【 フラり対談 】共同ピーアール株式会社

このコーナーでは、弊社会長の小林がフラりと「トップランナー」であり「変革者」であり「インフルエンサー」でもあるゲストの方々を訪問させていただき、目指すことや苦労話等を気負わないトークで展開しています。是非ご一読ください。

変革が進む PR 業界を駆け抜けるトップランナー - キーワードは業際化への対応と人材の意識変革

変革が進む PR 業界を駆け抜けるトップランナー
- キーワードは業際化への対応と人材の意識変革

共同ピーアール株式会社

「国内最大規模の総合 PR 会社である共同ピーアール(以下、共同 PR)。約 60 年にわたって日本の広報・PR 業界を牽引してきた同社、デジタル化が加速して PR 業界での業際化が進むなか、マーケティング領域への進出や事業の DX といった新たな取り組みにも注力されています。PR やマーケティングの市場動向と今後をどのように展望し、そこに対してどのような打ち手を考えているのか、同社 代表取締役社長の谷鉄也様(向かって写真右側)にリードプラス 取締役会長の小林治郎(写真左側)が伺いました。

デジタル化やインフルエンサー活用などにより、広報の枠を越える PR の概念の中で

リードプラス会長 小林治郎(以下、小林):共同 PR さんは、このコロナ禍でも事業を積極的に拡大されています。インフルエンサーマーケティングの VAZ を傘下に収められ、デジタルマーケティングを手掛ける当社とも資本業務提携をさせていただきました。それは PR 業界が今まさに変わりゆくさなかにあることの裏返しでもあるといえますが、現在 PR 業界がどのように変わり、その中で共同PR さんはどういう立ち位置でいらっしゃるのか、改めてご説明いただけますか。

共同ピーアール株式会社  代表取締役社長  谷  鉄也 氏
共同ピーアール株式会社 
代表取締役社長 
谷  鉄也 氏

共同ピーアール株式会社 代表取締役社長 谷鉄也氏(以下、谷 氏):当社は今年 60 期目に突入した長い歴史を持つ PR 会社で、創業者の大橋榮は日本に PRを広めた人間と言われています。2005 年に PR 会社として初めて上場し、これまで広報・PR 業務を中心に PR コンサル業務を営んできました。ただし今は PR 業界が変革期を迎え、広告業界との業際化が進んでいます。PR の概念が広報の枠を超えてマーケティング全般に関わってくるようになり、そこにインフラとしてデジタルの浸食が出てきているので、リードプラスさんとも業種の垣根を越えて関連性が深いステージに入ってきたと捉えています。

小林:私も同様に感じています。PR・マーケティング業界が大きく変わってきている中で、実際に共同 PR さんの顧客側で起きていることや、体感されていることはありますか?

谷 氏:このコロナ禍での3年間で、企業でのリモートワークや各種サービスのオンライン化が加速しました。その一方で在宅率が高まり、従来型メディアであるテレビの視聴者数や新聞購読率が一時的に増加するという現象も起きています。ただし、コロナが空けてくると人々の動きが元に戻り、屋外での活動やイベント、周囲とのリアルなコミュニケーションに人々の興味と時間が割かれるようになるため、一旦増えた既存メディアの占有率もまた減っていくことが想定されます。

 では従来型メディアから離れた人たちがどこに行くのかを考えると、今までであればリアルからデジタルへ移行するという文脈で捉えられてきましたが、そう単純な話ではなくなっています。

 コロナで多くの方々がオンラインで仕事をするようになって、コミュニケーションロスが生じ、「やはりリアルはいいよね」という揺り戻しが起きているのです。そこでこれからは、リアルとデジタルの融合がしっかりとした形で起きてくるのではないかと見ています。

小林:デジタルかリアルかではなく、ハイブリッドになるということですよね。実際にお客様から具体的なニーズが増えているのでしょうか?

