検索キーワードから紐解く業界分析:会計事務所編
検索キーワードから紐解く業界分析シリーズ:会計事務所編
デジタルマーケティングにおけるテクノロジーの発展に伴い、サイトやユーザー分析の手法は日進月歩で進化しています。しかしながら、カスタマージャーニーやUI/UXがフォーカスされる一方で、業界や市場全体の動向を追跡するような「マクロ視点」のスキームは取りざたされることが少なくなっているのではないでしょうか。
「木を見て森を見ず」
と言われるような状況に陥らないよう、本シリーズでは様々なデータから「業界」や「市場」といった大枠のトレンドを分析し、戦略に落とし込んでいくための手法を紹介、解説していきます。
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企業の参謀として欠かせない士(サムライ)業。近年では新興企業の新規事業の立ち上げや株式上場に向けたガバナンス強化でも手腕を発揮し、スタートアップでは手薄だった「守り」の部分を固める役割として活躍の場を広げています。
今回は士業の中でも全国に26,733事務所存在※し、某大手コンビニチェーンの店舗数よりも多く存在している会計事務所にスポットを当て、マーケットインテリジェンスツール”SimilarWeb(シミラーウェブ)”を活用し、検索キーワードのデータを中心に業界の動向とWeb集客においておさえていくべきポイントを分析します。
※総務省・経済産業省「平成28年経済センサス‐活動調査結果」
- ■SimilarWebとは
「会計事務所」の推移
本題のキーワードに入る前に、まずは会計事務所の数がどのような推移を辿っているのか確認しておきましょう。総務省・経済産業省が発行している「経済センサス‐活動調査結果」によると、平成24年には24,583だった事務所数は、平成28年の調査で26,733と大幅な伸びとは言えないですが、着実に店舗数を増やしているようです。
さらにGoogleトレンドを使って「会計事務所」というキーワードの検索数トレンドを見てみると以下のような推移となっています。
年末年始にかけて需要が落ち込み、そこから確定申告などが入る2月、3月に向けてまた需要が伸びてくるような推移となっており、2年間の傾向としては大きな波があるわけではなく、堅調に推移している点が、店舗数および検索推移からも見て取れます。
ちなみに「確定申告」というキーワードの推移は以下を見てわかる通り、2・3月にしか需要が生まれていません。この推移からも分かる通り、季節需要の波をいかに的確に捉えるかが、本業界におけるWeb集客のポイントになりそうです。
それではここからより具体的に、検索キーワードを軸にして、会計事務所の業界にどのような市場ニーズが生まれているのかを分析してみましょう。
「会計事務所」というキーワードだけだと限定的な分析になってしまうので、まずは枠を「会計」に広げてみてみましょう。キーワードを分析する際に、最初の段階からミクロで入ってしまうと単焦点になってしまいがちです。
キーワードを分析する際にはまず森から入ってそこから木を見ていくという流れがオススメです。
「会計」ジャンルにおけるWebサイトトラフィックの推移
それでは幅を広げて「会計」という単語を含むキーワード全体で見たときに、どのような市場推移になっているのか、ここではSimilarWebの「キーワード分析機能」を用いて分析します。
SimilarWebのキーワード分析機能とは?
