【 フラり対談 】株式会社島根銀行
このコーナーでは、弊社会長の小林がフラりと「トップランナー」であり「変革者」であり「インフルエンサー」でもあるゲストの方々を訪問させていただき、目指すことや苦労話等を気負わないトークで展開しています。是非ご一読ください。
デジタルのパワーで日本全国の顧客にリーチ
山陰ファンの想いを地域の活力に
1915年に創業され1世紀以上の長きにわたり、山陰地域の経済を支えてきた島根銀行。同行では2019年、SBIグループとの資本業務提携を締結し、以降、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを加速させ、2022年9月には新たなインターネットバンキングサービスとして「スマートフォン支店」の「しまホ!」を立ち上げました。そんな同行のDXを牽引するSBI未来共創プロジェクト推進室 スマートフォン支店 支店長 野中駿平氏、そしてこの立ち上げをサポートした総合企画グループ 副部長 高瀬 博隆氏にリードプラス 取締役会長の小林治郎が伺いました。
(SBI未来共創プロジェクト推進室 スマートフォン支店 支店長の野中駿平氏は、オンラインで参加)
サービス始動から半年で預金残高100億円を突破 ~
スマートフォン支店「しまホ!」で全国の山陰ファンの心をつかみ地域活性化につなげる
リードプラス会長 小林治郎(以下、小林):野中さん、高瀬さん、本日はお忙しいところ、対談にご対応いただきありがとうございます。
島根銀行 スマートフォン支店 支店長 野中駿平氏(以下、野中氏)、総合企画グループ 副部長 高瀬 博隆氏(以下、高瀬氏):こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。
小林:貴行のスマートフォン支店「しまホ!」が、かなり好調なようですね。「しまホ!」のブランディングをお手伝いしている立場としては非常に嬉しく感じています。
野中氏:おかげさまで「しまホ!」のお客さまは当行の予測を上回るペースで増え続けています。2022年9月の立ち上げから約半年間で預金残高が100億円を突破しました。これは上々の滑り出しと考えています。
小林:「しまホ!」のような、スマートフォンアプリを使ったインターネットバンキングサービスは他にも多くあります。その中で「しまホ!」が成功した要因はどこにあると見ていますか。
島根銀行
SBI未来共創プロジェクト推進室
スマートフォン支店 支店長
野中 駿平 氏
野中氏:「しまホ!」は「いつでもどこでも 手のひらに支店を」というコンセプトのもと、山陰地域の資産形成層の方々に加えて、日本各地におられる山陰にゆかりのある方、興味のある方に山陰ファンとなっていただき、それを地域の活性化につなげることを目指したサービスです。
その目的を達成するために、まずは多くの方々にサービスを使っていただくことを目指し、通帳レス・印鑑レスに加え、キャッシュカードレスなど、徹底的にコスト削減を図ることで、預金の金利を業界最高水準(円普通預金「年0.25%」)の提供を実現しました。加えて、セブン銀行ATMやローソン銀行ATMでの平日日中の入出金や「しまホ!口座」同士でのお金のやりとりの手数料もゼロ円にしてあります。
そうしたバンキングサービスとしての競争力の高さや、口座開設から振込、残高照会、明細確認、現金入出金に至るまでをスマートフォンで完結できる利便性、さらには、地域活性化に軸足を置いたコンセプトが、多くのお客さまの支持を集めたと見ています。
小林:バンキングサービスとしての「しまホ!」の競争力は、デジタル活用によってもたらされたものと考えてよろしいでしょうか。
野中氏:もちろんです。スマートフォン支店とは、要するに、物理的な支店を持たずに銀行のサービスを提供する仕組みを指します。実店舗を持つ必要がないゆえに、サービス運営のコストが安上がりとなり、そのコストメリットをお客さまに還元できるわけです。
島根銀行
総合企画グループ 副部長
高瀬 博隆 氏
高瀬氏:また、当行の企業体力では日本全国に物理的な支店を展開することは至難で、これまでも山陰地域外に支店を構えたことはほとんどありませんでした。それが、デジタルを使ったことで、日本のあらゆる地域に住むお客さまに支店の機能をお届けすることができています。それは当行のような「ピュアローカル」の地銀にとって大きな変革と言えます。
