2018年改正!医療広告ガイドラインで歯科が特に気を付けたい事まとめ
2018年5月に、医療広告に関するガイドラインが示され、翌6月に施行されました。
これにより、今まで広告とはみなされていなかったホームページが広告扱いを受けるようになり、今まで問題なかった文言が「法律違反」になってしまう事も!
そういった事が起きないように、歯科を中心に医療広告のガイドラインを解説いたします。
※ 2019年5月現在の「医療広告ガイドライン」「医療広告ガイドラインに関するQ&A」に乗っ取って執筆しています。
※ 厚生労働省発表の「医療広告ガイドライン」はこちらから、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」はこちらからご確認ください。
医療広告ガイドラインとは
医療に関する広告は、人の生命や健康に深くかかわってくることなので、医療法によって厳しい規制が課せられています。
そのため、正確な情報を提供するように、広告を適正に指導する指針として、厚生省による「医療広告ガイドライン」というルールが定められています。
2018年6月に大改正
2018年6月1日に、医療広告ガイドラインが新しく改正されました。
それにより、これまで規制対象からはずれていた、「医療機関のホームページ」も規制の対象となったのです。
きっかけとなったのは、美容クリニック関連のサイトなど。誇大広告も甚だしいページが多数あり、相談件数が増えていたようです。それに伴い今回の改正が行われました。
ホームページが「広告」扱いに
今まで規制の対象とされていたのは主に、テレビCM、チラシ、看板、バナー、リスティング広告といった、私たちが普段目にして「広告だ」と思われるものに限られていました。
バナーやリスティング広告ではない「ウェブサイト」は規制の対象外だったのです。
今回の改正でこのウェブサイトも規制対象となりました。
つまり、病院のホームページも「広告」であり、医療広告ガイドラインに従わなければならない対象となったのです。
医療広告ガイドラインの対象
医業、もしくは歯科医業に関わる病院、もしくは診療所(クリニック)の看板、CM、チラシ、リスティング広告、ホームページ、パンフレットなどが対象となっています。
ちなみに、歯科医院が提供する「ブログ」なども対象になります。
医療広告における関連法
医療広告ガイドラインは、医療法の広告規制に関連して提示されているものですが、そのほかにも薬機法(旧:薬事法)、そして景表法も関わってきます。
なので、これらを遵守したサイト作りをしなければいけないと頭にとどめておきましょう。
ガイドラインに違反した際のペナルティ
中止命令や是正命令
ガイドラインに違反するような広告が見つけられると、行政指導により広告の中止や内容の是正を求められることになります。
この行政指導に従わなかったり、違反を繰り返すなどの悪質と判断されると、中止や是正が「命令」されます。命令になると強制力が働きますので、処分の対象になってしまいます、ご注意を!
立ち入り検査などの行政指導
違反広告に対して、まずは任意の調査がなされます。その際に広告物や作成段階の案、契約書、診療録…その他、広告内容が正確であるかを確認するために、必要な書類の提出などを求められることもあるんです。
この調査に応じなかったり、提出書類に疑わしい所があると、なんと立ち入り検査の対象になってしまう事も…。書類の他、使用機器や施設の設備などの検査が行われます。
懲役や罰金が課せられることも
前の2つの項目で書いたような中止や是正、立ち入りなどの命令等に従わなかった場合、法に基づいて罰則が適用される事があります。
6ヶ月以下の懲役や、30万円以下の罰金、病院や診療所などの開設の許可の取り消し・閉鎖など、院としての運営ができなくなってしまう事もあるので、ガイドラインは必ず遵守しましょう。
歯科が広告審査で気を付けたいポイント
自由診療の治療の記載
自由診療で行う治療に関して、保険が適用されないという旨をしっかりと記載しなければなりません。
その治療にかかる金額も、一番安い料金を表示して〇〇円~と書くのではなく、標準的・平均的な値段をしっかりと記載するようにしましょう。
術前・術後の症例写真
治療前後を比較する写真…ひとむかし前のネット上の医療広告ではよく見られましたよね。こういった写真の比較はガイドラインに抵触する可能性が高いので、避けた方がいいでしょう。
このような画像は規制対象になります
また、症例の記載や、治療して歯がピッカピカな姿のイメージイラストも、回復を保証しているような印象を与えるため、「景品表示法」に違反しているとみなされ、行政処分の可能性があります。
ただ、のちほど説明する「限定解除」を受けた場合、治療内容や費用、リスク、副作用等について十分な説明がされていれば、掲載が許可される事もあります。
審美歯科、予防歯科等の記載
広告が許可されている診療科目は、「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「歯科口腔外科」のみとされています。なので「矯正専門歯科」などの表記があるとガイドラインに引っ掛かってしまいます。
しかし、こちらものちほど説明する「限定解除」を受けた場合は、掲載が可能になります。
「無痛治療」は誇大広告に
当然このような画像は掲載NG!
しっかりとした麻酔を使うので、痛みがない…と言いたくなりますが、全ての方に痛みがないことを約束できる治療はありません。なので、「無痛治療」「痛くない治療」という文言は「虚偽広告」「誇大広告」に該当する恐れがあります。
人によって感じ方が変わってくるので「痛みの少ない」といった表現も避けた方がよさそうです。
口コミ・メディア掲載・著名人来院の記載
患者さんの主観に基づく体験談…つまり口コミは、掲載するもの取捨選択ができてしまうため、規制の対象になってしまいます。
こういった表示もNG
テレビや雑誌などで取り上げられました!という掲載情報もガイドラインで禁止されています。
これは、メディア等が勝手に評価した結果なのに、掲載されていない医療機関よりも優れていますよ!と比較して優良に見せている広告の扱いになるからです。
著名人の来店情報なども上記ふたつに関わってくるため、掲載NGです。
医療広告規制の限定解除
限定解除とは
町中に貼ってあるポスターや、リスティング広告などとちがい、病院のホームページやパンフレットは、患者さんが自分から見つけて見に行く、入手しに行く情報と言えます。
こういった、「患者が求める情報」に関しては、条件のもとに広告可能事項の限定が解除されます。
自分の医院に置くパンフレットなどは限定解除の対象に
限定解除される要件
医療広告ガイドラインには、限定解除の要件として以下のような項目が記載されています。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
- 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
分かりやすく言いかえるならば
- 広告からの経由ではなく、自然検索などでアクセスしてくるウェブサイトであること
- 問い合わせ先・連絡先をきちっと書く
- 治療内容・かかる費用を明確に書く
- リスク・副作用をしっかり提示
…この4点を満たしていれば、限定解除を受けることができます。
限定解除されたら可能な表現
限定解除の要件を満たすと、次の表現が可能になります。医療広告ガイドラインQ&Aから、歯科医院に必要な項目を抜粋しました。
- ○外来、〇〇専門外来という表記
- 未承認医薬品・医療機器を用いた治療は、以下を明示することによって記載が可能になります
- 未承認であること
- 「個人輸入」など入手経路
- 国内の承認
- 医薬品の有無
- 安全性に関し、諸外国から得られる情報
- 医薬品・医療機器の販売名
- 治療効果学会が認定する研修施設であること
- 「認定医」「指定医」「専門医」などの表記
- 手術件数
- 「審美治療」「再生医療」「適応外使用」の表記
だいぶ表現や表示の幅が広がりますね。
まとめ
医療広告ガイドラインは、今後も解釈が変わったり改定されたりすることがあります。
そのため、すぐに対応できる体制を作っておくことが必要です。
こういったガイドラインに沿ったホームページ修正をしてくれるサービスもたくさんありますので、うまく利用して対応していきましょう。