【フラり対談】株式会社旺文社
このコーナーでは、「トップランナー」であり「変革者」であり「インフルエンサー」でもあるゲストの方々と、目指すことや苦労話などを気負わないトークで展開しています。今回のゲストは、90年以上の歴史を有する教育系の出版社、旺文社で新規事業開発に携わる小笠原 剛士氏です。デジタルマーケティングやビジネスのこれからについて、さまざまに意見を交わします。是非、ご一読ください。
Webマーケティング&Webプロモーションの強化で
次の成長・発展への土台を築く
旺文社については、ことさら詳しい説明は不要でしょう。本稿を読まれている多くの方が、小中高での日々の学習や受験のとき、あるいは英検(実用英語技能検定)の学習時に同社の参考書やドリルを使い、勉強に励んだ経験があるはずです。旺文社は創業90年超の歴史を持つ教育出版社です。出版事業と並行して、大学受験のラジオ講座や模擬試験も展開していました。2000年以降は、進学応援サイトや英語学習を支援するスマートフォンアプリなど、デジタルコンテンツやオンラインサービスの提供にも力を注いでいます。その旺文社の役員特命担当として経営企画と新規事業開発を担当する小笠原 剛士氏にリードプラス代表取締役社長の堀 裕が話を伺いました。
変わらぬ教育への思いが強さを生む
リードプラス社長 堀 裕(以下、堀):本日は対談にお付き合いいただき、ありがとうございます。早速、貴社についてお聞きしたいと思いますが、旺文社の事業については私を含めて非常に多くの日本人がすでに知っているはずです。そこでまずは、貴社ならではの強みについて確認させてください。教育出版社として、なぜ90年以上の長きにわたり確固たる地位を堅持し、日本の教育業界や青少年たちに広く受け入れられてきたのでしょうか。
リードプラス株式会社
代表取締役社長
堀 裕
旺文社 マネジメントサービス部 マネージャー 役員特命担当 小笠原 剛士氏(以下、小笠原氏):当社は、1931年(昭和31年)10月に山梨県出身の創業者 赤尾好夫(あかおよしお)が「地方と都市の進学格差をなくしたい」という信念から旺文社を創設し、日本初の「通信添削教育」をスタートさせたことが始まりです。同じ思いのもとで1952年(昭和27年)には「大学受験ラジオ講座」の放送を開始、1954年(昭和29年)には「大学入試模擬試験」をスタートさせ、成功を収めました。また、1957年(昭和32年)には、科学・アートや文芸の振興奨励と、青少年の個性の育成を目的として「全国学芸科学コンクール」(「全国学芸サイエンスコンクール」)を創設しました。小・中・高校生を対象に行われる当コンクールは、今年で第68回目を迎えます。創業30年を迎えた際、創業者の赤尾は「単に一出版社としてではなく、真剣に真面目に努力するものが、繁栄していく証拠のサンプルを世に示したいと思う」と述べていますが、こうした思いは今日も変わっていません。
株式会社旺文社
マネジメントサービス部 マネージャー 役員特命担当
小笠原 剛士氏
赤尾は、創業時に「夢高くして足地にあり 良書を供して英才を育て 文化を興して以て栄える」という社是を掲げました。これは「理想は高く掲げよう、しかし足はしっかりと大地を踏みしめていかなくてはならない。良い本を役立てて、優れた才能や知能を育て、文化を盛んにして、それによって栄える」という意味です。創業90年を迎えた2021年、先の社是に加えて、当社は「学ぶ人は、変えてゆく人だ。」この言葉をコーポレートスローガンに掲げました。全国の青少年の学びをしっかりと支援していきたいという思いが、私たちのあらゆる事業、活動の根底に流れているわけです。そうしたブレない姿勢が、当社の強みにつながっていると考えています。
2021年から新しく掲げたコーポレートスローガン「学ぶ人は、変えてゆく人だ。」
変化への速やかな対応で成果を上げる
堀:もう1つ、時代の変化やテクノロジーの変化、生活スタイルや学習スタイルの変化に柔軟に対応してきたことも、貴社の強みのように感じています。例えば、1954年当時にラジオを教育の媒体として活用するという発想は先進的ですし、2000年にはeラーニング講座「旺文社Pカレッジ」を開講、2001年には進学応援サイトの「旺文社 大学受験パスナビ」(以下、パスナビ)を開設されました。2012年にはパスナビのスマートフォン対応版を開設され、2014年には英単語学習用のスマートフォンアプリ「ターゲットの友」もローンチしています。こうした展開には相当のスピード感があります。
