CMSの最高峰、AEM(Adobe Experience Manager)の魅力と実務的観点での考察

DrupalやWordpress、Sitecore、そして、HubSpot COSなどWeb CMSは世の中にたくさんあります。この業界にいるとCMSの最高峰に位置するのがAdobe Experience Manager(AEM)と言う認識の方も多いのではないでしょうか。

Web CMSのガートナー社のレポートを見るとリーダーポジションを獲得しているAEMですが、実際にAEMは他のCMSにはない魅力的な機能を数多く揃えています。

ガードナー社のレポート(2017年7月):Magic Quadrant for Web Content Management

ここではAEMの一部をご紹介するとともに、実際のビジネスに導入するという視点での考察も加えていきたいと思います。 

Adobeのプロフェッショナルツール

このブログを読んでいる方の多くは、AdobeがPhotoshopやDreamweaverなどのクリエイター向けツールだけのベンダーではないことをご承知のことと思います。分析や集客を担当するマーケティング担当者にとっては、Adobe Analytics やAdobe Targetといったマーケティング系のツールの方にむしろ馴染みがあるかもしれません。

AEM(Adobe Experience Manager)は、クリエイティブとマーケティングの中間に位置するようなツールです。

注)Adobeのカテゴリ分けではマーケティングツールですが、CMSという観点で見ると制作にも近いので、便宜上ここではこう表現しています。 

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https://www.adobe.com/jp/marketing-cloud/experience-manager.html

上述のガードナーレポートの上位にいるのはAdobeとSitecore、Drupal(Acquia社)という三つのツールです。ただしAdobe自体はAEMをCMSという位置づけにはしておらず「顧客の体験をトータルで向上させる」ソリューションと考えているようです。

そのためAEMには一般的なCMSでは考えられないような高度な特徴が数多く備わっています。

一例として挙げられるのが「IoT」の対応です。

もはやデジタルマーケティングはパソコンだけスマートフォンだけという時代ではなく、インターネットに接続するあらゆる機器との接続が重要視されています。AEMはこうしたIoTに対応するデータを作成することができます。

トータルな顧客体験の向上を実現させるためには、利用している機器が何であっても同様の体験ができることが強く求められます。新たなタッチポイントでもパーソナライズされたエクスペリエンスを実現させるIOTへの対応が近未来に必要不可欠な特徴といえるでしょう。

しかし顧客体験という抽象論だけで進めていくと、ツールのイメージがなかなかつかめないかもしれません。そこで次章ではより身近な機能にいくつかフォーカスして、AEMの魅力をお伝えしていきます。 

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AEMの機能をピックアップ

実際にAEMを使いWebコンテンツを作っていくイメージを持っていただくために、四つの機能を紹介していきます。 

(1)レスポンシブが簡単にできる。

数年前、商用CMSのトレンドは「デバイスごとに最適な出し分けができる」ことでした。しかしこれについては、二つの問題がありました。 

  • デバイスごとのページ登録など、設定に時間がかかる
  • Googleの推奨など、世の中の流れがレスポンシブ優位になってきた

ECサイトなどを除けば、別ファイルでスマホ用のページを作成するという選択はほとんどされなくなっているのではないでしょうか。

以前はデバイスごとに専用ページを作ることで、ユーザー体験を向上できるという意見がありました。しかし現在のように多種多様なデバイスが出ていては、それに対応することは実質不可能です。そのため1ソースのレスポンシブは、Googleの推奨ということを抜きにしても主流になるべき流れだったといえるでしょう。 

AEMではデバイスごとに別ページを登録するのではなく、CMS上で作成したページをレスポンシブに設定することが可能です。

もちろんCMSですから、タグをさわったりcssを変更するという作業は不要で、直観的な操作でレスポンシブページを作成できます。

あらかじめ設定した画面幅のガイドに沿って画面サイズを設定していけば良いので、作業は非常に直観的に進められます。

さらに素晴らしいのが、設定に合わせて画像も自動で表示を変えてくれる機能です。さすがAdobeと言ったところが随所に感じられます。

多くのCMSでは画像を登録、配置はできてもその表示を制御してくれることはできませんでした。しかしAEMであればその部分にもツール側が対応してくれます。 

180929ae_002Adobeのサポートページより

https://helpx.adobe.com/jp/experience-manager/6-3/sites/authoring/using/responsive-layout.html

(2)画像の自動タグづけ

AEMがどれだけ先進的なツールかを実感できるのが、この機能でしょう。

サイトで利用する画像をAEMの管理画面にアップして、アセット(部品)として管理、利用していくまでは他のCMSと同じです。

しかしAEMでは、この画像アップの際に他には無い機能が働きます。その画像の中身を読み取り、自動でタグづけがおこなわれるのです。

たとえば「山」の画像をアップしたとしましょう。その場合には、「山、丘、マウンテン・・・」などのタグが自動で付いてくるかもしれないのです。

AIに対して知見がある人にとっては、「画像識別を使っている」というのがピンとくるでしょう。機械学習でもっとも進んでいるのは画像識別なので、実はこうした処理は得意分野なのです。