SimilarWebの持つWeb上の行動データを用いて、指定したキーワードに対して最も検索流入を得ているサイトを把握する機能です。さらに「キーワードグループ」という機能を活用することで、単一キーワードだけではなく「複数のキーワード全体で最も流入を得ているサイト」を把握することができます。
参考:https://support.similarweb.com/hc/ja/articles/115002612985
今回はこの機能を活用し、「会計」を含む関連キーワード全14,718件より検索数の多い上位5000キーワードを抽出し、「会計」を含むキーワードグループでアクセスを集めているサイトのトラフィックを元に市場の変化を見ていきます。
データは以下の通りとなりました。
先程取りあげた「確定申告」のキーワード需要に紐付くように、やはり2,3月のトラフィックが増えているのは業界の一つの特徴と言えます。
このように市場全体の推移を読み解くことで機会損失を防ぎ、然るべきタイミングで適切な投資をすることができます。会計業界に関しては特にこの2,3月のタイミングにあわせて下準備を進め、来る繁忙期にいかに費用対効果を最大化出来るかが鍵といえそうです。
会計業界に限らずですが、季節要因が密接に関係するビジネスではこのようにトレンドを意識してWeb集客の投資配分を決めることが非常に重要となってきます。ユーザーニーズを代弁している「検索キーワード」はそのトレンドを見るためにぜひ取り入れて頂きたい観点です。
さらに全体を俯瞰した後は、その中でもトラフィックを牽引している業界リーダーに着目してみましょう。以下は「会計」ジャンルにおいてトラフィックを集めている上位5社のサイトです。
特に上位3社を見てみると、「yayoi-kk.co.jp」「freee.co.jp」「moneyforward.com」と会計ソフトを取り扱うツールが上位を占めています。
このように業界リーダーを確認することで、その市場を牽引しているものがなにかが見えてきます。
ただしこれだけでは、「会計ソフト」自体の需要が伸びているのか、もしくは会計ソフトを取り扱っている会社のSEO対策が強力だからなのかはわかりません。
そこで次は「会計」にまつわるキーワードの中でも特に市場の需要が大きいキーワードが何なのかを紐解き、市場ニーズを分析していきましょう。
「会計」ジャンルのキーワード検索ボリューム
では「会計」にまつわるキーワードの中でもどのようなキーワードが検索シェアを集めているのか、具体的に紐解いていきましょう。
SimilarWebの「キーワード生成ツール」を活用することで、「会計」を含むキーワードを抽出し、検索ボリューム順に並び替えることが可能です。こちらの機能を用いて、「会計」を含むキーワードを検索ボリューム順に並べてみると上位20キーワードは以下の通りとなっています。
見ていただくと上位キーワードのジャンルは大きく3つに分かれていることが見て取れます。一つは「公認会計士」「会計士」「会計」などのビックワード、2つめは「税効果会計」「のれん 会計」など会計に関する知識を求めているワード、そして3つめは「弥生会計」「会計ソフト」といった会計ソフトに関するワードです。
その中でも「会計ソフト」にまつわるキーワードは上位20におけるキーワード検索ボリュームのうち34.7%を占めており、会計というジャンルの中でも特に需要があることがみてとれます。
これは裏を返せば会計事務所にとっても、ただ会計業務を行うのではなく、「どのソフトを使って会計業務が出来るのか?」という点が、会計事務所を選ぶ上でキーポイントになっている可能性があることを示しています。
ここに会計事務所がビジネスチャンスを掴むヒントがあるかもしれません。
そこで実際会計ソフトに関する需要は増えているのか?増えているとしたらどのソフトがシェアを伸ばしているのか。その点についてさらに深堀りしてみたいと思います。
「会計ソフト」のキーワードシェア
以下は「会計ソフト」というオーガニックキーワードでアクセスを集めている上位サイトにおける、トラフィックの推移データです。
※SimilarWeb-会計ソフト_オーガニックトラフィック上位サイト(2017年9月~2019年8月までの2年間データ)
上記の通り「会計ソフト」のキーワード市場全体も堅調な推移を見せており、2,3月に需要が伸びるという点は「会計」キーワード全体の流れとも合致しています。
さらにこの中でもどのサイトがトラフィックを集めているのか、合計トラフィックでランキングにしたのが以下のデータです。
サイトのタイプとしては、kakaku.comに代表されるような「比較検討サイト」と「会計ソフト会社のサイト」に分かれていることが見てとれます。
昨今のWebマーケティングではこのように、キーワード市場の中に「比較検討サイト」や「集客ポータルサイト」が含まれてるケースは少なくありません。
このようなサイトは多数の商品・サービスを紹介しているのでトラフィック量は多い傾向にありますが、会計事務所として知りたい情報としては「どのソフトを扱えるようにしておくとビジネスチャンスに繋がりやすいか?」という点ですから、このような比較サイトのトラフィックは、会計ソフト各社の推移を見る際にはノイズとなります。
データは適宜このようなノイズを弾いて、徐々に見るべきデータを絞っていきましょう。まさに森から木を見る。ということですね。
ここまで「会計」という大枠から「会計ソフト」の需要が伸びているのではという仮説を立て、傾向を分析してきました。では実際に会計ソフトとしてはどのサービスがシェアを伸ばしているのか?