谷 氏:
ニーズはあります。当社はお客様の約 30%が IT 企業ですが、ここしばらく IT 系のカンファレンスは開催されていませんでした。それがこのところ、昨年の今頃では考えられなかった大型のイベントが開催されるようになり、当社でも PR 案件を獲得する機会が増えてきている状況です。

 その際に運営の形としては、デジタルマーケティングを走らせながら、リアルなイベントを実施するという形のリアルとデジタルの掛け算型スタイルが増えてきています。実際に今お話をしているこの場所も、オンライン記者会見用に用意したスペースですからね。

代理店から事業会社へ。目指す先は PR ビジネスの究極的な形の実現

代理店から事業会社へ。目指す先は PR ビジネスの究極的な形の実現

小林:そういった大きな流れの中で、これまで老舗として地位を築かれてきた共同 PR さんや、谷社長ご自身が目指している姿とはどのようなものでしょうか?

谷 氏:先日まで、東京都とファッション業界主催の「東京クリエイティブサロン」というファッションとデザインの融合イベントが都内各所で開催されていて、銀座でもジャンポール・ゴルチエのファッションショーなどが開催されていました。このイベントには当社も携わっていて、私のFacebookにもその様子をアップしましたが、もう普通にイベントが催されて銀座の街が人で賑わうようになっています。

 私は銀座が世界一の街だと思っていて、2014年から個人的に「銀座街バル」という町おこし的なイベントを企画・運営しています。それを勝手に10年くらい続けていたら今回、逆に銀座の街からご縁をいただき東京クリエイティブサロンのお仕事に携わることができました。銀座のように、自分が信じる魅力的なコンテンツや地域、クライアントのサービスにほれ込んで、それをより広げていくことがPRの原点だと思っています。

小林:なるほど。

谷 氏:その際に従来型のPRだけではなく、デジタルマーケティングやインフルエンサーマーケティングなどをフル活用すれば、今まで届かなかった層にも訴求できるようになるはずです。今は断片的にPRや広告、マーケティング、イベント運営が行われるケースがほとんどですが、本来であれば事業会社がインテグレーションして提供していくべきなのです。そこが、私が目指しているPRビジネスの究極的な形ですね。だから我々もPR代理店ではなく、PR事業会社になっていかなければならないと認識しています。

小林:業界の老舗である共同PRさんがそのような考えをお持ちの中で、他のPR会社も同様な方向に進んでいるのでしょうか?

谷 氏:私もそうですが、PR業界の外から来た経営者は業際化を積極的に受け入れているという印象です。逆に元々広報業界にいた人は、仕事のスタイルが変わってしまうことを好まない場合が多いかもしれません。実際に当社でも従来型の広報の仕事だけをやりたいという人もいますから。

今ある土壌を生かしながら、変化するお客様のニーズに応えられる社員を育てる

小林:違う業界から来たからこそ見えることもたくさんありますからね。とはいえ、実際にお客様のニーズもどんどん変わっている中で、元々いる社員に対してどのように新しいスキル習得に向けた教育を施されているのでしょうか?

今ある土壌を生かしながら、変化するお客様のニーズに応えられる社員を育てる谷 氏:そこはとても大事なところです。どこを向いて仕事をするかに集約されると思うのですが、我々はまず契約していただくお客様を見なければならないし、社会も見なければなりません。

 その上で、結果も出す必要があるのですが、結果を出すためにはどのメディアに露出するとか、どういった仕掛けをするのがいいかということを、課題視点やコンテント視点で見ることが大事です。オーダーがないのに「メディアキャラバンをやりましょう!」「テレビに仕掛けませんか?」などとコストのかかる施策を提案することは、中には喜ばれるお客様もいらっしゃいますが、あまりいいやり方ではないですよね。本来は“何が問題なのか?”が出発点なので、そこを考えられる人を育てたいと考えています。

小林:求められる人材が変わっているという事ですね。コアなメディアリレーションズも共同PRさんの強みではあるけど、それだけでなくお客様や社会の課題をしっかりと理解した上で、それをどうサービスに生かせるかという人材が必要だと。そのような人材は外部からも入れていらっしゃるのでしょうか?

