アクセス解析で急激な変化が起きた時の原因特定7つのポイント

ビジネスとWebサイトが直結する現代社会においてWebサイトへのアクセスなどの急激な変化はよく起きる事象です。そして、残念なことに多くの企業においてその変化に気づかないまま数ヶ月が経過した後に、その変化に気づくなんていうこともしばしばおきています。例えばセッションだけを見ているような場合にはセッションは上昇トレンドなのに好調なWebページと下降トレンドのWebページが、それぞれ相殺されて気づかないなんていうことも起きるでしょう。その場合、下降トレンドのWebページかコンバージョンやビジネスに結びつくページであった場合には、ビジネスに悪影響を与えてしまいます。

つまり、日々、データを解析することが重要ということなのでしょう。私たちリードプラスもそうですが、日々お客様のデータを確認していると急激な変化(今回は特異点と言います)に見舞われることが多々あります。この特異点とはアクセスやコンバージョンが通常とは違う伸び方、あるいは落ち方をしている数値です。この特異点をできるだけ早く検知して、理解し、時には軌道修正することがWebサイトやビジネスの成長に不可欠なのです。

ただし、この特異点の見極めには思わぬ落し穴も存在します。今回の記事には特異点について紹介していきます。

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特異点

特異点:Webサイトの急激な変化の要因の種類について

よく見られる特異点について、7つをピックアップしてみます。

1. Googleランクの急変

検索ボリュームが多いキーワードでランクが取れだしたり、逆に下がったりすると自然検索からのセッションに大きく変動を与えます。上振れする分には問題ないのですが、下に振れてしまいアクセスもコンバージョンも激減するということはよくあることです。この変化に関してはもっとも気付きやすい特異点になるので一般的なアクセス解析を行っていれば容易に気づくことができます。常にキーワードのランクやセッションをチェックしながら記事やページのメンテナンスで対処することが重要です。

2.関係先からのアクセス(IPアドレスの除外設定のし忘れ)

IPアドレスにより社内アクセスの除外は多くの企業で実施できていることでしょう。実際に私たちが携わったWebサイトの多くで、社内からのアクセスにはIP制限がかけられていました。

ただし、その一方で関係先となると十分にできていないことが多くあります。

気をつけるべきは次のようなケースです。

  • 保守やサイトの改修等を多くしてもらっている外注先のIPアドレスが除外されていない
  • 以前から付き合いがある外注先のIPアドレスは除外しているが、新規の外注先の除外のし忘れ
  • 外注先の除外設定はしたが、その下請け企業の除外設定のし忘れ
  • 店舗や営業所が多くIP管理がしきれない

しっかりとしたWeb管理体制を組んでいる企業においてはこれらを全て管理していることが多いかもしれませんが、ここまで社内のWeb担当者の業務分掌をしっかりと規定しないことがほとんどですので外注先の変更の時には設定をする習慣をつけるべきでしょう。

少々余談になりますがテレワークが多く実践されるようになってきました。その場合には、社内IPアドレスを通らないケースも増えてくるのでセッションが上昇していてもコンバージョンが上がらないなどの事象が頻発しています。データ解析をする際にミスリードしないためにも解析のルールを決めておくことが重要になります。

2.施策・キャンペーンによるもの

何らかの施策により、その時期にアクセスが大きく伸びていることがあります。たとえばオンライン広告を集中的に出稿したなどというケースです。この場合はクリック誘導ですから、アクセス解析のデータがダイレクトに跳ね上がります。またアクセス解析上もデータとして残りますので、要因が特定しやすいといえます。

その他にスポットでテレビCMや新聞、中吊り広告などのオフライン広告を出したというケースがあります。ただし筆者が知る限り、こうした施策でアクセス解析のデータが目立って大きな変化を見せるという事は多くありません(もちろんそれなりには増加しますが)。

ただビジネスの内容によっては、オフラインでの販促が強く影響することがあります。たとえばO2Oで対象店舗がいくつもある、そこでの販促を多く実施したという場合には、数値が大きく跳ね上がります。このような状況を社内の情報共有をしっかりとすることが重要です。

3.サイトリニューアル

サイトをリニューアルしたからといって、アクセス数が増加するわけではありません。もちろんページ構成は変わらずにしっかりとリダイレクトした場合です。

しかし、アクセス解析を実施すると時に大きな変化が起きることがあります。これはページ単位でよく起きる事象です。

筆者も以前アクセスが激減したページの調査を依頼され、結果トップページを整理しすぎて誘導バナーが無くなったため、ということがありました。以前のWebサイトではトップページの目立つ位置にあったバナーやリンクが、リニューアルによって無くなったことが原因でした。

もちろんページのURLが変わったというケースもあります。目立つのは、申込みなどのコンバージョンに関わるようなフローです。実際に申込みをおこなってみて、そのURLをチェックしておかないと発見がしにくいので、気づきにくい場合があります。ビジネス上はとても重要な部分なので、ここがずれていると大きく影響が出ます。

4.シーズナリティ

そのビジネスやサイトに携わって1年経過すれば、季節的な要因は把握できます。年末年始やゴールデンウィークなどの長期休暇の際には多くのBtoB企業ではアクセスが落ち込みます。また、企業の予算どりの時期にはアクセスが上昇するなどもあるでしょう。その業界特有のシーズナリティというものや会社特有のシーズナリティも存在します。

