経営者はマーケティングからどのような報告書を受け取れば良いのか?経営者が知っておきたい5つのKPI
現代社会においてマーケティングはますます高度化、複雑化の一途をたどっています。その一方で日本国内における企業の経営者は営業部門や技術部門出身者が多く、マーケティングはよくわからないというのが本音ではないでしょうか。
そのような多くの経営者が、マーケティングとの向き合い方に苦労しています。
マーケティング部門から報告書を受け取っては見たものの、意味がわからない数値が並んでいたり、会話をするとイベントが盛り上がったとか、広告で効果があったとか、定量化できない会話が飛び交っていたりします。
そんな時にマーケティングに知見のない経営者は「そうか、良かったね」としか言いようがないのかもしれません。
今回は、経営者がマーケティングと向き合う際にどのようなレポートが必要になるのかをご紹介します。
現代社会のマーケティングの実情
経営者の皆様は、マーケティングにどのような印象を持っていますでしょうか?
イベントを行う部門というイメージでしょうか?
広告や宣伝を行う部門でしょうか?
それとも広報でしょうか?
現場の第一線で活躍してきた経営者の方にとっては、マーケティングは浮世離れしていて金食い虫というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
確かに以前は、マーケティングは広報宣伝部が担っており広告やイベント運営、そして広報活動が主体でした。
しかし、現代社会においてマーケティング部門のあり方は大きく変わりつつあります。多くの企業ではマーケティングが売上に貢献する組織へとシフトしています。つまり営業的な要素が大きく求められる部門に変貌を遂げているのです。
例えばリードプラスの多くのお客様がマーケティングコントリビューションを気にしています。
マーケティングコントリビューションとは、マーケティングが貢献した売上の比率です。例えば売上が5,000万円ある企業でマーケティングから創出された売上が500万円であればマーケティングコントリビューションは10%ということになります。
あなたの会社の売上に対するマーケティングコントリビューションは何パーセントでしょうか?
これに即答できない場合には、以下を読み進めていただければと思います。
マーケティング現場で何が起きているのか?
残念ながら日本のマーケティング部門の多くが、施策を実施したらやりっぱなしの風潮が残っているようです。
毎年使える広告宣伝費用の中からイベントやセミナー、広告を実施しています。そして、多くの組織では、新製品のカタログを作りましたとか、イベントをやって何名きて盛り上がったとかで報告を終わらせてしまい具体的な効果(会社への貢献)が提示されません。
その一方で、一歩進んだ組織では、日々多くのデータ指標(KPI)を追っています。
Webサイトへの訪問数やコンバージョン率、チャネルごとのリード(見込み客)獲得数やブログ記事のシェア数などなどです。その数と種類の多さから時として最も重要な指標を見失ってしまうほど多くのKPIを追っているマーケティング担当者も散見されます。
経営者にとっては、「イベント盛り上がって良かったね」「そうかホームページの訪問数が上がったのか」となんとなく言いつつも、これらの報告では会社への貢献度がわからないですし、正直、何をしているのかわからずにいることが多いかもしれません。
一方、マーケティング現場では、何れの場合においても日々の施策で忙殺されているのです。正確にいうと「売上に貢献している活動」と「売上に貢献していない活動」の双方で頑張っているというのが実情です。
以下に経営者とマーケティングが同じ目標に向かうために必要な指標をいくつかご紹介します。この指標を定期的に受け取ることで経営者としてマーケティングが機能しているのかどうかを判断できるようになります。
経営者がおさえておきたいマーケティング指標(KPI)
マーケティングコントリビューション
マーケティングが売上に貢献した割合
これは獲得した新規顧客の売上の何パーセントがマーケティングから創出されたものなのかを把握するための指標です。Webサイトやイベントなどで集客し、ある一定基準に達したホットな見込み客(ホットリード)をマーケティングから営業に引き渡し、売上に貢献した場合にはマーケティング創出の売上とみなし、全体の売上におけるマーケティングの貢献度とするのです。
マーケティングが売上に貢献した割合はなぜ重要か
マーケティングコントリビューションを把握することで、マーケティングのリードジェネレーション(見込み客獲得)とナーチャリング(見込み客育成)の成果が新規顧客獲得に与える影響を把握できます。
営業に重点を置く会社ほど、この割合は低くなりマーケティングに重点を置く会社ほど割合が高くなります。
マーケティング部門はこの数値をゴールに設定することで、いくら使っていくら稼いだのかが把握できるようになり、効果の高い施策に集中できるようになります。
マーケティングが売上に貢献した割合の計算式
一定期間、新規顧客の全体売上からマーケティングによって作られたリードから創出された売上はどれくらいの割合かを引き出します。ビジネスモデルによっては売上ではなく顧客数で測る場合もあります。
計算式は以下になります。
マーケティングリードとしてスタートした新規顧客からの売上÷新規顧客売上=マーケティングコントリビューション
マーケティングが売上に貢献した割合の計算例
1ヵ月の新規顧客売上=1,000円
マーケティングリードとしてスタートした新規顧客売上=500円
マーケティングが売上に貢献した割合=500÷1,000×100=50%
CAC(顧客獲得費用)
CACとは?
