Salesforceにマーケティングデータをインポートする方法
組織には様々なデータが点在しています。そのデータを一つに集約し、分析可能な状態に加工した上でビジネスに有用な知見を見出すために活用することをビッグデータ解析といいます。特にマーケティング分野においては「One to Oneマーケティング」や「データドリブンマーケティング」など、データ分析を基礎としたマーケティング戦略やテクノロジーがトレンドになっています。
トレンドといっても単に流行っているわけではなく、実際にデータを活用したマーケティングで成功を収めている企業が多数存在します。
マーケティングに活用するデータとしてはリード(見込み客情報)や製品・サービス情報、既存顧客の情報など様々なものがあります。一般的にはDMP(データ・マネジメントプラットフォーム)ツールを利用するケースが多いようですが、Salesforceにマーケティングデータをインポートして活用するという選択肢もあります。
営業支援システムをクラウドとして提供する世界的ベンダーのSalesforceでは、取り込んだマーケティングデータを活用した施策を展開したり、リードをナーチャリング(育成)するなど様々な活用ができます。
今回はそんなSalesforceのマーケティングデータインポートの方法についてご紹介するので、Salesforceを導入している企業もそうでない企業もぜひ参考にしてください。
Salesforceデータインポートウィザードを使用する
Salesforceにマーケティングデータをインポートする方法として2つの選択肢があります。それがデータインポートウィザードを使用する方法とデータローダを使用する方法です。各ツールの特徴を以下にまとめます。
ツール |
サポート対象エディション |
インポート/エクスポートできるレコード数 |
対応する処理 |
追加情報 |
データインポート ウィザード |
Personal EditionおよびDatabase.com Editionを除くすべてのエディション |
最大50,000個 |
インポート |
組織の取引先 取引先責任者 リード ソリューション キャンペーンメンバー カスタムオブジェクト |
データローダ |
Enterprise Edition Unlimited Edition Performance Edition Database.com Edition |
5,000~500万個 |
インポート エクスポート |
Salesforce レコードの挿入、更新、削除、またはエクスポートに使用できる |
ここでは利用頻度の多いデータインポートウィザードの使用方法についてご紹介します。
事前準備として大切なのがインポートファイルを用意することです。Salesforceにおけるインポートファイルとは、データに指定された表示ラベルを適用したもので、これを用意することでスムーズにインポートを進められます。たとえば次の表のようにデータのラベルを指定することで、インポート時にデータを整理した形でSalesforceに取り込めます。
インポートファイルの表示ラベル |
Salesforce項目 |
アシスタント |
取引先責任者: [アシスタント] |
アシスタント電話 |
取引先責任者: [アシスタント電話] |
アシスタント内線番号 |
取引先責任者: [アシスタント電話] |
Birthdate |
取引先責任者: [誕生日] |
会社 FAX |
取引先責任者: Fax |
Fax の内線 |
取引先責任者: [Fax] |
会社電話 |
取引先責任者: [電話] |
内線 |
取引先責任者: [電話] |
取引先責任者 説明 |
取引先責任者: [説明] |
これ以外にも各データ項目によって表示ラベルが指定されているので、詳細を「その他のデータソースと組織データのインポートにおける項目の対応」で確認しつつ正しくインポートファイルを作成しましょう。
インポートファイルが準備できたらウィザードを開始していきます。設定からクイック検索ボックスに「データインポートウィザード」と入力して表示された項目からデータインポートウィザードを選択します。お知らせページに表示されている情報を確認し問題が無ければウィザードを起動するをクリックしましょう。
ちなみにホームページにあるツールリストや、管理者以外のユーザーは個人設定よりデータインポートウィザードを起動することもできます。
次にインポートするデータを選択します。取引先、取引先責任者、リード、ソリューション、個人取引先、または記事をインポートする場合は標準オブジェクトを選択します。作成したカスタムオブジェクトをインポートする場合はカスタムオブジェクトを選択しましょう。