またAdobeツールが好きな人は「ADOBE SENSEI(アドビセンセイ)」を思い浮かべたかもしれません。AIと機械学習の象徴としてAdobeが近年積極的にデモンストレーションをするADOBE SENSEIの機能が、AEMの中には既に備わっているのです。もちろん画像識別が100%の精度でできるわけではありません。

先ほど山の画像を例に出しましたが、実際には違うタグが付く場合もあります。機械学習は日々進歩を続けている機能だからです。しかしこの機能の進歩については、後退することはないので精度はますます上がっていきます。

またこのタグ付けは単に面白い機能として付いているのではなく、無数のアセットの中から画像を検索する時などに役立ちます。

アセット管理というのはCMSの重要なポイントでしたが、これまで十分な管理ができる状態になっていませんでした。AIの力でそれを実用的にできているのも、AEMの大きな魅力です。

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(3)パーソナライズの設定

この記事を読んでいただいている皆さんは、ペルソナを実際に設定した方がほとんどでしょう。違いはそのペルソナをどう活用したか、に出てくるはずです。

現実問題として、ペルソナを実務で存分に活用しているという事例はそう多くありません。ペルソナを作って満足してしまうというのに加え「どう利用していいかわからない」といった理由があります。

AEMはページづくりで、このペルソナを生かす操作が可能です。

そのペルソナに対してどういったコンテンツを出すか、つまりパーソナライズをAEMの管理画面内で設定することが簡単にできます。 

たとえばペルソナごとに最適なメイン画像をA、B、C、D・・・と用意したとしましょう。

それぞれの画像をページに設定し、さらにターゲット設定を加えることで個々のユーザーに対する出し分けが可能になるのです。

ペルソナごとの出し分けについては、管理画面内のプレビューを使って確認も容易にできます。

180929ae_003 

Adobeのサポートページより

https://helpx.adobe.com/jp/experience-manager/6-3/sites/administering/using/segmentation.html

(4)制作側のニーズにも応える

 制作ディレクションに近い立場にいる方は、CMSの大きな問題として「テンプレートはエンジニアに頼まないといけない」というのがあるのではないでしょうか。

CMSはHTMLなどの知識がない人が運用できるコンテンツエリアと、システムで固定され変更ができないテンプレートエリアに分かれるのが一般的です。

このテンプレートエリアがあるからこそWebサイトが一定の形を保っていられるのですが、時としてそれが不自由に思えることもあります。 

たとえばヘッダ位置を一か所変更したい、といった要望が出たとしましょう。

しかしテンプレート部分なのでエンジニアに頼まねばならず、他の案件との絡みで伸び伸びになってしまう・・・などです。こうしたケースに出くわすことは、数多くあります。 

AEMは、運用者自らがテンプレートを作成することが可能です。

テンプレートなので誤って変更されないための、ロック機能も付いています。

パーソナライズなどのマーケティング機能に加え、こうした制作寄りのニーズもきちんと満たしてくれているのがAEMの大きな魅力といえるでしょう。 

導入を考えてみる

ここまで紹介した多彩な機能に加え、AEMは非常に使い勝手がいいツールです。学習コストはそれほどかからないといえるでしょう。

AEMが機能良し、使い勝手良しとなっている理由は、今の時代は数多くのコンテンツが必要とされるからです。

ユーザーごとに幾通りものコンテンツを出し分けていくなら、単に「自分たちで更新ができる」程度のCMSでは荷が重いというわけです。ですから大量のコンテンツを素早く作っていけるというのが、AEMの大きなミッションとなっているのです。 

しかし実際のところ、AEMの導入企業が無数にあるわけではありません。身近でも、AEMを利用しているという話はほとんど聞かないのではないでしょうか。比較的大企業が採用しているイメージです。

マーケティングのニーズが高い場合には、マーケティングオートメーションを選ぶ方が良いケースもあります。たとえばユーザーごとのコンテンツ出し分けではCMS的な機能もありますし、メール配信などWebコンテンツ以外のチャネル活用にも長けているからです。

BtoBの場合だと特にCRMなどの顧客管理機能も求められるので、これもセットになったMAの方が使い勝手がいいでしょう。 

まとめ

AEMに限りませんが、高価なツールを入れても使いこなせていないというケースは多くあります。あるMAツールの話ですが、いろいろな構想はあったものの結局はメール配信くらいしか使うことができず、次年度に見直しをすることになった・・・ということもありました。

ツール選びは次のことがポイントになります。

よく考え、最適なものを選びましょう。 

ツール選びのポイント

  • 自分たちがやりたい事、ユーザーにとって最適なことが何かを徹底的に洗い出す
  • 一部の機能だけでなく、全体として欲しい機能が揃っているかを調べる
  • 導入コストはもちろん、運用コストも合わせて費用対効果が出るかを見極める
  • 同等かそれに近しい機能、代替できるもので安価なものがないかを探してみる
  • サポートがどこまであるかについても、事前にしっかり確認しておく

HubspotはブログやランディングページなどのCMS、フォーム作成、CRM、分析やSEO調査の機能などが揃った総合プラットフォームです。プランの組合せも自由で、カスタマーサポート向けのもの、SFAに近いものなども要望に応じて追加できます。

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