集患を始める前に知っておきたい医療法における広告規制について

医療関連業務をする上では、医療法における広告規制ガイドラインの遵守は欠かせない要素です。しかし、多岐にわたる内容を全て把握することは難しいかもしれません。本記事では、医療機関が把握しておくべき広告規制の概要や罰則内容、注意すべき点、Webサイトを利用する際のポイントなどについて詳しく解説します。

医療法における広告規制ガイドラインとは

医療法における広告規制ガイドラインとは

病院やクリニックなどが提供する医療系の広告は医療法の広告規制ガイドラインによって規制されています。医療サービスは、健康などに重大な影響を与える可能性があるため、従来から看板や折り込みチラシ、テレビCMなどを制作する際に、その内容が制限されていました。ところが、医療機関のWebサイトに関しては、基本的には指導だけされて規制が無いままでした。近年では、美容系医療などに関して、広告内容と実際にかかった費用が異なるなどの相談が増加したことや、パソコンやスマートフォンの普及が進み、Webサイトへの規制の必要性が高まってきたことなどから、2018年6月の医療法改正によってWebサイトやSNSにも規制がされることとなりました。また、投稿内容によっては、仮に個人名で開設したSNSのアカウントであっても医療広告として規制されるケースがあるため、注意が必要です。

医療関連業務は専門性が高いため、一般的な利用者側からは医療の質などの判断が困難です。広告規制ガイドラインは、不正確・不明確な情報などで利用者の選択を迷わせないことを目的とし、利用者保護のために定められています。利用者が治療法などを正しく理解して、適切に選択するため、正しい広告を制作するように注意しましょう。

広告規制違反の罰則内容

広告規制ガイドラインでは、従来規制されていなかった、医療事業者等が運営するWebサイトや、InstagramやFacebook、TwitterといったSNSが規制されるという点が大きな特徴です。違反の疑いが発見された場合、医療機関に対して任意の調査、報告命令、立入検査などの措置がとられます。違反は、内容の虚偽、比較優良広告、誇大広告がみつかったとき、公序良俗違反であると判断されたとき、その他の基準に反していたときなどが該当し、違反者に対しては広告の中止命令や是正命令が発令されます。

違反者に課せられる罰は「6月以下の懲役または30万円以下の罰金」であり、悪質なケースが続くと、医療機関の開設許可を取り消される可能性もあります。ただし、医療広告規制に違反したとしても即罰せられるわけではありません。先に発令される中止命令や是正命令に応じなかったときにはじめて罰が与えられるので、もしも広告規制違反がみつかった際には速やかに対処する必要があります。

細かい表現や言い回しが問題になるケースもあるため、判断に迷うこともあるかもしれません。とはいえ、確実に修正すべき内容まで放置してしまうと、後に大きな問題に発展してしまうため、Webサイトに問題が無いか、運営者への連絡が無いかなどをこまめにチェックしておくことが大切です。

医療機関が注意すべきWebサイト掲載事項

医療機関は、「やらせ」とみなされる治療効果の体験談や口コミ、説明の無い治療前後のビフォーアフター写真、他との比較広告や誇大広告などを法改正後からWebサイトなどに掲載できなくなりました。Webサイトへの広告掲載について医療法改正で変更になった点を詳しく説明していきます。

治療効果の体験談の掲載禁止

医療機関の治療効果は患者によって個人差があり、患者の主観によって異なる内容が掲載されることもあります。そのため、個人の治療内容効果の体験談は、読んだ人に誤認を与えるおそれがあり、2018年からは制限がかけられています。特に、運営する医療機関にプラスになる口コミだけを集めて掲載するような恣意的な内容は規制の対象となりえます。ただし、体験談のなかでも、「待合室の落ち着いた雰囲気がよかった」「受付の対応が丁寧、親切だった」など、治療内容や効果に関係したものでなければ、規制対象となりません。

病院等が運営するものだけではなく、個人が運営するWebサイトや、SNS、病院を選ぶ際に利用される口コミサイトなどにも注意が必要なケースもあります。医療機関が広告料を支払い、口コミを載せるよう依頼すると、有利な体験談を宣伝に使うことになり違反に該当します。掲載の依頼等が無く、純粋な体験談が口コミとして寄せられている場合は規制違反にはなりません。

