フリーミアム事例【成功5選+失敗2選】運用のコツを学ぼう
現在国内外を問わず、Webサービスのビジネスモデルとして注目されているのがフリーミアムです。基本機能を無料で提供するというスタイルからユーザー母数を獲得し、一部を有料サービスへと誘導することで収益化してます。
特にスタートアップに好まれているビジネスモデルでもあり、恐らく多くの企業がフリーミアムでの新規事業展開を検討していることでしょう。
無料ユーザーのうち5%程度が有料サービスを利用すれば“成功”とも言われており、数字だけ見ればさして難しいビジネスモデルではないように感じます。
では実際に、フリーミアムで事業展開している企業はどのようにして成功しているのか?
今回はフリーミアムのビジネスモデルを採用している企業のうち、成功事例を失敗事例を合わせて紹介していきますので、今後の事業展開の参考にしてみてください。
フリーミアムとは何か
軽くフリーミアムについておさらいしておくと、ビジネスモデルとしては1980年代に既に確立されています。当時はソフトウェアの界隈において、機能制限・使用期限などを限定して無料で提供することで販売促進が行われていました。
まだインターネットが普及する前の時代でもあったので、フロッピーディスクやCD-ROMを雑誌付録や店頭配布で提供するといった形が主流でした。インターネットの普及につれダウンロード版での提供が始まり、2006年にベンチャー投資家であるフレッド・ウィルソンにより提唱され始めたのが現代のフリーミアムです。
ちなみにフリーミアムという言葉は「Free:フリー」と「Premium:プレミアム」を掛け合わせた造語であり、フレッド・ウィルソンのポートフォリオ企業の一つであるAlacra社のジャリド・ルーキンにより発案されました。
後に現3D Robotic社のCEOクリス・アンダーソンの著書である「Free: The Future of a Radical Price(フリー<無料>からお金を生みだす新戦略)」で取り上げられ、現代ビジネスモデルの新戦略として広く浸透したのです。
フリーミアム5つの成功事例
Dropbox
2008年にリリースされて以来オンラインストレージサービスとして業界を牽引しているDropboxは、フリーミアムで成功した代表的な事例の一つです。
リリース当時からフリーミアムとしてサービスを提供していたDropboxですが、ユーザー獲得にはリスティング広告を採用していました。しかし、有料サービスを利用するユーザー比率に対しあまりに多くの広告費がかかっていたため後の方針を転換。既存ユーザーに対し「友人を紹介してくれたらストレージを増設しますよ」というキャンペーンを展開しました。
この施策が功を奏しユーザーが爆発的に増加し、2016年現在においてはユーザー数が5億人に達しています。新規ユーザーのうち44%が既存ユーザーからの紹介であり「紹介キャンペーン」の破壊力が伺えますね。
これに感化され多くのオンラインストレージサービスで「紹介キャンペーン」が採用されるようになりました。
Evernote
ノートやメモを取るような感覚でオンラインストレージを利用できるサービスであるEvernoteは、純粋な「製品力」でフリーミアムを成功させています。同社のエグゼクティブ・チェアマンであるフィル・リービン(元CEO)は「ずる賢いビジネスモデルはいらない」とコメントし、SEOやSEMを一切行わず口コミのみでサービスを拡大させていきました。
※現CEOは元Googleのクリス・オネイル
Evernoteでは新規登録したユーザーの有料サービス推移率が30日後に0.5%、半年後に1%、2年後には6%になるという数字を目にして商品力のみでサービス展開できると確信していたようですね。
ちなみにフィル・リービンは世界で100年以上の歴史を持つ企業の80%以上は日本企業ということに感化され、日本企業の経営とシリコンバレースタートアップのメンタリティを融合させることが、100年存続する企業へと成長させるために必要なことだと述べています。
New York Times Online
1851年に創刊され160年以上の歴史を持つNew York Times紙が運営するオンラインジャーナルサービスであるNew York Times Onlineは、コンテンツ配信型のサービスとして最もフリーミアムを成功させた事例です。
2011年3月に有料化された同サービスは、当時「月間20コンテンツ以上の閲覧は会員限定」というビジネスモデルを採用していました。しかし思うように会員数が伸びず、後に閲覧制限を10コンテンツまで落としています。
この施策がきっかけで会員数が順調に伸び、現在では100万人以上の会員数を抱えマネタイズに成功しています。
クックパッド
国内のレシピサイトとしてレシピ掲載数No.1を誇る情報メディアであり、2016年現在では170万人以上の有料会員を抱えています。