ここまで来たら次はさらに絞って各サイトのアクセス推移を見ていきましょう。
「会計ソフト」各社のトラフィックシェア
ここまで見てきて、「会計」および「会計ソフト」というキーワードどちらで見ても、以下の3ドメインが上位に来ていることが見て取れました。
「yayoi-kk.co.jp」
「freee.co.jp」
「moneyforward.com」
そこで「会計ソフト」の中でもどのソフトがシェアをとっているのか、伸ばしているのかという点について、ここではキーワードを限定せず、SimilarWebのウェブサイト分析を活用して、上記ドメインのトラフィック推移について確認していきましょう。
上記の通りサイトのアクセス数では「freee.co.jp」が2社を引き離す結果となっています。
ただしここで1点注意点があります。サイトの構造によっては、全体のトラフィックだけ見ていても、その商品・サービス自体へのニーズが増えているのかがわからないケースがあるのです。
例えばオウンドメディアがドメイン配下に内包されている場合などは、あまり商材とは関係のないキーワードでトラフィックは集めているが、購入につながっていないケースなどがあります。
会計事務所としてはどの会計ソフトが「実際に一番つかわれているのか?」を知りたい所です。
そこで今回は、SimilarWebの「人気ページ機能(URL毎のアクセス割合を出すことの出来る機能)を使って、各社の「直近のログイン後TOPページに対するユニークユーザー数※」を出すことで、より実態に近いユーザーの割合を出しました。
以下がそのユニークユーザー割合です。
結果としてサイトのアクセスと同様freee社が54.8%を占める形となりました。
ここまでで、「会計」→「会計ソフト」→「会計ソフト各社のトラフィック」と絞り込んで見てきましたが、「会計」というキーワード市場の中では特に「yayoi-kk.co.jp」がトラフィックを集めているが、キーワード検索ボリュームで見ると「会計ソフト」にまつわるキーワードが多くを占め、その「会計ソフト」というジャンルの中では特に「freee.co.jp」がシェアを占めているということがわかりました。
ここから言えることとしては、会計にまつわるSEO集客という点では「yayoi-kk.co.jp」はベンチマークするべきサイトということでしょう。
実際にサイトを見てみても豊富な商品ラインナップもさることながら、事業者様に有益なコンテンツを多数用意していることが伺えます。
どのようなキーワードがビジネスに繋がりやすいのかという視点で「yayoi-kk.co.jp」をご覧になると気づきが得やすいのではないでしょうか。
一方市場としてニーズが高まっている「会計ソフト」というジャンルの中では「freee.co.jp」といったクラウド会計ソフトが台頭してきていることも見て取れました。
会計事務所の皆様は、会計業務を「どのソフトを使って行うことが出来るのか」という点もアピールポイントとして押さえることで、新たな市場ニーズを開拓出来る可能性があるのではないでしょうか。
まとめ
今回は「会計」という大きな切り口から最終的に「会計ソフト」の市場分析に至る流れとなりましたが、今回のように森から木を見るといった分析の流れは例え業界が変わったとしても、押さえておくべき重要な流れとなります。
リードプラス株式会社では、Webのトラフィック、キーワードなどのデータを様々なテクノロジーを活用し、広告運用代行のご提案を行っておりますのでお気軽にお問合せください。
※ユニークユーザー数比較は、クラウド会計サービス各社におけるログイン後トップページのページビュー(PV)数とログイン後トップページのUU数の比率が一致するとの仮定に基づき、かつ各社のログイン後トップページのPV数を基礎とした推定です。ログイン後トップページURLは以下をベースに調査しています。
- freee株式会社
- secure.freee.co.jp
- 株式会社マネーフォワード
- 2018年11月以降:biz.moneyforward.com/home
- 2018年10月以前:biz.moneyforward.com
- 弥生株式会社
- kaikei.yayoi-kk.co.jp/Home
- shinkoku.yayoi-kk.co.jp/Home
※本記事はマーケットインテリジェンスツール「SimilarWeb(シミラーウェブ)」のデータを多く引用しております。SimilarWebはパネルデータを基にした統計・推計のデータであることを理解しており、傾向やトレンドを探る目的で利用しています。本記事および記事内に含まれるデータ、見解は特定の第三者を評価するものではございません。