詳細説明の無い治療前後写真の掲載禁止

医療法改正前には、治療前と治療後のビフォーアフター写真の掲載に制限がありませんでした。改正後には、ビフォーアフターを示す写真が制限されるようになったため、掲載時には注意が必要です。Webサイト上のビフォーアフター写真は、わかりやすい広告として利用されています。医療サービスなどの効果も視覚的にアピールできますが、患者の治療効果は個人の状態によって異なるので、写真のみで効果を伝えようとすると誤認させてしまうおそれがあります。公正で正確に広告するには、写真のみの掲載では不適切です。ビフォーアフター写真の掲載には、アフターの状態に近づくための治療内容、費用、治療に伴うリスクや副作用など、詳細な説明文章をつける必要があります。医療機関のWebサイトには、内容に対する問い合わせ先の記載も必須条件です。

たとえ説明が書かれていても、恣意的に撮影条件を変えて撮った写真や加工・修正した写真では、虚偽広告と判断されるケースもあります。治療前後の写真を撮影するときは、同一の患者とし、撮影時の照明など、条件を変えずに撮影する必要があります。

また、治療前後の写真はウェブサイトでのみ掲載が可能です。チラシやCMなどに写真を載せることはできないので気をつけてください。

他病院との比較広告の掲載禁止

他病院と自院を比較して優位性をアピールする広告も、掲載が禁止されています。特定、不特定にかかわらず、他病院と自院とを比べる広告は、施設の規模、医師やスタッフの人数、医療内容などに関して真実を述べていたとしても問題とされるので注意が必要です。

実際に「県内で最も多くの医師が在籍」「〇〇の施術実績日本一」などの文面は、真実だとしても他と比較して優良性をアピールしている表現なので規制されます。「最も」「日本一」など最上級のほかに、比較表現が使われているケースや、著名人が利用しているといった話も、利用者に誤認を与えるおそれがあるため避けなければなりません。

他病院と比較、強調していない場合でも、治療に関係する調査結果等を引用する文章では、出典元、調査実施主体、実施時期、調査の範囲などをしっかり記載する必要があります。

誇大広告の掲載禁止

広告には「比較的安全な治療」「〇〇の施術は効果が高いのでおすすめ」「〇〇の症状は命にかかわるためすぐに来院することが必要」などの表現も使えません。こうした科学的な根拠に乏しい情報や、根拠の薄い情報、現状と異なる情報から自院の有用性をアピールすると誇大広告と指摘されるリスクがあるので注意が必要です。

病院にはそもそも都道府県知事の許可が必要にもかかわらず「許可を取得」と特別な事柄のように強調する、活動実態の無い団体名を挙げて「〇〇学会認定」と掲げる、医師数が減少したあとにもWebサイト上の人数を変更しない「医師数〇名(〇年〇月現在)」といった内容も誇大広告と捉えられます。

また、医療機関の名称に併記して「〇〇センター」と載せる際にも注意が必要です。「センター」の記載は、「法令の規定または国の定める事業を行う病院(救命救急センターなど)」「地域の中核的な機能や役割を担う病院」「医療機関内の一部門として、名称をWebサイト上に記載している」などのケースでのみ使用が認められています。

虚偽広告の掲載禁止

虚偽広告は、患者に事実とは異なる情報を伝えてしまうため掲載が認められていません。虚偽広告で患者に誤った情報を伝えることで、不要な治療を受けたり受診機会を逃したりするおそれがあるので充分に注意しましょう。

虚偽広告には、医学上断言ができない「必ず成功する手術です」などの表現や、調査実績・根拠の無い「満足度〇〇%」、治療後に定期的な処置が必要なときにも「一日で治療が完了します」とアピールしているケースが該当します。高い治療効果があると思わせるように加工・修正を行った写真も虚偽広告にあたるので、よく確認して確かな情報のみを掲載しましょう。

また、処置・施術について「キャンペーン」「期間特別価格」など費用を前面に出して宣伝することも「品位を損ねる」ケースとなり禁止されるでしょう。

根拠の無い効能に関する広告の掲載禁止

医療法による制限以外に、医薬品医療機器等法によって制限されるものもあります。医薬品・医療機器等の名称、効果・効能といった情報は、根拠が無い場合掲載ができません。同法では、承認前の医薬品・医療機器に関して、名称や効能なども記載してはいけないと定めています。

医薬品固有の名称も広告規制によって決められおり、使用ができないため、「医薬品〇〇を処方」などの表現が制限されています。

「ジェネリック医薬品」「AGA治療薬」など商品名を避けて医療内容を表す表現を選ぶと法律上問題が生じるおそれはありません。

まとめ

病院の広告は、医療法の広告規制ガイドラインによって掲載可能な内容などが定められており、違反すると罰せられることになってしまいかねません。

ローカルフォリオの広告運用サービスは、医療機関向け広告にも豊富な実績があり、安心して依頼できます。自院の判断に不安がある場合には、こういったサービスを利用することも検討しましょう。

リスティング広告とは