戦略のないWebサイト構築が失敗する10の理由
少し古いデータになりますが、中小企業庁が取りまとめた調査によると2012年時点での中小企業Webサイト開設率は80.4%、大企業に至っては95.6%と、この時点で既に高い水準に達していることがわかります。
出典:経済産業省ウェブサイト http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H25/PDF/0EHakusyo_part2_chap1_web.pdf
2014年頃から"インバウンドマーケティング"や“コンテンツマーケティング”が盛んに展開され始め、現在ではさらに多くの企業がWebサイトを開設し、マーケティングの一環として取り組んでいることでしょう。
しかし、こうした高いWebサイト開設率に対し「顧客数が大幅に増加した」と回答する企業はわずか3.7%という残念な結果もあります。この原因として、“戦略のないWebサイトを構築している”というのが最も大きいのではないかと思います。そのような企業のほぼ全てが既存サイトの焼き直しであったり単に会社紹介を行うだけのものである可能性があります。
マーケティングの一環としてWebサイトの構築をするのであれば、“戦略的構築”はとても重要なことです。今回は戦略のないWebサイト構築が失敗する理由と共に、Webサイトの正しい構築方法について解説してきます。
戦略なしのWebサイト構築が必ず失敗する理由
“構築して終わり”が多い
マーケティングの一環として行うWebサイト構築は、“構築するまで”よりも“構築してから”の方がはるかに重要です。
しかし戦略がないとデザインだけを今風にするなどWebサイト構築自体が目的化する傾向にあり、運用まで考えきれないケースが多いのです。
コンセプトが定まらない
“そのWebサイトは何のためにあるのか?”、“何を目的としているのか?”これが答えられないようなWebサイトを構築・運用しているのであれば、必ず失敗すると言っていいでしょう。
Webサイト構築においてコンセプト設計はすべての“基盤”にもなるものですので、明確に定めておく必要があります。
ターゲットが不明確
コンセプト設計に加え“誰に向けたWebサイトなのか?”という、ターゲットが明確になっていることも重要です。
Webサイトとは従来のマスメディア違い、ユーザーとインタラクティブなコミュニケーションを実現するためにあります。
従ってターゲットを明確に絞り、適切なコンテンツをしっかりと届けることが大切なのです。つまりペルソナを明確化しておく必要があります。
コストばかりが大きくなる
コンセプト、そしてターゲットという2つの戦略がないと、Webサイトの全体像がなかなか固定されません。
そうなると不要な機能や凝ったデザインばかりを盛り込んでしまい、コストばかりが肥大化します。
Webサイトとしてもごちゃごちゃして、“何を伝えたいの?”とユーザーに思われてしまうでしょう。
競合の“真似”になってしまう
競合の強みを参考に、戦略的な構築を行うのであればまだいいのですが、大体の場合は競合の“サル真似”になってしまいます。
実際に戦略のないWebサイトでは、競合をただ真似たようなデザイン・コンテンツが横行しているのが現状です。
本来の目的から逸れてしまう
Webサイトを構築する上で、それぞれがある程度の目的を持っているかと思います。
その目的に向けて戦略策定ができていないと、次第に目的から逸れてしまい期待していた効果を得られなくなってしまう可能性があるでしょう。
分析環境を整えられていない
Webサイトの効果検証を行うためにも分析環境は非常に重要なのですが、戦略などが明確になっていなければ必要なツールも不透明なままであり、いつまでも分析環境を整えられないまま終わってしまいます。
継続的な改善がない
Webサイトとは開設してすぐに効果が表れるようなものではなく、長期的運用と継続的改善が欠かせません。
こうした運用戦略も立てておかなければ、構築前に失敗したも同然と言えます。
制作会社に丸投げしがち
“良いWebサイトを構築する条件”の一つとして、クライアントが主体的に動くということが挙げられます。
しかし戦略がない場合、制作会社に丸投げしがちになり、失敗してしまうケースが少なくありません。
自社本位なコンテンツになってしまう
ユーザーが持つ課題やニーズを解消してこそ、Webサイトというのは初めて効果を持ち始めます。
