入居率100%!あの老人ホームが取り組んだ集客方法は?事例を紹介
ますます高齢化が進む日本では、今後の高齢者数の増加を見込んで老人ホームが急速に増えています。経営を安定させるためには検討者へ向けた集客が重要です。そこで、入居を検討している方へのアプローチ方法、具体的な集客成功事例などをご紹介します。
老人ホームの定員数・入居率の現状について
昨今、急速な高齢者の増加に伴って、老人ホームも増え続けています。老人ホームの定員数や入居率は現在どのような状況になっているでしょうか。
増え続ける老人ホーム
老人ホームは、公的機関の施設である「特別養護老人ホーム」、「老人保健施設」、「グループホーム」などがあります。いっぽう、民間の施設には「有料老人ホーム」があります。有料老人ホームは「介護付き老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」に分かれています。本記事では民間施設について詳しく取り上げます。
「平成30年社会福祉施設等調査の概況」における施設数を見てみると、最も施設数が多いのが「有料老人ホーム」です。2018年10月現在で14,454施設あり、1年前と比較すると6.9%(929施設)増加しています。なお、この有料老人ホーム数の内訳は民間施設である「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類をまとめて算出した施設数です。
公的施設である「特別養護老人ホーム」は全国に7,891施設ありますが、その約95%は民間資本で運営されています。
厚生労働省 介護サービス施設・事業所調査の概況 P.3 2019年10月1日
特別養護老人ホームや老人保健施設は有料老人ホームに比べ、費用が安く抑えられるというメリットがありますが、要介護度が重度の方しか入所できないという制約があります。
これに対して、2011年に制度化され導入が始まった「サービス付き高齢者向け住宅」は、現在急速に増加しています。登録件数は2021年1月現在で 263,555(7,802棟)件となりました。
サービス付き高齢者向け住宅の登録状況(R3.1末時点) 厚生労働省 2021年1月
要因の1つには、2000年より始まった「介護保険制度」によって、それまで公的機関がおこなってきた介護サービスの提供が民間企業にもできるようになり、高齢者の増加をビジネスチャンスととらえた民間事業所が介護サービス多数参入してきたことが考えられます。
老人ホームの入居率・稼働率はほぼ9割
高齢者の増加に伴って老人ホームも増え続けています。多くの老人ホームでは、入居するまで順番を待たなければいけませんでした。特に、介護保険の施設である「特別養護老人ホーム」などは、入居まで何年も待つということも当たり前だった時期もありました。
この「特別養護老人ホーム」は、有料老人ホームに比べ料金が低く抑えられることと、終末期を施設で迎えることができる「看取りの介護」をおこなっている施設が多くあることから、介護の負担を軽減したい家族にとっては、ニーズの高い施設でした。
しかし、現在は法改正によって、要介護3以上の高齢者でなければ入居ができなくなっており、施設によっては入居率や稼働率が100%を下回っている施設が多く見られるのが現状です。
それに対して、有料老人ホームをはじめとする民間施設では、要介護度による入居制限が、特別養護老人ホームに比べ緩やかであることと、施設によっては、重度の認知症高齢者を受け入れていたり、終末期の介護にも対応できる施設もあります。特別養護老人ホームに比べると料金は高めになりますが、施設数も多いことから、ほぼ9割近くの入居率・稼働率を維持しています。
この稼働率・入居率に関しては、人口が密集する都市部では高くなる傾向があり、人口や高齢者数が減少している地方都市などでは、低い稼働率・入居率であるようです。
老人ホームという施設を経営し、安定した運営を続けるためには、空き室を作るロスを生まないよう、常時稼働率100%を目指すことが大事です。
集客に成功した老人ホームの事例を紹介
2020年には人口に占める高齢者が3人に1人となった日本です。今後はさらに高齢者の数は増えていくと予想されています。そのため、高齢者を対象とした老人ホームや介護施設、介護サービスの需要が高まり、民間の大手企業の参入も増えています。
競争が激化していくにつれ、今まで介護の業界には見られなかった「集客」が大きな課題となってきています。
そこで、高齢者やそのご家族などのターゲットに集客できるアイデアや、実際に集客に成功した具体的な事例をご紹介します。
株式会社さわやか倶楽部
福岡県北九州市を中心に、老人ホーム、有料老人ホーム、介護施設を全国展開している「さわやか倶楽部」は、ピーク時には98%という高い入居率を誇ります。
一般的な老人ホームというと、入居後したあとは、食事の世話から身の回りのことまでスタッフ任せで、至れり尽くせりのイメージがあるかもしれません。しかし、ここでの高い入居率を支えているのは、入居している高齢者にいかに生きがいを持って日々生活してもらえるか、その取り組みを施設全体で行っていることにあります。