小笠原氏:ご評価いただきありがとうございます。おっしゃるとおり、当社は、世の中の変化に合わせるかたちで製品、サービスのあり方をさまざまに変え、また多様化させてきました。その取り組みも相応の成果を上げてきたといえます。
1931年の創業以来、「豆単」「旺文社模試」「ラジオ講座」、そして受験情報サイト「大学受験パスナビ」など、旺文社は常にその時代に画期的な商品やサービスを提供してきました。EdTechが注目される現在も、学習アプリ「ターゲットの友」や「英語の友」、受験情報サイト「大学受験パスナビ」、Webサービス「タンゴスタ」など、学ぶ人にとって最適となる新しい学びのかたちを提供し続けています。
アフターサービスの充実で顧客とより長く・強くつながる
堀:変化という点では、日本における少子化も教育業界にとっては乗り越えるべき重要な課題と考えます。この課題にどう対応していかれる計画ですか。
小笠原氏:確かに日本では18歳人口がどんどん減っていて、その流れに歯止めがかかる気配もありません。その一方で、大学への進学率は右肩上がりで推移しています。また、日本の行政府は、理系人材やデータサイエンティスト、修士・博士の育成に力を注ぎ、投資も行っています。加えて、英語のリスキリングのニーズも強まっています。そうした教育需要をとっていくことが、当社のこれからの発展・成長には欠かせないと見ています。
そんな中で、我々が取り組んでいる1つは、学習者の多様化に合わせた「Before Book(ビフォアブック)サービス」、つまりは「書籍を売る前のユーザーサービス」の拡充です。その一環として受験生向け参考書・勉強法の口コミサイト「StudiCo」を2019年にスタートさせ、そこから各種書籍の販売につなげるという戦略を推進しています。
また、「Before Book」と同時に、書籍を売ったのちの「After Book(アフターブック)サービス」の展開にも力を注いでいて、2014年リリースの「ターゲットの友」さらに、2023年には旺文社刊行の問題集に対応した採点や見直し学習をサポートするアプリ「学びの友」のサービスも開始しています。
このように当社の書籍の購入前と購入後のサービスを充実させ、両者をスムーズにつなぎながら、学習者の学びをしっかりとサポートしていくことを目指しています。
堀:それはつまり、顧客に対する貴社の姿勢が、書籍を販売して終わりというものから、書籍を売った後もより長く、かつ強くつながりを保とうとする姿勢へ変化しつつあるということですね。
小笠原氏:ええ、おっしゃるとおりです。
時代の波を感じつつ、しっかりと大地に足をつけ、読者の皆さまにとって良質なコンテンツや安心・信頼してご利用いただける商品とサービスをお届けできるよう、日々努力を重ねてまいりたいと思っております。
既存事業と新規事業の強化をともに推進
堀:読者とつながるという意味では、PCやスマートフォンに対応したパスナビ(旺文社大学受験パスナビ)などのメディアは、年間のUU(ユニークユーザー)の数が3,100万を突破しています。その意味で、オンラインメディアを通じた学習者たちとのつながりはかなり強いのではないかと感じています。しかも、貴社には膨大な数のコンテンツ資産があります。そうした資産とオンラインサービスの利用者データをうまく結び付ければ、学習者にとっても、貴社にとってもメリットがより大きいサービスを展開できるのではないかとも感じています。その辺りで何か新しい展開や新事業の構想があれば、お聞かせください。
小笠原氏:当社は現在、新事業の開発と既存事業の成長をともに推進するという方針をとっています。既存事業については、注力カテゴリーを「入試正解デジタル(=大学入試過去問題集の有料Webサービス)」をはじめ、英単語マスタープログラムの「タンゴスタ」、ロングセラーの「(大学入試)問題精講」シリーズなどに分けた上で、それぞれをインサイドセールスやパートナーとの協業、さらには貴社に専門家として関わっていただいているWebプロモーション、Webマーケティングを通じて発展・成長させていく取り組みを推し進めています。
新事業については現在、新規事業開発事務局を立ち上げて、社員全員が企画提案できる仕組みを作り推進しています。
堀:新事業や既存事業の拡大においては、例えば「生涯学習的な領域への進出」や「生成AIを使った革新的な教育テクノロジー(EdTech)の活用」「産学官連携の強化」といった施策も考えられます。また、それらの施策作りに対しても、当社がお手伝いできることは多くあります。その点についても是非、お考えをお聞かせください。