その後Salesforceに新しいレコードを追加するか既存のレコードを更新するか、或いはレコードの追加と更新を同時に行うかを指定します。必要に応じて一致条件やその他の条件を指定しましょう。疑問符(?)の上にマウスポインターを移動すると各オプションに関する詳細情報が表示されます。
続いてインポートしたレコードが条件と一致した際のワークフロールールおよびプロセスをトリガするかどうかを指定します。データが含まれるファイルを指定するか、ページのアップロード領域にインポートファイルをドラッグしましょう。ここでファイルの文字コードの方法を選択しますが通常は変更しません。値の区切り文字としてカンマまたはタブを選択しましょう。ここまで完了したら次へをクリックします。
ウィザードによってインポートが開始すると、データ項目から標準Salesforceデータ項目への対応付けが可能な限り行われます。しかし、ウィザードによる対応付けができない場合は手動で行う必要があります。対応付けられなかった項目はインポートされません。なので事前準備としてインポートファイルの作成は正しく行ってください。対応付けられなかった項目を知るためには、対応付けられたデータ項目のリストをスキャンしましょう。
次に確認ページでインポート情報を確認し、対応付けられていないインポート対象の項目がまだ存在する場合は前へをクリックします。問題ない場合はインポートを開始をクリックしましょう。
インポート状況はデータインポートウィザードのホームページにある最近のインポートジョブグラフにて、データインポートの状況と総計値が表示されます。或いは設定からクイック検索ソックスに「一括データ読み込みジョブ」と入力して一括データ読み込みジョブを選択します。一括データ読み込みジョブへのアクセス権を持つのは管理者のみであり、Professional Editionでは使用できないので注意しましょう。
データの重複を避けることが重要
手順は以上ですが、システムにデータをインポートするときに重要なポイントがあります。それは重複を避けることです。上記の手順でも、インポートしたデータに関して新規で追加するか、既存のデータを更新するかという設定がありますが、可能であれば既存のデータを更新することをお勧めします。
たとえば、リードのインポートを考えてみましょう。A社のXさんという顧客がもともとSalesforceに登録され、営業担当者とのコミュニケーションの履歴が管理されていたとします。そこへオフラインのセミナーのリストをインポートした際にその人が含まれていたとします。もしこれが同一人物であることが認識され、もともとのSalesforceのデータが更新されてセミナーにも参加したという履歴が残れば、営業担当者はそれに気づくことができ、すぐにアクションを起こせるでしょう。しかし、別のデータとしてインポートしてしまうとXさんの別のデータができてしまい、営業担当者はXさんがセミナーに参加したことにも気づかないかもしれません。
また、ひとりの人の情報が複数のレコードの分かれてしまうため、Xさんとのコンタクトの履歴をきちんと時系列で追えなくなってしまい、CRM本来の価値が出なくなってしまいます。このような事態を避けるためには、インポートの際には既存のデータを更新するという選択をすることをお勧めします。
次に、この際に重要なるのが何をもって同一人物とみなすのかということです。リードのインポートでは、Salesforce ID、名前、メール、または外部 ID の種別を使って一致させることができます。よく利用されるのはメールなどですが、金融機関など一部の業種では個人のメールアドレスではなく、グループのアドレスを使用していたりする場合もあるので注意が必要です。
また、名前などはデータソースごとの表記ゆれがあり、システム的に同一と判別できずに別のレコードが作られてしまう場合もあります。これは完全に防ぐことはできないため、定期的にデータクレンジングと名寄せをしましょう。データのインポート元が増えるほどその必要性が出てきます。
まとめ
以上でSalesforceへのマーケティングデータインポートは完了です。50,000レコード以下のほとんどのデータはこの方法でインポートできます。ただ、単にデータを取り込んでSalesforceのレコードをやみくもに増やすのではなく、インポートデータを「きれいに」保つことによってSalesforceはCRMとしての力を発揮します。分散した活動結果を集約して、さらに効果的な施策を展開していきましょう。