逆に自社本位なコンテンツばかり作成・配信してしまうと、いつまで経っても運用効果を得ることができません。
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Webサイトの正しい構築方法
事前準備:課題と要望をまとめWebサイトを構築する意味を考える
まずは“なんとなく”でWebサイト構築に乗り出すのではなく、今ある課題とそれを解決するために何が必要かをまとめ、Webサイトを構築する“意味”を考えることがから始まります。
この時点で具体的な構想を持てると、その後のWebサイト構築及び運用に大きく左右していきます。
業者選定:複数社にRFPを提出し制作会社を比較・決定する
次に課題や要望とRFPとしてまとめ、複数社に提案・見積もりの提出依頼を行い、その中からWebサイト構築を依頼する制作会社を選んでいきましょう。
デザインのみならず自社の置かれている状況や戦略に対して、新しいWeb戦略を一緒に考えてくれる業者にお願いすると良いかもしれません。
戦略立案:現状分析を踏まえてWebサイトの戦略を立てる
この段階からパートナーも一緒になって戦略を立てていきますが、あくまでクライアント主体で動くことが重要です。もちろんMAを含めたWeb技術に関する専門的なことや技術的なことは制作会社に任せて構いませんが、しっかりと説明を聞き理解するようにしましょう。
設計開始:策定した戦略をもとにWebサイト設計を始める
Webサイトのデザイン、機能、コンテンツなどを設計していくわけですが、ここでもやはり“戦略”をもとにした設計が重要になります。
最近ではUX(ユーザエクスペリエンス)を意識した設計が重要と言われています。
制作開始:設計をもとにWebサイト制作を始める
いよいよWebサイト制作が開始されますが、都度制作会社とコミュニケーションを取り、進捗を把握しておきましょう。また、既存サイトの移行であればしっかりとした移行計画も必要になります。
また、設計外の要望などもあれば早めに伝えることが重要です。
検証作業:制作したWebサイトが正常に動作するかを検証する
各OSやWebブラウザ上で、Webサイトが正常に動作するかを検証していきます。スマートフォンを含めたレスポンシブデザインや、検証するOSやWebブラウザが多いほど時間のかかる作業です。また、タイトルやメタディスクリプションなど見た目ではわからない部分のチェックも重要です。既存サイトがある場合にはリダイレクトなど細かなチェックも忘れずにします。
体制整備:継続的な戦略展開のための運用体制を整える
前述したようにWebサイトで重要なので“構築してから”です。継続的なコンテンツ作成・配信を行っていくために運用体制が必要になります。また、Webサイトが成長していることを確認するためのレポートフォーマットも決めておくと良いでしょう。
ここは社内リソースとの兼ね合いを見て、適宜アウトソーシングすることで効率的に運用していくことも可能です。
保守運用:Webサイトのシステムに面における保守運用について考える
セキュリティ性や可用性を確保するためにも、保守運用はとても重要な項目です。この部分は制作会社に依頼することが多くなるかと思います。また、セキュリティ面を考慮して当初からHubSpotなどのCMSを用いることを決定することで安全性が増します。
カイゼン:継続的改善を実施することでWebサイトの価値を高める
Webサイトはデザイン面やコンテンツ面において、継続的な改善を加えていくことで初めて成果を上げていくことができるものです。
継続的改善を実施できる環境を整え、Webサイトの価値を徐々に高めていきましょう。
まとめ
Webサイト構築とは一般的に“制作完了するまで”と認識されていますが、“Webサイトで成果を出す”ということまで考えると、Webサイト構築にゴールはないのです。
どんなに成功しているメディアであっても浮き沈みはあり、常に上を目指して構築・運用しているものがほとんどです。
北米では今までのWebサイトのあり方の失敗からグロースドリブンデザインを取り入れる企業が増えています。今後コンテンツマーケティングなどを展開しようと考えている企業は、Webサイト構築を単純な制作と考えるのではなく、グロースドリブンデザインなどを取り入れた制作後の運用も含めて戦略的な考えで取り組んでいっていただければと思います。