小笠原氏:いま堀さんがおっしゃったことは、すべて実現したいと考えています。また、その中にはすでに取り組みを始めているものもあります。
例えばEdTechについては、当社の関連企業でスタートアップ企業への出資を行うCVC(コーポレートベンチャーファンド)の運営会社、旺文社ベンチャーズが生成AIなどの革新テクノロジーを使った教育サービスの育成を手掛けています。
また、当社は現在、さまざまなオンラインサービス(パスナビ、学びの友、ターゲットの友、入試正解デジタルなど)を横断した会員ID「旺文社まなびID」を、サービス展開を支えるコアのビジネスプラットフォームに位置付けています。この会員IDを活用することで、学習者の生涯学習もうまくサポートしていけるのではないかと見ています。現状では児童・生徒・学生への教育についても成すべきことが多く残されています。当面はそちらへの対応を優先させなければならないとも考えています。
リードプラスの貢献にこれからも期待大
堀:最後に当社のサービスへの評価と期待について改めてお伺いしたいのですが。
小笠原氏:当社では従来、書店や出版取次会社(=出版物の卸売事業者)、さらには学校の先生たちに対する営業・マーケティングには熱心でしたが、一般生活者をターゲットにしたBtoCのWebプロモーション、Webマーケティングはほとんど行っていませんでした。そんな中で、貴社のサービスをあるセミナーで知り、その話に感銘を受けて声をかけさせていただきました。
堀:当社の話のどの辺りに感銘を受けたのでしょうか。
小笠原氏:貴社のサービスを活用すれば、多くのコストをかけずにマーケティング施策の効果検証がしっかりと行えるという点です。
そこに興味を持ちまして、オンラインメディア(パスナビ)のリスティング広告やディスプレイ広告からお付き合いを始めさせていただきました。その後も既存事業成長案件含めて、貴社とのお付き合いは現時点(2024年6月時点)でおよそ1年半になりますが、それを通じて感心させられたのは、私たちの要望・課題に対するリードプラスの真摯な対応です。その対応の真面目さには、冒頭にお話ししました青少年への学習の支援に真剣に向き合ってきた当社との相性の良さを感じていて、貴社ならばこれからも長く付き合っていけると考えています。実際、リードプラスは、施策のアイデアを出すだけではなく、施策によって相応の成果が上げられるまできちんと伴走してくれます。ゆえに、貴社との付き合いは今なお継続中で、担当者には頻度高く当社にお越しいただき、相談に乗ってもらっています。
堀:なるほど、貴社のお役に立てているようで何よりです。当社の活用はどのような効果を生んでいますか。
小笠原氏:貴社の支援を通じて、デジタルマーケティングに対するオンラインメディア担当者のスキルや意識が高められています。特にインターネット広告経由のデータをチェックできる貴社の「MyFolio」は、広告運用の改善の検討をスピーディーに行え、社内への報告についても実装されているレポート機能を活用できるので、担当スタッフの時間的な効率化が実現できました。その空いた時間で次の対策を検討することが可能となり、リソース面での課題解決にもつながっています。
2023年4月にリリースしたBtoC向けの有料サービス「入試正解デジタル」の販促に関しても、リードプラスさんには10月から1月までWeb広告を依頼しました。秋から冬は需要が増えるシーズンではありますが、広告の効果もあり当初の予想を超える売り上げを達成できました。その後もWeb広告の効果検証を含めて貴社には相談にのってもらっています。
当社は今後、旺文社まなびIDを持つサービスの会員数をどんどん増やしていく計画です。リードプラスには、そのための施策作りや会員データの有効活用を含めて、既存事業の強化と新事業開発の両面で引き続きお力添えいただきたいと願っています。
堀:そのように言っていただけると、当社としても嬉しい限りです。実際、当社には顧客データの活用について相応の知見と経験がありますので、旺文社まなびIDを通じて、どの顧客データをどのように蓄積していけば良いかなど、さまざまなアドバイスがご提供できると確信しています。それも含めて、貴社の既存事業や新事業の発展・成長に資する働きをしていきたいと考えます。本日は、対談にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。これからも引き続き、よろしくお願いいたします。
小笠原氏:こちらこそ、よろしくお願いします。
※本ページの内容は2024年6月時点での情報をもとに制作しております。