谷 氏:常に探してはいます。ただ、何も知らない人がゼロから学ぶより、何かしら社内で今までPRの仕事をしてきたメンバーが新しい知識を入れて変容していくという姿の方が、本来あるべき姿だと思っています。私や小林さんのような人間が外から入ってきて、化学反応を引き起こすことも必要ですが、会社には元々の土壌があるので、今いる人材を変えていく方が正しい形なのです。

PR-DXの実現へ「バックオフィス」「業務」「事業」の3段階で進める共同PRの取り組み

小林:人材確保の問題も重要ですが、その他にも冒頭でお話されていた通り、もうひとつの大きな流れとしてデジタル化・DXが挙げられます。共同PRさんはデジタルシフトやDXに対してはどのように向き合っているのでしょうか?

谷 氏:我々はDXを3段階に分けて考えています。まずは「バックオフィスのDX」、いわゆるITシステムの高度化です。次が、業務効率化を図る上での「業務のDX」です。この部分では現在、メディアデータベース(DB)とクライアントDBを整備しているところです。

 そして最後に、「事業のDX」があります。今はバックオフィスのDXが完成し、業務効率化のDXがある程度完成して、事業DXがスタートしたところですね。事業DXでは、メディア検索・リリース配信から掲載結果の確認・成果分析まで、広報・PR業務の入口から出口までの一元管理を可能とする「PR-FORCE(ピーアール-フォース)」というSaaS形のオリジナルPR商品をリリースしたところで、これから本格的に外販していきます。

小林:PR-FORCEについてもう少し教えていただけますか?

谷 氏:PR-FORCEは、当社が培ってきたメディアのデータベースを誰でも使えるという画期的なサービスです。月額30万円で、掲載されている7千件超のメディアリストを活用でき、SNSのモニタリング機能も備わり、WebやスマホでどのようにPR施策が普及していったのかを確認することもできます。今後も、さらにバージョンアップしていく予定です。

PR-DXの実現へ「バックオフィス」「業務」「事業」の3段階で進める共同PRの取り組み
PR-FORCEの機能概要

小林:それらがPRのDXという訳ですね?

谷 氏:そうですね。ただこれからのPR業界ではDXを進めることも大切ですが、やはり従来の広報ができて、SNSを中心としたデジタルマーケティングができる人材こそが必要になります。実際にそのような人材は業界内のみならず、引く手あまたの状態です。だから当社の社員もそうなりたいと思っているはずです。PRに関わる全てのスキルを自身で習得しようと取り組む姿勢がある人は飛躍的な成長をすることができると思います。

小林:引く手あまたというお言葉がありましたが、これから人材獲得競争が熾烈を極めると思われます。そこにはどのような手を打っていくのでしょうか?

谷 氏:外部の人材に対して、会社のムードや空気感を伝えることが大事だと思いますね。例えば当社では、採用マーケティングサービスの「Wantedly」を活用しているのですが、その中の「ミートアップ」という交流会のサービスを利用して、若手社員による広告業界の現状に対するトークセッションを定期的に開催しています。そうすると、現場の参加者やオンラインの聴衆に対して、すんなりと社風が伝わるのです。そこに私は出ませんが、銀座のケーキやチョコレートを差し入れてちょっとだけ支援をします。それによって、去年だけでWantedly経由で7人入社してくれました。ここでの採用コストは、ほとんどかかっていません。

小林:チョコレートで7人はすごいですね(笑)

谷 氏:会社のいい雰囲気を伝えることで、「この空気感の中で働きたい」という人が集まってきます。もちろんしのぎを削る、日々数字を求めるという部分もありますが、ベンチャー企業と比べると緩いですから。

小林:まさに老舗の安定感ですね。

谷 氏:その上で共同PRには、老舗が変わっていくような空気感もあります。そのような当社の雰囲気が伝わることを意識しつつ、ミートアップを活用して人材を集めています

小林:共同PRさんが人材を募集する際の売りは、事業の幅広さだと想像していましたが、社風だったのですね?