一日の始まりには体操を行い、施設内での機能訓練を行う時間もあります。また、地域の児童や園児に昔の遊びを教えるなど、地域社会への参加も積極的に行っています。訪問販売を利用し、日用品や嗜好品を購入することもできます。
その他、スタッフへの朝礼や施設の改善提案などにも入居者が積極的に参加しています。見学者来所時の案内も入居者が自ら行っています。施設にいても必ず毎日何かのイベントがあり、日々生きがいを持って暮らしていけるような試みを施設全体で行っていることが、高い顧客満足度をもたらし、入居率の高さにもつながっているといえるでしょう。
ナーシングホームあい
「ナーシングホームあい」は群馬県前橋市、高崎市、安中市、伊勢崎市にある有料老人ホームです。こちらの平均入居率も95.6%と高い数値です。
これほどの入居率を実現した重要なポイントの1つに、運営する地域の住民や各種機関の強いニーズである「医療依存度の高い方を受け入れる施設」があります。老人ホームとしては珍しく、スタッフの2人に1人が看護士の有資格者で、医療に手厚い独自の看護と介護を実施しています。
また、一般的な老人ホームでは受け入れが難しい医療依存度の高い高齢者でも対応できる体制を保っています。また。入居後に医療依存度が高くなったり、介護度が重度化したり、末期がん、ALS、喀痰吸引など、24時間医療処置が必要な高齢者であっても、他施設への転居させることなく、安心して生活できる体制を保持していることも強みでしょう。
また、このようなニーズに応える運営体制だけでなく、地域の医療機関、ケアマネジャーなどとの連携や情報交換を密に行うことで、問い合わせが多くあることも営業強化につながっています。
そんぽの家弁天町
大阪府のMPOケア株式会社が運営する「そんぽの家弁天町」は、介護職員が24時間365日施設に常在し、入居する高齢者が安心して安全に生活できる介護付き有料老人ホームです。
入居率が平均してほぼ100%という、大変高い入居率を維持しているポイントの1つに、介護職員の離職率の低さがあります。
「入居者の生活の充実は職員がいきいきと働く環境から」を施設長自らが課題として掲げ、まずは働きやすい環境を整えるために、現場で働いている介護職員の意見を徹底的に聞くところから始めました。それによって各職員を適材適所に配置したところ、それぞれの仕事にやりがいと責任を持たせることにつながりました。
また、これ以外にも日々介護職員の意見を取り入れ、改善できるべきことにはすぐに取り組むようにしています。このような取り組みと続けた結果、現場で働いている職員の満足度が向上し、39ヵ月間離職者ゼロを実現しました。離職者が減ったことによって介護の質も向上し、入居者の転倒や骨折、誤嚥性肺炎などによる入院者も減りました。
働きやすい環境への取り組みや離職率低下などが、職員のレベル向上にもつながり、現場での介護の質も向上したことが、ほぼ100%という高い入居率につながっています。
株式会社らいふ
野村総合研究所「高齢者向け住まい及び住まい事業者の運営実態に関する調査研究報告書」(2016年3月)によると、介護付き有料老人ホームの入居率は、全国平均では約87%でした。こういった数字が発表された中、1都3県を中心にして、有料老人ホームなどのサービスを展開しているのが「株式会社らいふ」です。
参照:野村総研 高齢者向け住まい及び住まい事業者の運営実態に関する調査研究報告書 2016年3月 P.47
らいふの有料老人ホームは、2017年7月の時点で、入居率99.9%を達成しました。2016年4月時点では、入居率は89.8%でした。約1年で10%も入居率を向上させることに成功しています。
この背景には、地域ごと、または同一路線ごとに施設を建築する戦略をとったことが挙げられます。
こうすることで、希望する施設に空きがない場合でも、近隣地区の施設に一旦入居していただき、当初希望していた施設の空きが出るまで待っていただくといった対応ができます。
また、海の近くの施設に入居を希望されている方であれば、希望している施設の近くに海が無くても、海の近くの施設に空きがあることを勧めるといった、入居者目線に立った融通も行っています。
施設内での生活も、地域の老人会に積極的に参加したり、施設内で地域の方に歌や踊りを披露してもらう場所として提供することで、地域の潜在的な入居者を紹介してもらったり、スタッフを紹介してもらうなどの働き掛けも行っています。
こういった入居者目線に立った経営戦略や、地域とのつながりを作り、潜在的な入居者の発掘を行うことが、高い入居率の維持に役立っているといえるでしょう。
まとめ
老人ホームを経営を安定的に持続するためには、高い稼働率と入居率が必須です。そのためには、入居者の満足度向上や地域への貢献、地域のニーズに即した介護サービスの提供、病院やケアマネージャーとの連携など、様々な取り組みが必要です。
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