視聴率が高いテレビ番組で取り上げられると、一気にアクセスの伸びが見られることも多々あります。またビジネスとは無関係な話題でアクセスがいっきに上がるというケースも少なくありません。筆者が以前携わったサイトでも、こうしたケースがありました。その企業とある著名人が関わるニュースが出て、瞬間的にアクセスが跳ね上がりました。

あるいはSNSなどで大きく盛り上がる限定イベントがおこなわれた場合にも、一時的に高いトラフィックが記録されます。

5.仕様変更

仕様変更には大きく二つのケースがあります。

自社の都合によるもの

一つ目はサイトオーナー自らが仕様変更をした場合です。

具体的にはサイトリニューアルと関わりますが、URLの変更などをおこなうことで特異な値として記録されることになります。またパラメーターの付与により、特異な値として記録されるケースがあります。A/Bテストでパラメーターを使い、異なるURLを発行するスプリットテストをおこなうことで、Googleアナリテイクスのページレポートは同じページを違うものとして記録します。

ページAが「ページA?aaaaa」「ページA?bbbbb」と分かれてしまうのです。

これを認識せずにアクセス解析をおこなっていると、「この時期にページAのアクセス数が激減している」「ページAからの誘導が行われなくなった」と誤認してしまうことになります。

解析ツールの仕様変更

仕様変更にはもう一つあります。それはGoogleアナリテイクス側、あるいはそこで記録されるブラウザやデバイスの技術的なものです。これは仕様変更に気づかないと原因を特定するのに四苦八苦します。

たとえばGoogleアナリテイクスの昔のセッションの定義には、「ブラウザを閉じた時」というものがありました。しかし現在は、「(ブラウザを閉じ、時間内であれば)参照元が変わった時」となっています。つまりブラウザを閉じても参照元を変えずすぐに再アクセスすれば、別のセッションとして記録することはないのです。

セッションは影響の大きな仕様変更なのでよく知られますが、小さなものはよく変更されています。

ブラウザやデバイスの仕様変更によるものもあります。AppleのITPによるcookieの取扱い、それによるユニークユーザー数の変化については有名です。(iPhoneユーザーが多いサイトでは、ユーザー数がこの実施時期を境に激増するケースが見られます)。

また、Googleアナリテイクスはデバイスカテゴリとしてスマートフォン、パソコン、タブレットを分けています。機種によってはタブレットがデバイスカテゴリのスマホに入ったり、パソコンに入ったりします。スマホがタブレットとして記録されるケースもあります。実際に筆者もあるサイトでタブレットの数の変化に驚いたことがありますが、それはこの仕様変更によるもので、実態には何も影響はしていませんでした。

6.スパム

スパムのトラフィックについては、完全には除外できません。そのサイトを狙い撃ちしている場合もあれば、無差別のものもあります。

スパムトラフィックは、次のような特色があります。

  • 直帰率が100%
  • 滞在時間がほぼなし
  • 特定のページのみにアクセスされている
  • 同一箇所からのアクセス(ネットワークドメインが同じ)

こう書くと見わけがつきやすいようですが、実際には内訳を見ていかないとここまでわかりませんので、やはり特定には時間を要します。厄介な問題ですが完全にブロックができませんので、特異点があればこうした可能性もあり得ると認識しておきましょう。

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特異点の見分け方と対策

明確な見分け方というのはありませんが、まずは大きな盛り上がりがあれば上にあげたような可能性もある、と考えるようにしましょう。単純に「この時期のトラフィックが上がっていました」「コンバージョンが取れていました」とはしないことです。

おそらくこうした特異点にふれれば、何かしらの違和感をおぼえるはずです。そこで内訳をドリルダウンして見ていきましょう。

長い期間であれば月単位で見ることが多いと思いますが、週単位、日単位と期間を変えていくことで異常が発生している日を特定し、その内訳を探っていきます。

もちろんこうした生産性の低い調査に時間を使う無駄を省くために、日ごろの対策も必要です。Googleアナリテイクスの管理画面には、メモ機能があります。ここに何かしらの出来事があった場合には、記録しておくようにするといいでしょう。

Googleアナリテイクス

ただこのメモ機能を使っても、すべてが解消しきれるものではありません。

筆者が出会ったケースでは、次のようなことがありました。

  • メモに記録する人、しない人があり一定していなかった
  • 細かく記載しすぎてあり、どれが関係するものなのかを掴みにくかった

このようにメモだけでは十分ではありませんが、無駄な議論を防ぎ、問題解決の一助にはなりますので活用するようにしましょう。

まとめ

実際のところこうした特異点に出会った場合、弊社が解決できたのは多くの場合では次の二つです。

  • 内訳を絞り込み詳細まで確認することで特定
  • サイトをよく知る、古くから携わっている人に確認

比較的多いのは、古くからの人に聞いたというケースです。ただその人自身もすべては把握しておらず、内訳を調べることで初めて判明した、ということもあります。

アクセス解析に限りませんが、「ドキュメントで履歴や内容をきちんと管理すること」「組織を整備して人に依らない体制をつくること」がもっとも大切なのかもしれません。

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