「しまホ!」ユーザーの約9割が山陰地域外の山陰ファン
小林:「しまホ!」の事業を、地域の活性化に具体的にどうつなげていく計画ですか。
野中氏:一つは「しまホ!」を通じてお客さまからお預かりしたお金を地域の活性化に有効に役立てることです。また、デジタルに強いSBIグループとのつながりやお付き合いが深い地元自治体・地元企業との関係性などの強みを掛け合わせたサービスを提供し、より多くの人に山陰の魅力をもっと知っていただき、山陰のものを購入したり、山陰を訪れたりしていただきたいと願っています。
小林:それはある意味で「しまホ!」を地元産業のプロモーション媒体として機能させるということですね。
野中氏:そう言えます。「しまホ!」のお客さまは、山陰ファンクラブの会員でもあります。そうした全国のファン層に向けて、山陰地域の魅力的な商品(製品、サービス)を提案してご購入、ご利用いただくことは、「しまホ!」の大きな使命の一つととらえています。
また、全国各地の山陰ファンの声に耳を傾けることで、山陰地域に住む私たちが見落としていた、あるいは気づけなかった地域の魅力に気づかされることが多くあります。そうした気づきも地域の商品づくりや活性化に生かしながら、地元の良いモノを山陰ファンに紹介するキュレーターとして「しまホ!」を機能させていくつもりです。
小林:「しまホ!」のお客さまの構成はいかがでしょうか。山陰地域外の人にも使ってもらう(あるいは、山陰ファンになってもらう)という狙いは達成できているのでしょうか。
野中氏:現状(預金残高100億円を突破した時点)における、お客さまの構成は「山陰2県(島根県・鳥取県)以外のお客さま」が約9 割で、このうち3割弱が「山陰にゆかりのある方」、残りの7 割強が「山陰に興味のある方」となっています。これは、当行が当初より目指してきたところに近い構成です。
加えて、お客さまの年齢構成についても、実店舗(リアル支店)の場合は高齢の方が最も多く、年代が若くなるに従って数が減っていく「逆ピラミッド構造」を成していましたが「しまホ!」のお客さまは20代からの各年代の方がバランス良く含まれています。
地銀の限界を打ち破るために
小林:ここで改めて「しまホ!」を始動させた貴行の戦略について確認させてください。このサービスは貴行の事業戦略上、どのような意味を持つものなのでしょうか。
高瀬氏:当行は山陰地域を地盤とする地銀ですので、地域に密着し、地域の産業、ないしは地域の中堅・中小企業を支える金融サービスを提供することが本来的な使命です。
とはいえ、山陰2県の総人口は120万人程度でしかありません。しかも、人口は減少傾向にあり、高齢化も進んでいます。その中で、当行のすべてのサービスを地域内で展開するのでは、事業の成長、発展は望めません。また、先ほど触れたとおり、リテール事業におけるお客さまの年齢構成も高齢化が顕著で、それは当行のサステナビリティを確保するという観点から言って、早急なる解決が必要とされる問題と言えます。
そこで、リテール事業については、デジタルを使って山陰地域外にも広くサービスを展開し、若い年代を中心にお客さまの絶対数を増やして金融機関としての資金調達の能力やサステナビリティを高めようと考えたわけです。その考えと地域貢献の想いを一体化させ、デジタルを活用して具現化させたサービスが「しまホ!」となります。
小林:貴行では2019年にSBIグループと資本業務提携しています。同グループとの提携・協業は「しまホ!」の競争力にどのようなプラスの効果があったのでしょうか。
高瀬氏:プラスの効果というよりも、SBIグループとの提携がなければ「しまホ!」は生まれなかったかもしれません。当行ではSBIグループとの資本提携を機に、同グループとの協業・共創を舵取りする「SBI未来共創プロジェクト推進室」を立ち上げ、東京にもその出先である「東京事務所」を設置しました。「しまホ!」は、この推進室が中心となってつくり上げたもので、開発にはSBIグループのリソースや技術が生かされています。
高く評価するマーケティングにおけるリードプラスの貢献