谷 氏:実績と社風はとても大事な要素です。実績という意味では、当社は有名な会社の仕事をさせていただいているので、ぶれないと思います。そこにプラスされる差別化要素が、社風なのです。老舗でありながら、デジタルの新しい事業にも取り組み、傘下にはキーウォーカーというデータソリューションの会社や、VAZという若いインフルエンサーを抱えている会社も擁しているので、トータルで見てもらえれば今まで接点がなかったような人たちにも当社の活動が届くでしょう。

小林:確かに、御社には普通の単なるPR会社とは違うワクワク感がありますね。社風という部分で言うと、この東銀座の新しいオフィスに引っ越してきたのはいつでしたか?

谷 氏:2021年6月ですね。移転に際しては、創業60周年に向けてリブランディングをしたいという思いもありました。オフィス移転とDXの取り組みが進み、あとはキャリアプランに関してこれからしっかりと制度設計をしていく段階ですが、すでに新入社員には「20年で社長になって欲しい」と話をしています。

PR-DXの実現へ「バックオフィス」「業務」「事業」の3段階で進める共同PRの取り組み2

共同PRとリードプラスのシナジーに期待

小林:谷社長にとっての銀座のイベントもそうですが、それぞれが共同PRという組織の一員として価値あるコンテンツやサービスを世の中に発信できて、それがうまくいく醍醐味を感じることができれば、社員は幸せになりますよね。

 私たちもマーケティングという仕事をしている際に、直接お客様と向き合ってプロモーションをして、お客様が成長していく過程でダイレクトにお手伝いができる事に一番のやり甲斐を覚えます。それに併せて当社の社員も成長できるので、とても素晴らしい仕事だと常々感じているところです。

 PRとマーケティングの垣根がなくなってきている中で、共同PRさんの事業やお客様の成長に対しても我々がご支援できることはどんどん増えるでしょうね。

谷 氏:PRとデジタルマーケティングは補完性が高いので、リードプラスさんとの協業で事業に伸びしろが生まれます。業際化によってPRとデジタルマーケティングの領域がシンクロしてくると、提案のスケールを大きくすることができます。

 地方の市場ではPRはもちろんのこと、マーケティングのDXもこれからですし、地域と都会には情報ギャップが存在しているので、そこをリードプラスさんと我々が組むことでどんどん繋いでいくことができそうです。その辺りも非常に楽しみな伸びしろの1つです。

小林:おっしゃる通りです。地方でもPRのデジタル化が進みつつありますが、市場としては都心も地方もデジタルメディアと既存のメディアが融合しながらどんどん大きくなっていくというのが正しい見方でしょうし、そういう意味からも共同PRさんはいい位置にいて、様々な準備もされています。そこに微力ながら、私たちもお手伝いをしていきたいと思っています。

谷 氏:私がこの会社に来てから、8年が経ちました。当時は大変な状況でしたが、おかげさまで売上、利益、財務内容は全て改善しました。

 ただそれよりも嬉しいのは、周りから会社が明るくなったと言われることです。そういうタイミングでリードプラスさんとお付き合いができるようになったのですが、8年前であれば絶対にできなかったでしょう。

 そのように様々な引き出しや選択肢が持てるようになった段階で、社員やお客様の成長に寄与するような仕事が一緒にできることを嬉しく思います。

 リードプラスさんのマーケティング×テクノロジーと、我々のPR×テクノロジーを組み合わせて、お互いアイデアを持ち寄りつつ「こんなことが実現できたら面白いね」と言いながら、大きなビジネスを創っていけるといいですね。

小林:全く同感です。本日はいいお話を伺う事ができました。ありがとうございます。

共同PRとリードプラスのシナジーに期待

※ 本ページの内容は2023年4月時点での情報をもとに制作しております。