クックパッドは有料会員を増やすためにレシピの間にバナーを上手に設置したり、「コーヒー1杯分で人気レシピが見放題!」といった捻りのあるキャッチコピーで会員数を着実に増やしていきました。
また、フリーミアムでありながら店頭アフィリエイト(※1)を広く展開しているサービスでもあり、会員数増員を後押ししています。
※1:店頭アフィリエイトとは、携帯販売店において「サービスへ登録すると機種本体を1,000円割引」といったマーケティングです。代理店には1会員あたり月額利用料の数倍以上を支払いますが、サービス継続率が高いため収益性のある施策となります。
LinkedIn(リンクトイン)は2003年にリリースされたビジネス特化型SNSであり、リリース13年でコツコツとユーザー数を伸ばし現在では世界3億5,000万人のビジネスマンに活用されているビジネスプラットフォームです。同サービスは主要機能のほとんどが無料で利用でき、2004年までは広告収入にて収益を得ていました。
しかしより高いマネタイズのためにフリーミアムを採用し、現在では有料アカウントとして「Business(一般向け)」「Job Seeker(求職者向け)」「Sales Professional(営業関係者向け)」「Recruiter(個人・法人リクルーター向け)」を提供しています。
同社は「弱点と改善するよりも長所を伸ばすことの方が簡単」と述べており、弱点である「メール招待」の改善よりも伸び率の高い「ホームページ登録」の成長に注力し、現在も順調に会員数を伸ばしています。
フリーミアム2つの失敗事例
MOONGIFT
OSS(オープンソースソフトウェア)サービスを紹介するWebサイトとして人気を集めているMOONGIFTでは、2010年10月より月額500円のプレミアム会員サービスを開始。理由としては「当時注目され出したフリーミアムのビジネスモデルを実際に体感してみかったから」とのこと。
プレミアム会員数は全体の0.2%に留まり、運営者本人もSlideShereにて失敗を認めるコメントを残しています。しかし、年間6,000円(+期間のおまけ付き)プランの提供を開始するなどいくつかの施策を展開し思考錯誤を繰り返しています。
また、予め告知しておくことが何より重要であったり月額プランよりも年額プランの方が会員数が伸びやすいといったノウハウの学べる事例でもあります。
PANDORA
国内ではマイナーですが、アメリカでは人気を集めているパーソナルラジオサービスであるPANDORAは、代表的なフリーミアム失敗事例として度々紹介されています。同サービスは月間10時間以上を超えるストリーミングは月額36ドルを支払う必要があるという収益モデルを展開していましたが、有料会員数を伸ばすには至りませんでした。
その後いくつかのフリーミアムを展開してましたがあえなく失敗に終わり、最終的には広告収入へ転換。有料会員数は全体の1%未満に留まっていますが、PV数が圧倒的に多いのでビジネスとしては成立しているようです。
まとめ
最後に、今回のケーススタディをもとにフリーミアム運用のコツをまとめていきます。
- 無料プランと有料サービスの明確化をする
- 会員数に伸び悩むときは「紹介キャンペーン」や「店頭アフィリエイト」などの施策を展開してみる
- 純粋な「商品力」で勝負できるケースも存在するが、稀であることを理解する
- Webコンテンツ配信型サービスでは、コンテンツ数のトライ&エラーでベストプラクティスを導き出す
- もともと無料で提供しているサービスがフリーミアムを導入する際は、ユーザーへの告知を怠らない
- 複数プランを用意することでユーザーの選択肢を広げる
- フリーミアム運用が上手くいかない場合、最終的には固執せず別のビジネスモデルへ切り替える
いかがでしょうか?今回紹介した成功事例5選、失敗事例2選からはフリーミアムに関する多くのことが学べたのではないかと思います。現在一般的になったビジネスモデルではありますが、それだけに競合との差別化が難しく様々な施策展開が必要になるのがフリーミアムです。
「フリーミアムならユーザー母数が多く獲得できるし、効率的に事業展開できる!」と安易に考えるのは非常に危険なので、注意しましょう。成功事例が多く目につくフリーミアムですが、その陰には失敗事例がしっかりとあることも忘れずに。
また、展開する事業によっても向き不向きというものがあるのでまずは「自社サービスとフリーミアムの相性がどうか?」といった視点で検討することが重要です。成功すれば収益を最大化できるビジネスモデルでもあるので、今回紹介したケーススタディを参考に皆さんのフリーミアムが成功することを願います。
Webサービスでの事業展開と切り離せないのがWebサイトです。フリーミアムなビジネスは特にインバウンドな戦略も必要ではないでしょうか。インバウンドマーケティングについてまとめたEブックをご用意しました。ご興味があれば合わせてご確認ください。