうファーストビューの重要性は、メルマガにも存在します。ただしWebサイトは、スマートフォンでスクロールする動作が一般的になっているために、ファーストビューの重要度はやや下がってきています。その意味では、メルマガでのファーストビューの内容こそ引き続き工夫する必要があります。テキストメール(HTMLメールとして作っている場合も含む)の場合は、画像がなく文字や記号を使った装飾で関心を惹かなければならないため、そうしたテクニックやノウハウもためていく必要があります。
ここまでに紹介したのはすべてのメルマガに共通するポイントでした。次はBtoC、BtoBそれぞれで効果をあげる手法を紹介します。
BtoC
BtoC、特にECサイトのメールマーケティングとして注目を高めているのが、レコメンドです。「あなたにおすすめの商品は~」というやつですね。ECサイトの場合はカゴ落ちに対するリターゲティングメールも有効ですが、それは新しい購入機会の創出とはなりません。レコメンドをおこなうことで、新たに興味がある商品に出会うチャンスを持つことになります。
レコメンドのポイントは、精度です。「あなたにおすすめの商品は~」とされてまったく興味がないものだったら、購入しないことはもちろん、そのメルマガへの関心も失い以降は未開封、さらには配信停止にまでつながりかねません。その意味ではレコメンドエンジンの質は大切です。また豊富なデータを用いて、自身と他のユーザー行動を合わせたおすすめを提供できるようになっていることが望まれます。
BtoB
レコメンドによりさまざまな商品を紹介する、あるいはキャンペーンなど明確なお得情報を随時発信することができないBtoBのメールでは、よりその内容が大切になります。つまり、メルマガのコンテンツ品質です。それにターゲティング、タイミングという昨今のメルマガで重視される点を加えます。
具体的にはたとえばメーカーと小売業であれば、興味をひく事例も違います。メーカーはメーカー、小売は小売というふうに自分が所属する業界の事例を欲するはずだからです。メーカーの中でも製薬と精密機械、あるいは企業規模によっても関心は変わってきます。皆「自分ごと」できる情報を求めますし、その方が成果につながりやすいのは言うまでもありません。
事例やお客様の声といったものではなく、業界の最新情報を提供するといったコンテンツも有効です。
筆者が最近面白いと思ったのは、以前だとWebサイトで情報入力後にダウンロードできるといったレベルのレポートを、情報入力なしで直接届けてくれるようなメルマガがあることです。こうしたメルマガは、定期的にチェックすることになります(つまり開封率が上がります)。
もちろんこの企業がリード獲得に力を入れていないわけではありません。情報入力後にダウンロードできるホワイトペーパーとして、より価値が高いノウハウ集などが用意されています。また普段こうした最新情報の提供を受けているためエンゲージメント、ブランドイメージも高くなっているため、リード獲得だけでなくその後のナーチャリングにまで良い影響が出ると考えられます。
効果的な運用のために
件名やメールの出だし(ファーストビュー)など、この記事で紹介したポイントは以前からの取り組みと同じものだと考える方は多いでしょう。レコメンドの利用も、それほど目新しいものではありません。
実はメールマーケティングとしては、この記事で触れていない「インタラクティブメール」「動画メール」といった手法も注目されてきています。
ただし実際に多く取り入れられているかというと疑問です。また開封率などが高まったとしても、制作コストを合わせた費用対効果も高まるとは言いきれません。メルマガのメリットのひとつである、「低予算での運用」「費用対効果が高い」が損なわれる可能性もあります。
こうした理由から特に、BtoBのメールマーケティングでこれらを導入するのは、慎重になるでしょう。
一方でターゲティング(配信タイミングも含む)の精度はさらに高め、テストを繰り返し、成果を上げていくことが望まれます。
メールマーケティングでターゲティングの実施が広まってきたのは、テクノロジーの進歩によるものです。具体的にはマーケティングオートメーション(MA)の関与が大きいですが、それだけではうまくいきません。
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