小林:ここで少し話題を変えて、デジタルマーケティングのお取り組みについてお聞かせください。貴社では、当社が提供するデジタル広告の最適化支援を「しまホ!」のブランディングに活用されています。「しまホ!」のブランディング、あるいはデジタル広告展開を支援するパートナーとして当社を選ばれた決め手は何だったのでしょうか。
野中氏:「しまホ!」のブランディングパートナーの選定に際しては、貴社を含む何社かにお声がけをさせていただきました。その中で、貴社の提案が最も優れていたことが採用の理由です。
小林:当社の提案のどの辺りをご評価いただいたのですか。
野中氏:まず、「しまホ!」のデジタル広告展開で当行が求めたのは、より多くのお客さまを獲得することです。その要求に対する貴社以外の各社の提案は一様に「予算÷獲得目標顧客数」で顧客の獲得単価を割り出し、それに基づいて展開する施策を決めているようなものでした。言い換えれば、彼らのいう施策によって本当にそれだけの数の顧客が獲得できるかの根拠を示さずに「顧客の獲得単価」を示し、予算の大枠を示すような短絡的な内容だったということです。
それに対して、リードプラスの提案は、顧客獲得のために必要なマーケティング施策をいくつかの戦略的なフェーズに分け、自社のWebサイトで顧客育成の施策を打ちながら、一方で「こういったデジタル広告をどのメディアに展開し、顧客の獲得につなげていく」といった論理的なものでした。その提案内容は誠実で好感が持てましたし、現実味も感じました。加えて、デジタルマーケティングに長じているSBIグループの識者らにも意見を求めましたが、彼らもリードプラスの提案が最も優れていると評価しました。結果として、貴社の採用を決めたわけです。
小林:当社の基本スタンスは、お客さまのビジネスに寄り添って、その成長を継続して支援し、成果にコミットするというものです。ですので、ご提案の段階でも根拠なく、無責任に「できます」とは絶対に言いませんし、お客さまの要望の中で、自分たちが不可能だと感じたことは正直に「できません」とお伝えしています。今回、その辺りの姿勢をご評価いただけたようで嬉しい限りです。
野中氏:おっしゃるように、私たちが貴社を最も評価している点は、長期的な視野で顧客の成功を支援しようとするスタンスです。
小林:そんな当社のサービスの効果はいかがでしょうか。
野中氏:先ほど「しまホ!」の始動から半年で預金残高100億円を突破したとお話ししましたが、当初設定した目標は40億円でした。また、他行の競合サービスの実績(初速)と比べた数値も「しまホ!」のほうが上です。それらを加味すれば「しまホ!」の滑り出しは非常に好調といえ、その好調さに貴社による支援が多分に貢献していると見ています。
実際、当行では以前より、それなりの好金利でインターネット定期預金のサービスを全国的に展開しているのですが、そのサービスは何もプロモーションを行わなかったことから、預金残高が100億円に到達するまでに5年半近くの期間を要しました。つまり、集客のパフォーマンス、あるいは実績を上げるスピードが「しまホ!」の10分の1程度だったということです。この差は、サービスの違いよって生まれたのかもしれませんが、有効なプロモーションの有無もかなり影響しているように感じます。
小林:そうした実績も含めて、当社のサービスにはご満足いただいていると考えてよろしいでしょうか。
野中氏:もちろん満足しています、これからも一定の緊張感をお互いに持ちながら、長くお付き合いいただきたいと考えています。また、貴社とのお付き合いで「しまホ!」のスタッフたちが得たデジタルマーケティングの実践ノウハウは、彼らが地元企業やその商品のマーケティングを手助けするうえでの糧(かて)になると確信しています。
小林:確かに、日本全国の生活者をターゲットにしたデジタルマーケティングのノウハウは間違いなく地域活性化の有効なツールになるはずです。当社でも、貴行とのお付き合いを通じて得たノウハウを、山陰地域の方々が抱く「この商品のすばらしさを全国の方々にもっと広く知って欲しい」といったニーズを充足するために活用したいと願っています。
いずれにせよ、野中さん、高瀬さん、本日はご多用ところ興味深い貴重なお話しをいただきありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
野中氏、高瀬氏:こちらこそ、よろしくお願いいたします。
※ 本ページの内容は2023年4月時点での情報をもとに制作しております。