CAC(カスタマーアクイジションコスト:Customer Acquisition Cost)とは、新規顧客を獲得するために営業とマーケティングが費やした費用です。
CACがなぜ重要なのか
CACは会社が新規顧客を獲得するために費やしているコストを表す指標です。
当然CACが低い方が望ましいのは言うまでもありません。新規顧客獲得費用をハッキリさせることで、新規顧客獲得に費用が掛かり過ぎているとか、改善の余地はないかなどを考えることができます。
CACの計算式
CACを算出するためには一定期間の営業とマーケティング費用の総額を取り、その期間の新規顧客数で割ります。
営業およびマーケティング費用とは人件費、営業経費、広告やイベント費用などのマーケティング費用などです。場合によっては人件費を含めない場合もあります。
期間の区切り方は1ヶ月、四半期、年間でこれらの数値を出すと良いでしょう。
計算式は以下になります。
営業マーケティング費用÷新規顧客数=CAC
CACの計算例
1ヶ月の営業とマーケティング費用=3,000,000円
1か月の新規顧客獲得数=10
CAC=3,000,000÷10=300,000円
これが顧客1社獲得するのに会社が費やした費用です。
CACに対するマーケティングの割合
CACに対するマーケティングの割合とは?
これはCACに占めるマーケティング費用の割合であり、CAC全体のパーセンテージとして表されます。
CACに対するマーケティングの割合はなぜ重要か
この指標を算出することで、マーケティング活動がどれくらいCACに影響するのかを理解できます。
たとえばこの指標が増大することは次のようなことを意味します。
- マーケティング費用が多すぎるか諸経費が多すぎるかもしれない
- マーケティングへの投資段階にあり、より質の高いリードを獲得し営業生産性を向上させるためのステージにいるかもしれない
- 営業チームのパフォーマンスが期待を下回り、営業インセンティブが低かったかもしれない
CACに対するマーケティングの割合の計算式
計算方法としてはまずマーケティング費用の総額を、CAC算出に使った営業とマーケティング費用の総額で割ります。
計算式は以下になります。
マーケティング費用÷営業マーケティング費用×100=M% - CAC
CACに対するマーケティングの割合の計算例
マーケティング費用=2,000,000円
営業とマーケティング費用=3,000,000円
M% - CAC=2,000,000÷3,000,000×100=67%
LTV:CAC (CACに対する顧客生涯価値の割合)
LTV:CACとは?
まず、LTVについて説明します。LTV(ライフ タイム バリュー: Life Time Value)とは、顧客生涯価値と言われます。
顧客が、取り引きを始めてから終わりまでの期間内にどれだけの利益を企業にもたらすのかを算出したものです。
LTV:CACとは、新規顧客獲得に費やす費用(CAC)と、顧客生涯価値(LTV)を予測するための指標です。
CACに対しそれに見合うLTVが無いとビジネスは破綻します。つまりはマーケティング施策の失敗を意味するので、この指標を計算することはとても大切です。
LTV:CACはなぜ重要か
LTV:CACが高ければ高いほど営業およびマーケティングは総収益により多くのROI(投資対効果)をもたらしていることを意味します。逆にLTV:CACが低い場合には成長がスピードダウンしていることを意味します。
LTV:CACの計算式
この指標を求めるにはLTV(顧客生涯価値)とCACを計算し双方の割合を出します。LTVは、生涯にわたる顧客あたりの平均収益です。
LTV:CACの計算例
LTV=4,600,000円
CAC=1,000,000円
LTV:CAC=4,600,000円:1,000,000円=4.6:1(1に対し4.6)
CAC回収期間
CAC回収期間とは?
CAC回収期間とは会社が新規顧客獲得に費やしたCACを回収するのにかかった期間(一般的には月数)を示す数値です。
CAC回収期間はなぜ重要か
CAC回収期間が短いほど損益分岐点が近いということなので、早期の段階で顧客から利益を確保することができます。
月額や年額料金でのビジネスモデルを展開している企業であればCAC回収期間は重要な指標となるでしょう。
CAC回収期間の計算式
まずCACを計算し、新規顧客に対する月ごとの平均的な収益で割ります。
計算式は以下になります。
CAC÷月ごとの収益=CAC回収期間(月)
CAC回収期間の計算例
収益(月)=30,000円
CAC=300,000円
CAC回収時間=300,000÷ 30,000=10か月
5つの指標でマーケティングへのより深い理解を
いかがでしたか?
全ての指標が自社に適しているとは限りませんが、経営者であればこれらの指標を経年で追うことが重要です。
この数値をもとにマーケティング部門と接することで経営者はマーケティングをより深く理解できるようになります。また、マーケティング部門は、この指標をよりよくするために考え努力するようになるのです。
マーケティングは、売上に貢献する部門へと大きく舵を切ろうとしています。
弊社のお客様でも数百万円の商材を扱うソフトウェア企業でありながらマーケティングコントリビューションが80%を超える企業もあります。
このような企業のマーケティング部門は無駄な作業を一切せずに質の高いリード獲得のみに集中している特徴があるのです。幸い弊社が提供するインバウンドマーケティングのサービスが最も効果が高いという評価をいただいており嬉しい限りです。
デジタル化時代のマーケティングはシステムが必須
上記で説明したような指標を的確に捕捉するためには、ITの力が必要不可欠です。特に複雑化・多様化するマーケティングの世界では手作業での集計は限界を超えています。
北米においては企業のIT投資額よりもマーケティングITの投資額が上回るという予測もされています。このことはマーケティング部門自体が稼ぐ組織になっているということに他なりません。
数年前はマーケティングというと広告やイベントの人たちだったかもしれません。現代は新規見込み客を創出して売上に貢献するのが当たり前なのです。
どの施策がどれくらい会社に貢献しているのか、つまり売上をあげているのかを測るためには、優れたマーケティングシステムと経営の理解が必要不可欠です。
もはや北米の企業においては売上に貢献していない施策は一切行わない、見える化できない施策も一切行わないという企業が当たり前です。このことはマーケティング部門の働き方改革にも繋がりますし、会社としては利益確保による成長へと繋がります。
ぜひHubSpotのような優れたマーケティングシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか?